創作。

高校生の頃はノートに誰が読むでもない小説を書きなぐって悦に入り、
大学生の頃は自主映画の真似事を始め、
大学を出てふわふわしてた頃はバンドをやったり演劇をやってみたり。
それからだんだん仕事も忙しくなり、アイドルオタクになってからはほとんど自分からなにかを生み出そうとすることはしなくなった。

そんな僕が、アイドルオタクとして知り合った人たちと一緒に同人ゲームを作ることになり、シナリオを書いている。

『キミを見つけた、ヒカリを灯すうた。』というタイトルだ。




アイドル現場を舞台にした、アイドルと、オタクたちのおりなす悲喜こもごもの物語。

一応ラブストーリー…ではあるけれど、それだけではなくて、僕らがこの約10年で目にしてきたアイドル現場の色々な「あるある」ネタを盛り込んでいる。
たぶんこれは、僕らにしか書けないもので、そして今しか書けないものだろうと思う。


創作は往々にして、つらく、苦しい。

かつて演劇をやっていた時も、ひとりで台本を書く時間はつらく、稽古場でうまく演出が形にならない時もつらく、小屋入りしてからの準備もつらく、何度も「辞めよう」と思った。

でも、ステージに立ってお客の反応を全身に浴びている瞬間はえもいわれぬ楽しさがあり、苦労をともにした仲間と打ち上げで飲むお酒はなによりおいしかった。
それで、なんだかんだ5年続いた。


今。
創作を辞めてから10年近く経って、僕は再びペンを取った。

やはり苦しい。

打ち合わせでみんなでゲラゲラ笑いながらアイデアを出し合うのは、楽しい。

が、それを家でひとりキーボードに向かってまとめていると「これは本当に面白いんだろうか」と疑問がわいてきて、全身をかきむしりたくなるような不安に襲われることもある。

何度か行き詰まり、多くの人に迷惑をかけた。

ねるすさんの書く曲はどれもクオリティが高く、シナリオも彼と一緒に練り上げ、色々助けてもらった。

りんご太郎さんの描くキャラクターはとても魅力的で、絵のチカラに筆が引っ張られていく感覚があった。

プロの構成作家であるハジメさんにも途中から加わってもらい、力を貸してもらえることになった。

仕事が忙しい中スクリプト組みをやってくれたK茶さん、僕らが苦手とする宣伝の協力をしてくれたみなみさん、取材して作品を取り上げてくれた宗像さん。

みんな、アイドル現場でオタクとして知り合った人たちだ。

すごいなぁ。

そして、僕の書いたシナリオにセリフをあててくれた声優の方々や、作詞、映像、イラストなどで関わってくれた多くの方々。

色々な人の支えがあって、まずはこの夏、ゲームの体験版を出せるまでにもってくることができた。

先日、完成した体験版をプレイした。
自分にとって、面白いと信じられるものが形になってきている実感があった。

企画の立ち上げから足かけ2年。
本編の完成まであと1年。
長いようであっという間だ。

8/10(金) コミケ94
西れ66a「ガチ恋ファクトリー」のブースで、お待ちしてます。




<余談>

色々あって心が折れかけていた時に『カメラを止めるな!』という映画に出会った。





製作費300万円。無名監督・無名キャストによって作られたインディーズ映画でありながら、その内容の面白さから全国で満席続出の大ヒットを記録している。

内容はネタバレに繋がるので詳しくは言わないが、この映画を見て、僕は背筋が伸びる思いだった。

「人生のカメラを止めるな!」

これは舞台挨拶で役者のひとりが言った言葉。

年を重ねて、疲れて、人は色々なことをあきらめてゆく。

それでも、目標に向かって走り、動くことをやめなければ、きっとなにかが変わる。

それは世界が動くような大それたものではないかもしれないけれど。

初めて演劇の舞台に立った日の晩に仲間と銭湯で「どうすればもっとウケるだろう」と裸で話し合った夜とか、

自主映画の撮影で通行人から白い目で見られながらもカメラ片手に街を駆けずりまわったこととか、

バンドを組んで2度目に出演したライブハウスのコワモテの店長から「よくなったよ」と褒めてもらえた時のうれしさとか、

たくさん思い出した。



もうちょっとだけ、走ってみようと思う。







ありがたいことに、36歳、もうそろそろアラフォーと呼ばれる年齢になってしまったので、もはや女の子に恋焦がれる気持ちなどに悩まされることはなくなってきている。最近は。

