慰安婦問題 ~日本の名誉回復は「河野談話」の撤回から始まる~ | 武藤貴也オフィシャルブログ「私には、守りたい日本がある。」Powered by Ameba

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国家主権、国家の尊厳と誇りを取り戻す挑戦!品格と優しさ、初志貫徹の気概を持って(滋賀四区衆議院議員武藤貴也のブログ)

 10月30日、自民党本部で「日本の名誉を回復するための特命委員会」が開催された。この委員会は朝日新聞の従軍慰安婦に関する訂正記事を受け、日本の名誉を回復するために、自民党として何をすべきかを検討することを目的として設置された。当然ここで取りまとめられた意見は、政府へ提出され、政府はそれを受け止め今後の対応を判断することになる。もちろん最終最後は安倍総理の判断ということになるだろう。

 確かに特命委員会は立ち上げられた訳だが、私が不安を覚えるのは、8月5日朝日新聞の訂正記事が出された後、8月21日に開催された自民党政務調査会(当時高市早苗会長)で既に新しい官房長官談話を出すよう政府に求めていくことを党として決め、26日高市政調会長が菅官房長官に官邸で会談し新たな談話を出すように求めたにもかかわらず、菅官房長官は「政府の立場は河野談話を継承するものであり、見直すことはない」と自民党の申し入れを拒否した経緯があることだ。

 あれからまだそれほど時間は経っていない。今現在の政調会長は稲田朋美衆議院議員に代わっているが、政調会長が代わったからといって新たな申し入れをして政府が河野談話を踏襲するという立場を変えるとは考えにくい。事実、10月30日の当該委員会における最後の挨拶で稲田会長は、慰安婦問題について広義の強制性により多くの韓国人女性が苦しまれたことは事実で、国際社会でこれを否定することはできないという趣旨のことを述べられた。私見だが、稲田会長御自身も直前まで政府の一員として河野談話を踏襲する立場にいたわけであり、今現在政調会長として自民党内の不満を抑えることに重きを置いており、河野談話の撤回に関しては否定的に考えているのではないかとの印象を受けた。

 確かに慰安婦問題に関して、当時の時代背景、つまり貧困のために国の内外を問わず多くの女性が苦しんだことは事実であり、そのこと自体は私も心から同情申し上げる。また人道的な観点から民間レベルで過去苦しんだ女性たちに何らかの経済的支援をすること自体は理解できる。しかし今回問題になっているように、慰安婦の募集に政府や軍が組織的に関与したか否か、あるいは誘拐まがいの強制連行があったかどうかという問題は全く別のことである。これらの問題について事実と違うことを国家として認め謝罪し続けることは、道理に合わないだけでなく、国際社会における日本の名誉を自ら著しく傷つけ続ける行為以外の何物でもない。

 当時の経緯を調べると、河野談話は、韓国政府側からの要望で出された感が否めない。要望というのは「経済的補償を求めないので、韓国の慰安婦だった女性の名誉のために認めて欲しい。そうすればこの問題には今後触れない」というものだ。当時の日本政府は日韓友好のためにこの要望を受け入れ、政治的判断により河野談話を発表した。つまり慰安婦の募集に関して政府の関与や強制連行について何の証拠も無かったのにもかかわらず、韓国政府とのいわば阿吽の呼吸で河野談話を発表し、事実でないことを認めてしまったのだ。

 従って私は、冒頭挙げた特命委員会の目的を果たすにはまず何よりも河野談話を政府が撤回する必要があると考える。既に多くの識者が指摘しているように、政府主導で秦郁彦氏の著書『慰安婦と戦場の性』など慰安婦に関する資料を多くの言語で翻訳し各国に情報発信すること、また朝日新聞に対しても訂正・謝罪報道を国際社会に向けた何度も発信し続けるよう指導することは当然必要だろう。あるいは「日本軍が朝鮮半島の若い女性を20万人強制連行し、性奴隷にした」と断定している1996年の「クマラスワミ報告」の撤回を、クマラスワミ氏だけではなく、国連の事務総長などに申し入れることも必要だろう。しかしそれらの根拠となっている河野談話を、いつでも撤回できる自身の国がそれをしなければ元凶の根を断つことは出来ない。

 そして河野談話を撤回した上で、日本政府が新たな談話を発表するなら、古今東西女性の人権保護という文脈で相対化し、公正・公平な談話を発表すべきだと思う。既述秦郁彦氏の『慰安婦と戦場の性』の中にも書かれているように、戦場では多かれ少なかれどの時代どの国でも自国の公娼制度に則って慰安所が設置されていた。慰安所が設置されていない状況下においてはレイプ事件が横行していたからである。更に言えば、類似した制度は現代でも存在する。アメリカネバダ州や、オランダのアムステルダムなどでは未だ売春は合法であるし、非合法ながらも人身売買が存在する貧困国も多い。従軍慰安婦に関して日本を責める韓国自身も、過去はヴェトナム慰安婦や対米軍慰安婦の問題があり、現在は売春に従事する韓国人女性たちが大量に海外渡航しているという問題も色々なところで指摘されている。もっと大きな視点から言えば、そもそも「セックスワーク」をどう考えるかという結論が出ていない議論もある。

 慰安婦問題は決して日本だけの、そして過去の問題ではない。従ってあの時代の日本の慰安婦だけを抽出し、日本だけが言われなき非難を受けるのは公正ではないし、公平でもないし、女性の人権という観点から言えば全く持って不十分である。従って日本政府は河野談話を撤回した上で、古今東西全ての女性に対する人権保護の観点から、国際社会において議論を促していくべきだと私は思う。