ベンゾジアゼピン系薬物は「治療薬」だと思いますか。
「治療薬」というと、一般には「治す薬」と受け取られがちです。
しかし、現在の医療において、病気を本当に「治す」薬はほぼないに等しいです。(風邪薬も風邪を「治す」わけではなく、さまざまな症状を軽減するだけ)。
としたら、ベンゾも「治療薬」と位置付けていいのではないか? という意見があります。
しかし、私には、やはり、どうしても、ベンゾを治療薬とは受け取れないのです。
睡眠薬は不眠を「治し」はしませんし、抗不安薬は不安感を「治し」はしません。
対症療法としての薬にすぎませんから、その点は飲む方もよくよく認識する必要があり、医師もそういう説明をする義務があるはずです。
が、そこに「治療薬」という概念が入ると、どうしても、不眠が「治る」までは飲み続ける、という医師が出てきます。
だから、「治療薬」という言い方に抵抗を感じるのですが、お医者様(たとえベンゾに批判的な医師であっても)はやはり薬への信頼度が私などより高いので、ベンゾを「治療薬」ととらえているようです。
不眠という悪習慣から「眠れる習慣」を作るきっかけとしての睡眠薬、だから、その意味でも「治療薬」であるという考え方は、理解できないわけではありません。
が、そういう認識を持っている限り、ベンゾに処方制限を設けるなどという発想は、おそらく出てこないと思います。
ADHDへの投薬として頻繁に使われるコンサータ。
これもADHDを「治す」薬ではありません。しかし、お母さんの中には、これを飲めばADHDが「治る」と思っている人が意外に多くいます。医師がそう説明するのか、そもそも薬というものは症状を「治す」ものというとらえ方をしている人が多いからなのかわかりませんが。
以前紹介した、「重篤副作用疾患別対応マニュアル ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存」・・・ここにも「治療薬」という言葉が使われ、そういう認識の上でのマニュアルになっています。
この視点から、マニュアルの中で私が気になっている部分を以下抜き出してみます。
現在、このマニュアルへの改訂要望を行うグループでの話し合いが続いていますが、視点の同意は難しいところがあると感じています。
10頁
「ベンゾジアゼピン受容体作動薬の治療薬依存とは、ベンゾジアゼピン受容体作動薬の使用により、服用を開始するに至った症状は安定していて、日常生活への支障はないものの、精神依存や身体依存が形成されたために薬剤を中止することができなくなった状態をいう。」
この前提そのものに私は違和感を覚えます。
16頁
「睡眠薬 の減量・中止を目指すための大前提として、夜間の不眠症状が消失し日中の心 身機能が良好に保たれている必要がある、との指針が示されている。抗不安薬に関しては、現時点では同様の指針はないが、さまざまな離脱症状の発現リスクなどを考慮すると、現実的には、不安症状が改善し、安定した経過とな っていることが減量・中止の前提であると考えるのが良いだろう 。」
睡眠薬を飲みながら、不眠症状が消失している・・・とすれば、減らせば、反跳性不眠が出てくるため、減薬の前提は崩れ、すぐに減薬は中止ということになりはしませんか。
つまり、こういう言説が出てくること自体、睡眠薬を「治療薬」としてとらえているからではないのかという疑問が残るのですが・・・。