『ルビー・スパークス』という映画を見た。

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主人公は、10代の時に書いた小説が大ヒットしたものの、それ以降はスランプに悩まされて2作目を書けずにいる若い作家・カルヴィン。

彼は、ある日夢の中に出てきた魅力的な女の子・ルビーにひらめきを受けて、彼女を題材にした小説を書き始める。
すると、小説の中の女の子ルビーが実際に自分の恋人として目の前に出現。カルヴィンはパニックに陥るが、ルビーは自分が小説で書いた通りの魅力的な女の子だ。それを現実として受け入れたカルヴィンは瞬く間に恋に落ち、ルビーと付き合い始めるが…というお話。

小説の中の魅力的な女の子が実際に目の前に現れて自分を好きになってくれるなんて、いかにもオタク的な妄想全開ご都合ストーリーじゃないか、と思われるかもしれないが、この映画はそう単純なものではない。

映画の後半。
幸せなカップル生活を営んでいるかに見えたカルヴィンとルビーに危機が訪れる。
カルヴィンはもともと人とのコミュニケーションが得意でなく、かつての恋人ともよくない別れ方をしていた。魅力的な女の子・ルビーとの付き合いの中でも次第にすれ違いが生じてしまう。

カルヴィンはルビーとすれ違いを感じるたびに小説の内容を変更して、ルビーの性格を都合のいいように変えてしまうようになる。
少しでも自分の理想と違うことが我慢ならない、なんともひとりよがりな行動だ。
その行動は当然ながら波紋を呼び、後半の展開に繋がっていくわけだが、その顛末は映画を見てのお楽しみ。

このあたりのカルヴィンの行動を見ていて、僕はどうにも昔の自分を見ているようで、つらくなってしまった。

12年前、お付き合いしていた女性と些細なことで口争いになったことがある。
僕は「別れようか」と彼女に言った。

「え?」

向こうは虚を突かれたような反応になった。
なにしろ、付き合い始めてまだ一ヶ月やそこらの話で、そこまで深刻な喧嘩でもなかった。

当時の自分を省みると本当に愚かとしか言いようがないのだが、「もうだめだ、ケンカをしてしまった。この人とはうまくやっていけないんだ」と思い込んでしまったのだ。

「問題を一緒に話し合って乗り越えようとか、そういうことも言ってくれないんだね」

彼女から言われた言葉が心臓のど真ん中に突き刺さったまま、いまだに抜けない。
それが追い打ちをかけるように、あーもうだめだ、嫌われた。別れよう。それしか思えなくなった僕は、その後多少の話し合いはあったものの、結局彼女と別れてしまった。

自分を変えようとする努力もしないで、ダメだと思ったらすぐに諦めて頭からシャットアウトしてしまう。願わくば相手が変わってくれないかな、なんて思ってしまう。
実に、どうしようもないやつだった。

あれから12年以上経った。
女性とお付き合いすることになるたびに「あの時と同じ過ちは繰り返すまい」と思うのだが、結局何かしらの理由で長続きしない。

今となっては「恋愛がどうにもうまくいかないのなら、最初から恋愛をしなければよい」という域 にまで達し、とうとう自分の頭から色恋そのものをシャットアウトし始めてしまった。
「スノーボードは滑れたら楽しいだろうけど、滑れないし転んだら痛いから、やらなくていいや」と同じ。

アイドルやコンセプトカフェのキャストに「好き」と言う言葉を投げかけることで味わえる疑似恋愛の居心地良さよ!(涙)

