眠れない患者に睡眠薬を処方する。ごくごく「普通」の精神科(心療内科)のやり方です。

飲み始めは、少し眠れるようになるかもしれません。でも、飲んでいるうちに、少しずつ効き目が悪くなったりします。それを医師に言うと、処方量が増えたり、薬が変わったりします。やはり多くはベンゾ系の睡眠薬。

 そのうちにイライラが出てきたり、焦燥感に襲われたり、怒りやすくなったり、不安感が強くなったり……。それを医師に言うと、さらに処方量が増えたり、薬の種類が増えたりします。

ある医師は、ベンゾ系睡眠薬を、添付文書で定められているマックス以上の量を処方しました。薬剤師から「この薬は最大〇㎎ですが、なぜこの量の薬が必要なのかコメントをください」と疑義照会が入りました。

 医師は「イライラ、不安感が異常に強いため」と回答し、マックスの倍以上の薬を出しました。

 

 すでに8年間の服薬期間があり、さらに5年が経過しました。

 途中、ある事情により、このベンゾ系の睡眠薬が手に入らなくなり、一気断薬となりました。

当然、猛烈な離脱症状を経験し、自殺未遂。入院して、結果、診断が双極性障害となり、薬も一気に変わりました。

 しかし、その薬は数カ月で断薬。残ったのはやはりベンゾ系の睡眠薬です。

 患者はそれまで医師を信じて、自分も双極性障害と思っていましたが、その頃になってようやく、ベンゾという薬の存在を知りました。ネットでアシュトンマニュアルを見つけ、減薬を始めました。

 以前の一気断薬で、心身には相当のダメージがあったうえ、減薬のペースが速すぎたのか……状態はさらに悪くなり、遅発性ジスキネジアを発症。線維筋痛症のような全身の痛みもあり、またしても自殺未遂。

 結果、家族によって半年間、あちこちの施設に入れられ、その間、抗精神病薬等、さまざまな薬を飲まされました。

 ようやく家に帰ってきた時には、ほぼ歩けない状態になっていました。

 首、舌のジストニアを発症。しゃべると「チェッチェッ」と舌打ちの音がします。活舌も最悪です。唾が異常に出てきます。舌がねじ曲がっているため、痛みがあります。首も痛い。耳も聞こえずらくなっています。

 今、彼女は「死」を考えています。ジストニアによる尋常ではない痛みと苦しみ。誰にも理解されない孤独感。しかし、自殺する勇気はない。ならば安楽死……。すでに書類は整ったといいます。

 

 ただ眠れなかっただけです。医師の言うままに薬を飲んだだけです。依存のリスクや離脱症状が出る可能性についての説明は一切ありませんでした。

 途中、さまざまな薬を飲むことで状態は悪化の一途をたどったとはいえ、始まりはベンゾです。あまりに安易な処方。副作用を見抜けず、あまりに医師の身勝手な増量。そして、結果としては一気断薬になってしまったこと。

 ただ薬を出すだけの医師の無責任な「医療行為」が、歳月を経て、こういう結果を患者に背負わせているという事実です。

 たかがベンゾ。医師にしてみたらそうなのかもしれません。でも、そこから派生して起きる出来事(副作用、離脱症状等)は、重大な結果を引き寄せてしまう可能性もあるのです。悪い方へ悪い方へ……。その責任はその医師にはないかもしれません。しかし、始まりはこの医師が無闇に、安易に、なんの説明もなく処方した、用量オーバーのベンゾです。

 こういう医療行為は見過ごされるべきではない、と強く思います。

 医師の名も、勤務している病院も知っています。

 手紙を書こうと思います。