朝11時
「カランカラン」
「おはよう」
まっすぐ待合いまで行って、小さなリュックを下ろし、上着を脱いでハンガーにかけ、靴を脱いでスリッパに履き替えます。
古川凱章(ふるかわがいしょう)…日本で最初の麻雀プロ
ふと先生の手を見ると、血の滲んだ絆創膏。
「先生どうしたの?」
「それが全く記憶が無いんだけど、朝起きたら布団もズボンも血だらけ。
自転車の籠がへしゃげてたから、たぶんコロンだんだと思う。」
昨日、先生は店で飲んだ後、どうやら帰りに地元のいきつけに寄ってまた飲んだらしい…
「先生、先生がいくら転んでも構わんけど人にぶつかったら大変。飲んだ時は自転車はいけませんよ。」
「んん、自転車は置いて帰ることにする。」
最初の半荘、開局ドラ①
七巡目以下のテンパイ
五七12345(赤)677⑤(赤)⑥⑦
次巡、上家、打六
先生何事もなかったように自分のツモ牌に手を伸ばします。
続けて上家、打六
「チー。」打1
⑤(赤)⑥⑦2345(赤)677[五六七]
フリテンの147(1じゃ上がれんけど)
二巡後ツモ⑦打7
ツモ①打⑦
①⑤(赤)⑥⑦2345(赤)67[五六七]
…親から出た①で
「ロン。8000」
三色ドラドラ赤赤
その後大きな点棒が横移動して、先生は三着。
「カルピスちょうだい。」
先生のカルピスは乳白色のマッコリ。
次の半荘。南二局ドラ8
北家、先生27000点
二三五五六七八九55(赤)68白
ここから7をチー、打白
タンヤオと一通の両天秤。
19000点持ちの上家からリーチがはいるものの、無すじを平気な顔で通していきます。
ツモ5打九
二三五五六七八555(赤)[678]
四萬の片あがりでテンパイ
その後一歩も引かず、つも5、暗カン
二三五五六七八<5555(赤)>[678]
その後ツモ一、ツモ切り
最後の一巡、南家のチーがはいって、先生がツモるはずだったハイテイ牌が流れて、親が4000オール。これがなんと四萬!
しかし先生はこのあと盛り返してこの回トップになります。
「カルピス乾いちゃったよ」
…半荘三回目、南二局ドラ北
がぜん牌勢の良くなった先生の持ち点は43700。親のトップめ44000。
八巡目、
三四五1134發發北北北北
に5(赤)を引いて北を暗カン。
それぞれ一枚ずつ出ている1と發のシャンポンでテンパイ。
しかし先生はリーチをかけずにダマテン。三巡後、上家が暗刻にしていた2を引いて1を捨てて…
「リーチ。」
三四五12345(赤)發發<北北北北>
6でハネマンを出あがってゲームセット。
連勝。
四回目
勢いに勝る先生は前半大きくリードするも、もつれて二着。
「あがるよぉ」
自分の使った座布団を手に持って席を立ちます。
残ったカルピスを飲み干して、少し待合いで休んだあと、靴を履いて、上着を着てまた小さなリュックをしょって…
「またあした。」
「カランカラン」
右手をひょこっと上げて、振り向かずに帰っていきます。
いくつになっても無頼でやんちゃな先生。
まだまだ教わりたいことがたくさぁんあるので、もうちょっと自分をいたわって下さいな。
さね