この『ルビー・スパークス』は、「ほら見ろ!これがお前だ!」と自分の眼前に鏡を突きつけてくるような、そんな映画だった。

映画のラストには救いがあるものだが、現実ははて…どうだろうか。

36歳の僕はもう一度「やり直せる」だろうか。




やり直したいなぁ……






突然だけれども、「死」というものを初めてリアルなものとして意識できたのは2010年、僕が29歳の時のことだった。

生まれた時からずっとかわいがってくれた祖母が病気で他界して、初めて「死」が本当にあるものだと実感できた。
それまではどこか、いつかは訪れるものと思いつつもどこかフィクションの中のもののような認識でいたのに。

僕を優しく撫でてくれた手や、学校から帰るといつも笑って「おかえり」と言ってくれた顔や、そういったものが火葬されてすべて骨になってしまったのを眼前にして、30歳近くなって初めてそれに気づき、愕然とした。

「人って、本当に死んじゃうんだ」

祖母の遺体が数日間横たえられていた自宅の座敷の畳には、今でも小さなひとつの染みが残っている。
それは、遺体の防腐のために業者が用意したドライアイスによる染みだったのかもしれない。
でも僕にとってはそれがどこか、祖母の魂が現世に残っているように見えた。

ばあちゃんはまだ僕らのそばにいる。

そう思いたかったのだ。


2018年、年明けから2月にかけて、アイドルオタクとして現場を通じて知り合ったオタクの知人が立て続けに3名亡くなった。
ここでは、人数や頻度を問題にするものではない。
人はあまりに呆気なく、突然に、この世を去ってゆく。
それは僕とて同じで、いつか、蝋燭の灯が消えるようにフッとここから姿を消すことになるかもしれない。
その日のことを今から考えると恐ろしいけれど、考えても仕方がない。

友人のオタクたちは、この年末に亡くなった友を弔うために毎日飲み会を行なっている。
文字通りほぼ毎晩、都内のどこかしらで集まって酒を酌み交わしているのだ。
それこそ、何十日も連続で。

もう追悼とか関係なく、ただ酒が飲みたいだけではないか、とみんな思うだろうが、それは実際、なんともいえない。
ただ、バカだなぁ、と思わず笑ってしまう。

でも、僕にいつかその日が訪れた時も、周りにいてくれた優しくて愉快な人たちには、ひたすらバカなことをして笑っていてほしいなぁと思う。

「人に忘れられた時がその人の本当の死だ」なんて言葉もあるけれど、別に忘れたら忘れたでかまわないので。

僕の好きな映画『ドラえもん のび太と鉄人兵団』のラストシーンのように、みんなの周りにそっと風を吹かせて、ほんの一瞬でも、立ち止まってくれたら、もうけもの。


命に感謝して、毎日を楽しく。
一生懸命に。



偉大なパイプレイヤー俳優の冥福を祈りつつ。

改定「嘆きの海からこんにちは」

 

作:増山寿史

演出:アンチバッティングセンター

 

出演:

 弥千代

 佐藤文彦

 新田智則

 鈴木景子

 関口けるる(琴線フレミング)

 

<SIDE A>

 

      弥千代、佐藤、新田、鈴木、が全員喪服でステージに現れる。

      みな一様に神妙な表情で。

 

      立ち位置は下手より新田・佐藤・弥千代・鈴木。

      弥千代が中央付近で、喋る。ぽつりぽつりと、

      考えながら喋っている感じで。

 

弥千代「……本日は、ご来場いただきましてまことにありがとうございます。

    わたくし、本日のイベントを主催しております、井澤弥千代と申します。

    この時間は、本来、コント集団『アンチバッティングセンター』によるコ

    ントをお目にかける予定でした。

    わたしたちもそれに向けてこの一ヶ月間稽古を積んで参りましたが、

    ある、ひとつのいたましい出来事によって、

    それが、かなわなくなってしまいました」

 

      それ以外の人たちは、神妙に目を伏せている。

 

弥千代「すでにご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、

    アンチバッティングセンターの主宰として6年間の長きにわたり脚本・演

    出を担当していた増山寿史が、先日、思いもよらぬ形で、遠いところへ、

    旅立ってしまいました。

    わたし自身、彼とはもう4年の付き合いになりますが、今回、このような

    ことになって、本当に残念に思います。

    そして、遺されたご家族へ心からお見舞い申し上げるとともに、

    彼の魂の安らぎを心からお祈りしたいと思います」

 

