カーヴァー(大聖堂)@ 「いいねえ」と彼は言った。「素晴しい。あなたはなかなか上手いよ」と彼は言った。「ねえ、まさかこんなことをやる羽目になるなんてこれまで考えたこともなかったでしょ? 人生っておかしなもんだよね、バブ。みんなほんとにそうなんだね。さあ、続きをやろうよ」

種田山頭火【俳句】@ 風のなか米もらひに行く

カフカ(城)@ やさしい匂いだ。それはまるで、好きな人にほめられ、うれしい言葉をかけられたぐあいで、それもどうしてなのかまるでわからず、わかりたいとも思わず、そんなふうに言われたと知るだけで幸せこの上ない、そんな気持だった。

東直子【短歌】@ 舌の上でもうとけそうな薄い飴だれもだれかのものにならない

カフカ(城)@ 失望したからといって、たじろいではなりません。事態とほとんど一致しないような機会がときおり生じるものなのです。ほんのひとこと、一度の眼差し、ちょっとした信頼のしるしによって、生涯にわたり、身心をすりへらして努力してきたよりも、ずっと多くのことが実現する、そんな機会が訪れるものです

せきしろ【俳句】@ バスタオルは無い小さいタオルで拭く

カーヴァー(誰かは知らないが)@ 「記憶に間違いがなければ、それは通常は命取りにはならないんだそうだ」「その『通常は』っていう言葉好きよ、私」と彼女は言う。「まあな」と私は言う。

竹井紫乙(句集 白百合亭日常)@ 平日に他人の家で寝てしまう

カーヴァー(誰かは知らないが)@ ここから見ると、誰かは知らないが、このベッドに寝ていた人が急いでどこかに行ってしまったあとみたいに見える。これから先このベッドを見るたびにこのときの感じを思い出すだろうな、と私はふと思う。我々が今ある大事な問題に足をつっこんでいることが私にはわかる。でもそれがいったいどういう類いのことなのかはわからない。

松下育男(現代詩文庫 松下育男詩集)@ 上司に呼ばれる/たび/わたしは性器ごと/近寄る

カーヴァー(誰かは知らないが)@ 「ねえハニー、その夢の中にはあなたは出てこなかったの」とアイリスは言う。「悪いとは思うけれど、出てこないの。どこにも見当たらなかったの。でも、あなたがいなくて残念だったわ。本当よ。あなたがいてくれればなと思った」

岩田多佳子(句集 ステンレスの木)@ 罰としてあなたが王になりなさい