先日紹介したベンゾジアゼピン系薬剤に関する「重篤副作用対応マニュアル」について多くのご意見をいただき、感謝申し上げます。

 改めて寄せられたご意見を読み返してみると、まさにこうした点が抜けているがゆえにこれまでの「被害」が生じているのだと感じました。

その意味でこのマニュアルは(ベンゾの副作用を「重篤」と位置付けたことは評価できますが)まだまだはじめの一歩に過ぎないものと思います。

 つまり、ベンゾについて詳しくない医師が曇った目で見たベンゾの「被害」に過ぎないということです。当事者の意見はこのマニュアルには反映されておらず、残念ながら、意見を聞こうという姿勢もいまのところ見えません。

 実は、厚労省とこのマニュアルについて意見交換していた方からの報告ですが、厚労省いわく、このマニュアルはすでに検討会で了承されているのでいったんはこのまま公表するとのことでした。ただ、改訂の機会はあるので、現在はそれに向けてこちら側の意見を厚労省に届けようと考えています。

 皆様の体験から出た貴重なご意見が反映されることを切に願っています。

 

 さて、話題は変わりますが、最近(に限らず)以下のような記事をよく見かけます。

 

ひょっとして双極性II型障害かも?うつの再発を繰り返す人は、疑ってみることが大事です | Human Capital Online(ヒューマンキャピタル・オンライン) (nikkeibp.co.jp)

 

うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています:日経ビジネス電子版 (nikkei.com) うつの本当の原因は発達障害だった そんなケースが増えています:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

 

 うつ病と思っていたら、実は双極性障害だった。

 うつ病と思っていたら、実は発達障害だった。

 

 なかなかうつの状態が改善しない人にとっては、なんだか「朗報」のように聞こえます。

 だったら、双極性障害を治療すれば・・・

 だったら、発達障害としてそれを受け入れていけば・・・

 きっと今よりよくなっていくのではないか。

 そんなふうに考える人が多いのではないでしょうか。

 

 しかし、原点にもどって考えてみてください。

 そもそも「うつ病」と診断したのは精神科医です。

 でもそのうつ病がよくなっていかないと、うつ病じゃなくて実は双極性障害、発達障害だったという。

 しかし、これは、よく考えてみれば、精神科医が最初の時点で「誤診」していたことになります。

 にもかかわらず、そのことには一切触れず、当事者に双極性障害を疑ってみては、とか、発達障害が隠れているかもしれないとアドバイスしたり。

 といっても、双極性障害や発達障害と診断し直すのは精神科医ですが、その際、最初の診断「うつ病」という「誤診」は頬かむりされます。

 そして、それをなぜか当事者の方は素直に受け入れます。

 最初から双極性障害(発達障害)と診断をしていれば、こんな苦労せずにすんだかもしれないのに。

 といっても、そもそもそんな診断ができるなど期待はしていません。精神科の診断そのものが曖昧であり、確証のないものですから。最初の「うつ病」の診断にしても、それ自体が「誤診」の可能性も大きいです。

 だから、いかようにも当事者を誘導できるわけです。誤診という視点をまったく無視したまま。

 これが精神科でなかったら、たいへんなことになるはずです。

 他科では数値や画像等で診断がなされますが、精神科にはそれがないため常に「誤診」を内包しているといえます。誤診の先の二度目の診断(双極性障害、発達障害)でさえ「誤診」の可能性がありますが、そうした視点で精神科の診断をとらえる人は多くありません。

 精神科で「誤診」はあまり問題にならないのかもしれません。それどころか、診断が変わることは、改善への前進と受け止めるという、医師にとっては非常に便利な分野です。

  こういう記事を読むたびに、「やりたい放題」という言葉が思い起こされます。