弥千代「この時間は予定を変更いたしまして、増山寿史が仲間たちとともに作り上

    げ、愛してやまなかったアンチバッティングセンターのメンバーによる

    ご挨拶をもって、彼との別れの場とさせていただきたく思います。

    お客様には大変ご迷惑をおかけ致しますが、なにとぞご了承ください。

    なお、お手元の当日パンフレットに記載されている出演者の『関口ける

    る』ですが…、申し訳ありません。お恥ずかしい話ですが数日前より連絡

    が通じず、いま現在もこちらの会場にまだ到着していない状態です。

    かさねて、お詫び申し上げます。

    どうぞ、これからの30分間、お付き合いいただければ幸いです。

    よろしくお願い致します」

 

      弥千代、礼。それにあわせて一同も、礼。

 

弥千代「それではまず、アンチバッティングセンターの共同創設者・佐藤文彦より、

    皆様へご挨拶、ならびに増山寿史への

    最後のメッセージの読みあげをさせていただきます」

 

      佐藤、前へ。弥千代、一歩引く。

 

佐藤 「えー、皆様。本日はお越しいただきまして、まことにありがとうございま

    す。こんなにたくさんの方にお越しいただいて、増山もきっと、喜んでい

    ることと思います。

    それでは、彼に向けて、私からの最後のメッセージを、

    読まさせていただきます」

     ※以下、懐から紙を取り出し、弔辞を読むような感じで

 

    ■この文面は、文君にぜひ書いていただきたい。増山が死んだと思って、

     800字くらいで収まる追悼文を!■

     ※でも、「死」という言葉は使わないでね※

 

      佐藤が弔辞を読んでいる途中で、楽屋からメイド服姿の関口が現れる。

      舞台上の人間たちの背後を「事情を知らない」風にウロウロする。

      佐藤はそれに気づかず、朗々と弔辞を読み上げている。

      他のメンバーも佐藤の弔辞を目を伏せながら聞いているのでなかなか

      関口に気づかないのだが、

      やがて、鈴木が関口に気づき、横の弥千代をちょんちょんとつつく。

 

弥千代「…なっ、ちょっと、なにしてんすか。関口さん」

 

関口 「え、ああ。すいません、遅くなりまして」

 

弥千代「いや、すいませんじゃないっすよ。なんで電話出ないんすか!」

 

関口 「あっ、すいません。携帯止められてて」

 

弥千代「はぁ? なにやってんすか!」

 

関口 「すいません」

 

佐藤 「え、なんすかこの格好」

 

関口 「え、いや、衣装ですけど」

 

佐藤 「えぇー! ちょ、関口さん、なんで…?」

 

関口 「なんでって、今日、コントでしょ? だから…」

 

弥千代「え、もしかして、知らないの?」

 

関口 「え? なにが?」

 

弥千代「(ため息)文彦、ちょっとコイツに説明してあげて」

 

佐藤 「あ、ハイ。わかりました。(関口へ)関口さん、ちょっとこっちへ」

 

関口 「え? あ、はい」

 

      佐藤、関口の手を引いて下手の袖に引っ込む。

 

弥千代「(客に)えー、お見苦しいものをお見せしてしまい、申し訳ありませんで 

    した。二人が戻ってくるまでのあいだ、もう少々お待ちください」

 

      しばしの沈黙。

      なかなか二人は戻ってこない。

 

弥千代「えー…、ちょっと……時間がかかっているようです。

    我々も持ち時間に限りがありますので、ちょっと、これは…」

 

新田 「(大声で)ああっ!」

 

      と、手をあげる。

 

弥千代「なんすか新田さん!」

 

新田 「(大きな声で)ぼく、見てきましょうか?」

 

弥千代「え、あ、はい。じゃ、お願いします」

 

新田 「(大きな声で)じゃあ、いってきます」

 

弥千代「あ、ありがとうございます」

 

      新田も下手袖にはける。

      しばしの沈黙。

      なかなか三人は戻ってこない。

 

