マーブルタイプの大理石は国産品がほとんどないとお話しましたが、実はあります。

フォーミュラニッポンのサーキットで有名な山口県の美祢(みね)で産出する「薄雲」とか「霞」と呼ばれる石が有名です。
ところが、日本の建築家も工事会社もこの美祢の
「薄雲」とか「霞(かすみ)」など知らない、使ったこともない、という方がほとんどだと思います。
大理石の元になる石灰岩が多く露出し鍾乳洞やカルスト地形で有名な山口県ならではでしょう。

建築エコノミスト 森山のブログ

私もめったにお目にかかったことがありませんが、私が設計の修行をしました建築界の海原雄山こと齋藤裕先生のところで一度だけ使用したことがあります。 ある都内の小さなビルの打ち放しコンクリートで囲んだ中庭の足元にぐるりと一周使用しました。

枯山水のような石だけで構成した坪庭ですが、「霞(かすみ)」の名の 通りぼんやり薄紫と白の石の目が、ヨーロッパ産の大理石に比べてはっきりしないところが、さすが日本の大理石!という感じでしっとり品良くまとまったのを覚えています。


昔は大理石を輸入するのも大変だったので、明治時代の洋風建築などにはほぼこの山口県の美祢産の石が使われています。
国会議事堂の両院玄関などにも使用されているようです。


石はその名前がまさに産地を表し、産地とすごく関係した表現が可能な素材のひとつなんですよ。

この美祢の大理石の採掘ですが、ほぼ閉山状態になっています。
安い加工済み海外製品の蔓延や石の目や種類までを審美しない設計者、利用者の増加など、いろんな理由があるとは思いますが、唯一残った採掘現場ではまだ数種類の国産大理石を調達可能なはずです。

ということで、各地の石について連続記事書いてみたいと思います。

ちょっと知られているものだけで、大谷石、伊豆石、十和田石、諏訪鉄平石、雄勝石など、実に多くの石があります。ところが最近は安い中国産に押されてこの国内の採石も加工もなかなか難しい状況になっているのです。
国内産の石について多くの方々に知っていただき、ご自分の家などで産地を指定してみるくらいに石について詳しくなってみるのもデザイナーとしても風流人としても一興ですよ。