弥千代「(気まずげに)えぇー…、お客様にはご迷惑をおかけして、本当に申し訳

    ござません…。

    いましばらく、お待ちくださ…」

 

鈴木 「(大声で)はーい!」

 

      と、手をあげる。

 

弥千代「こ、今度は鈴木さんですか。なんですか」

 

鈴木 「なんだか空気が重いので、アメリカンジョークを言いまーす!」

 

弥千代「はぁ?」

 

      と、怪訝な様子の弥千代をシカトして、鈴木、トコトコとセンターへ。

 

鈴木 「あるテキサスの片田舎で、ロデオの名手と言われた一人のカウボーイが死

    んだ。

    彼の妻は、なんとその亡骸を入れるために2つも棺おけを用意したという。

    そこで俺は聞いてやったのさ。

    『ヘイ、シンディ。どうして旦那の棺おけを2つも用意するんだい?』

    ってな。

    すると彼女はこう言っ

 

関口 「(泣き声)うわああああああああああああああああああ!!!」

 

      ボロ泣きしている関口と、

      何故かフンドシ一丁の姿になった佐藤と、

      何故か女性用下着を頭にかぶった新田が現れる。

      佐藤と新田は、関口を慰めている。

 

関口 「(泣き声)ますやまさああああああああああああああああん!!」

 

      と、関口はステージ中央あたりで泣き崩れる。

 

弥千代「えっ、ええっ」

 

佐藤 「(ドヤ顔で)いやあ、彼もわかってくれたよ」

 

弥千代「ええっ、これ、何? 何が起きたの!?」

 

新田 「(大きな声で)つらいけど、乗り越えていかなきゃいけませんよね」

 

弥千代「うるせえよお前。何かぶってんだそれ。取れ!」

 

      取らない。

      鈴木が、関口のメイド服の背中に何かがついているのを発見する。

 

鈴木 「あれ、関口さん、背中になにかついてますよ」

 

関口 「(ケロッと泣きやみ)えっ本当ですか。取ってください鈴木景子さん」

 

      と、鈴木景子さんの方にお尻をつきだす。

 

弥千代「なんでフルネーム」

 

鈴木 「うっ(引きつつ)……(取る)はい」

 

弥千代「なんだこりゃ」

 

新田 「(大きな声で)手紙みたいですねえ」

 

弥千代「うるせえな見りゃわかるよ。関口さん、これ何ですか?」

 

関口 「いやあ、わからないです。

    でもこの衣装、増山さんが僕に送ってくれたものなんで、もしかしたら」

 

弥千代「もしかしたら…」

 

佐藤 「ま、増山さんからの手紙かもしれませんよ!」

 

鈴木 「もしかして遺言ですか!?」

 

弥千代「あけてみよう!」

 

      弥千代、手紙を開封して、まずは自分が、読む。

      真顔。

 

鈴木 「なんて、書いてあるんですか?」

 

弥千代「(紙を客側に広げつつ)……『nagekinoumiから……こんにちは』……」

 

 

     ●BGM:死語カード/住所不定無職 ※爆音

 

 

      ステージ前方に佐藤、新田、関口が出てきて、適当に踊る。

      女子ふたりはその隙にいったん下手袖に引っ込み、

      スケッチブックを4組(&ペン)と、

      カラーバット的なもの(orハリセン)を取ってくる。

      カラーバット的なものは、弥千代が持つ。

      スケッチブック(使用者の名前入り)は、

      後述の座り位置に置いておく。

      ある程度準備ができたところで、

 

弥千代「(男たちを殴り)いつまで踊ってんだコラ!」

 

      ●BGM、カットアウト。

 

弥千代「小劇場みたいなことしてんじゃねえ!! 座れ!!」

 

      下手から、新田、佐藤が座り、弥千代が立ち、

      関口はアシスタント的に立ってスケブを持ち、

      いちばん上手側に鈴木が座る。

 

      関口がスケッチブックを開くと、そこには

      nagekinoumiからこんにちは』の文字。

 

弥千代「(雑な口調)さて……というわけでね。この(スケブを指し)、

    増山からの手紙に書いてあった、

    『nagekinoumiからこんにちは』。ここにはね、

    ミステリーの類が好きだった彼から我々への何がしかの

    メッセージが含まれているんじゃないかと。

    まあ、そういう結論に達したわけです」

 

鈴木 「なるほど。たしかに、ミステリー仕立てにした2008年の第4回公演は、

    アンケートでボロクソでしたもんね!」

 

弥千代「余計なことは言わなくていいよ。というわけで、

    この、『nagekinoumiからこんにちは』の言葉に

    隠された本当の意味を、皆さんに考えてみていただこーじゃないかと。

    そういうわけです」

 

新田 「(大きな声で)つまり。暗号解読に見立てた、大喜利の時間ですね!」

 

弥千代「うるさい。えー、司会は私、井澤弥千代と」

 

関口 「アシスタントのシンディです☆」

 

      弥千代、無言でカラーバットを関口の腹部に叩き込む。

 

関口 「(悲鳴)ちゃくしょう!」

 

弥千代「はい。じゃあ、どなたか思いついた方からどうぞ」

 

新田 「(大きな声で)なんだか、すごくこわいですね」

 

鈴木 「んーやっぱり、nagekinoumiって言葉がアルファベットになってるのが

    怪しい気がするんですよね。

    当日パンフだと、そこは漢字になってるのに」

 

弥千代「なるほど。目の付け所はそこかもしれんな」

 

鈴木 「でも、それがどういう意味なのか…」

 

佐藤 「……わかった! これはアナグラムですよ!」

 

弥千代「下ネタ言うな!」

 

鈴木 「そうですよ! 女の子の前でアナルとか言わないでください!」

 

佐藤 「違いますよ! ア・ナ・グ・ラ・ム!

    ある単語の文字の順番を並べ替えると、

    別の単語になるっているやつです!」

 

新田 「(大きな声で)なるほど。『スイカ』を並べ替えると『イカス』になる、

    みたいなものですね」

 

佐藤 「そう! この『nagekinoumi』のアルファベットを並べ替えるんです!

    たとえばですね…(スケブに書く)……ほら!(見せる)

    ginkou maeni(銀行前に)』!」

 

鈴木 「おおー、すごい!」

 

弥千代「すごいな! ラーメンズみたいだ!」

 

鈴木 「で、銀行前になにがあるんですか?」

 

佐藤 「それはわかりません!」

 

弥千代「うん。まあ、いい。この調子でみんな考えてみよう!」

 

      それぞれ、書き始める。

 

新田 「(大きな声で)はい!」

 

弥千代「よし、新田」

 

新田 「はい。えー『mienai unko g(見えないウンコ、ジー)』」

 

弥千代「なんだそれ」

 

新田 「えっ……いや、見えない、ウンコです」

 

弥千代「じゃあ最後の『g』ってなんだ」

 

新田 「gはガッツのgです」

 

弥千代「つぎ」

 

佐藤 「はいっ!」

 

弥千代「どうぞ」

 

佐藤 「『onanie muki g(オナニーむき、ジー)』」

 

弥千代「下ネタ! あとgってなんだ!」

 

佐藤 「えっ、そりゃ自慰はあれですよ。ほら、自慰…」

 

      と、やらしい動き。

 

弥千代「ほかに!!!」

 

鈴木 「はーい、はーい!」

 

弥千代「はい、おけいちゃん」

 

鈴木 「自信作です。『genkina inu o(元気な犬、おー)』」

 

      そのスケブには、

      文字よりも大きく犬顔の怪人のイラストが描いてある。

 

弥千代「……なんですかその絵は」

 

鈴木 「はい、私が考えた超人の『シーズーマン』です!

    超人強度は200万パワーです」

 

弥千代「……うん、ありがとう。あの、余計なもの描かなくていいからね。

    つぎ!」

 

佐藤 「はい!!」

 

弥千代「はい」

 

佐藤 「(絵を見せ)TENGAから生まれた、TENGAMAN!」

 

      TENGAMANの絵の横に、

       「俺、この戦争が終わったら結婚するんだ」

       と書いておいてください。

      ※絵は事前にある程度描いておくとよいかも。

 

弥千代「超人はいいって言ってんだろ!」

 

佐藤 「違います! これは超人じゃなくて、改造人間です!」

 

弥千代「しらねーよそんなの! どっちでもいいよ!

    ってかもうアナグラム関係ねーじゃねぇか」

 

新田 「もうげんきない」

 

弥千代「え?」

 

新田 「もう、げんき、ない」

 

弥千代「なに言ってんだ本番中に。もうすぐ終わるからがんばれよ」

 

新田 「違います。ほら」

 

      そこには『mou genki nai』と書いてある。

 

      一同、フリーズ。

 

 

      ●BGMGo Outside/Cults ※爆音

 

 

      0:25の歌い出しとともに、ひとりずつ荷物を持ってハケていく。

      鈴木、関口、弥千代、佐藤、新田の順。一定の間隔をあけて。

 

 

      誰もいない中、音楽が鳴り続ける。

 

 

 

<SIDE B>に続く

→つづき


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「なげき生誕~地~」の集合写真。

寒さと酔いと暗さと顔や体についたケーキを落とす大変さとで、お越しいただいたのにあまりお構いできなかった方々には、本当に申し訳ありませんでした。

来年からは、もっと暖かい時期にやりましょうね。



【なげき生誕~人~】
10/12(月・祝) ナゲキハウス

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まさかの自宅での開催。
14人も家に人が来るってそうそうないことなので、これはこれで相当なカオス状態に。

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ももクロのライブ映像見ながらたこ焼きパーティーして、

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本職のパティシエの方が作ったケーキをいただいて、(この日は顔面ケーキはなし)

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なげき生誕2015全通の皆さまと写真を撮って、全通の証を渡したり。

文字通りのアットホームなイベントになったのですが、早々に予約が満員になってしまったので「行きたい!」と言ってくださった方でもお断りせざるをえない状況になってしまったのは申し訳ないことでした。
かといってキャパを大きくししすぎてしまうと、おひとりおひとりと丁寧に接するのが難しくなってしまうし。

夢眠軒のチケットがプレミア化しつつもディアステージで開催することにこだわる夢眠ねむさんの気持ちが少しわかった気がしました。(圧倒的規模の違いはあれども)

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最後は川崎大師に移動して記念写真をパチリ。

サイゼリアでアフタートークしてゲーセンで少しだけ遊んで、少人数ならではのフットワークが発揮できた感じでありました。



【天地人】

そもそも夏頃に思いつきで「今年は生誕祭3日間やるぞー!」と言ってしまったのがあとに引けなくなって実際に行うことになってしまったわけですが、各方面から「バカじゃないの」「調子に乗りすぎ」などとあたたかいお言葉の数々をいただき、そもそも生誕ってなんなんだろう、生きるってなんなんだろう、というくらいまで悩みつつあった時期もありました。

そもそもなげき生誕の根幹は「こういう機会にかこつけてみんなで集まって飲んだりしたい」というとこからスタートしてるので、正直僕の存在にあまり意味はないのです。

去年も書いたことですが、自分自身で生誕祭を主催してる理由は「(参加する)人を選びたくないから」。

だから個別のお誘いは基本的にせず、告知だけはしつこいくらいして、それを見て参加したいと思ってくれた方は自由に、それこそ僕が一度も会ったこともない方でも参加できるように。

そこだけは、ブレさせたくないコンセプトだったりします。今年それがうまくできてたかはわからないけど。


生誕の帰り道によくうれしくなるのは、なげき生誕をきっかけに知り合ったオタクの方々がTwitterのタイムライン上で「フォローさせてもらいましたー!」とか会話している時です。

自分のように特に何も秀でたものを持たない人間が、人と人とをつなぐきっかけ作りをできたんだ、と。
偉そうだけど、うれしくなるんです。

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誕生日の記念にいただいたイラスト。



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誕生日にいただいたプレゼント(の一部)。
載せきれなくてごめんなさい。

本当に、ありがとうございました。







「人生を楽しむコツは、どれだけバカなことを考えられるかなんだ」

とは、ルパン三世の言葉。






 

来年も、バカなことができますように。








(でも一日開催に戻すだろうな…)










おわり