海老名市立中央“ツタヤ”図書館に行ってみた/#公設ツタヤ問題 | なか2656のブログ

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ある会社の社員が、法律などをできるだけわかりやすく書いたブログです

神奈川県海老名市がカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下「CCC」という)を指定管理者として、海老名市立中央図書館の運営を行わせることとし、本年10月1日から、CCCとその傘下のツタヤ(TSUTAYA)によりリニューアルオープンすることとなりました。

武雄市図書館など、この指定管理者制度による図書館の民営化の問題には以前より関心を持っていたので、本日(10月3日)、海老名市立中央図書館を見学にいってきました。





(海老名市立中央図書館1階のエントランスホール。ハフィントンポスト「海老名市立図書館がオープン 画像120枚で館内を速報」2015年9月30日付より)

正面入り口をはいってすぐの1階の大きなエントランスホールは、正面と向かって右側はぎっしりと販売用の新刊が山積みに陳列された蔦谷書店となっており、向かって左側はスターバックスコーヒーになっていました。

大音量でジャズのBGMが流されていました。

つまり、海老名市立図書館にはいっての第一印象は、完全に、大型の仰々しいデザインのブックカフェ(喫茶店のついた本屋)です。

華美で薄っぺらい90年代バブルの臭いを感じました。

販売用の単行本および雑誌などが種類も多く、量も多く、充実しているようでした。

リニューアルオープンから3日目で、また最初の週末ということもあってか、館内はかなり混雑していました。

1階の奥に行って、販売用の新刊の雑誌コーナーの裏を覗き込んだところ、ようやく申し訳程度に図書館の部分が現れました。

はいってすぐ右側は雑誌のコーナーだったのですが、手前にあった雑誌の列がくずれていました。本立てとかきちんと用意すればいいのに・・・。


自治体から図書館の運営を委託された民間企業が、公の財産たる図書をこんなふうに杜撰に扱っていいのでしょうか?

雑誌コーナーをもう少し奥に進んでゆくと、せっかく棚があるのに、空きばかりでがらがらです。

法律雑誌は、『判例時報』と『法学教室』しか置いてありませんでした。


このCCCの判断は理解に苦しみます。この2誌しかないとは、とても公立の中央図書館とは思えません。

一番置くべき『ジュリスト』を置いていないのは信じられません。また腐っても公立の中央図書館である以上、『法学セミナー』、『法律時報』、『判例タイムズ』くらいは置くべきでしょう。

せっかくなので『判例時報』のラックを開いたところ、判例時報のバックナンバーが6冊しか置いてありませんでした。


自治体の公立図書館でも大学図書館でも、このようなラックには、直近の1年、2年分くらいを置き、それより前の雑誌は閉架書架に保管するものだと思います。

まさかCCCが武雄市図書館のリニューアルオープンの際に貴重な郷土資料を大量に廃棄してしまったように、またしてもCCCがここでも過去の貴重な法律雑誌・判例雑誌を大量に廃棄してしまったのではと想像してしまい、ちょっと嫌な汗が出てしまいました。

1階の単行本の本棚の「会社実務」のコーナーをみたところ、なぜか「有限会社」に関する本が異様に充実していました。


言うまでもなく、平成17年に成立し、平成18年に施行された会社法により、有限会社という仕組みはなくなりました。平成18年より前に設立された有限会社は特例有限会社として存続が認められていますが、新規で設立することはできません。

そのため、有限会社に関する本は、1冊くらい開架の書架に置いておいて、あとは閉架書庫に保管すればいいような気がします。

ひょっとして、CCCによる指定管理制度の導入で、人件費のコストダウンのために、海老名市立図書館は司書などの本のことがわかる専門職をすべてリストラしてしまったのでしょうか?

また、武雄市のツタヤ図書館でCCCによる蔵書の選定・購入が著しく不適切である問題が発覚し、大きな問題となり、それが海老名市のツタヤ図書館にも「飛び火」し問題となったという新聞記事を最近読みました。

これらの大量の有限会社の本が、ツタヤ図書館になる前に購入した本ならまだいいですが、CCCが選書して、海老名市の税金で関連会社のネットオフから在庫処分として購入したものなら大問題でしょう。

さらに、この会社法務関係のコーナーには、有限会社関係の本が充実している一方で、なぜかコンプライアンスに関する本は1冊もありませんでした。

また、個人情報保護法に関する本も非常に残念な感じであり、現在トピックスであるところの、マイナンバー法に関する本は1冊も書棚にありませんでした。

さすが、CCCクオリティーとしかいいようがありません。

武雄市図書館同様、海老名市のツタヤ図書館においても、天井のほうまで上方に伸びる高い本棚は健在で、図書館の1階から4階ほぼすべての壁でみることができました。


この天井近くの新聞の縮刷版はどうやって取り出すのでしょうか?近くに大きな脚立もなく、また頑丈そうな鉄の棒でブロックされてますが。

CCCが図書館の図書を市民が読むものではなく、ただのインテリアとしか考えていないことがよくわかります。

海老名市のツタヤ図書館を歩いてみると、全体的にわざとくねくね曲がりくねった迷路のように、分かりにくい建築物となっています。


階ごとに大まかに置いてる本のジャンルは階段に図が示されているのですが、それ以上細かい本棚の配置図・見取り図は存在しませんでした。そのため、どこにどんな分野の本があるのか非常に分かりにくい状況でした。

たとえば3階に法律関係やIT関係の本があることは階段の図でわかるのですが、3階にいっても、このフロアのどこにそれがあるのか、迷路のような構造なのでわかりませんでした。(結局、3階にいた職員の方に質問して、ようやく法律やITのコーナーにたどり着きました。)

また、これもネット上で多くの方が指摘されているとおり、CCCのツタヤ図書館は、わが国の自治体の公立図書館や大学図書館などが準拠している図書館の分類方法である、日本十進分類法(NDC)に準拠しておらず、ツタヤ独自の分類方式を採用しています。

そのため、われわれ市民としては、何となく大ざっぱに身についている図書館の本の配置の常識がツタヤ図書館では通用しません。それも相まってなおさら館内で迷ってしまいます。

たとえば、私が本日訪問した海老名市のツタヤ図書館の3階では、法律の本棚はなぜかIT関係の本棚の隣にありました。

また、3階の「社会問題」という、これもやや意味不明なカテゴリーの本棚の裏側には、何と「技術」という、科学技術系の本棚が配置されていました。

自然科学系と社会科学系とをあえてシャッフルするような奇抜な手法は、CCCが提唱する、「新しいライフスタイルの提案」とやらなのでしょうか?凡庸な一般人としては頭がクラクラするだけなのですが。

同時に、建物全体が迷路のように複雑な構造となっているわりに、防災上の緑色の「非常口マーク」がとても少ない印象でした。万が一、火事や大地震等の大規模な災害が発生した際に、あの迷路のような建物のなかで、利用者・職員がすみやかに建物の外に避難することができるのか疑問です。

3階にあった、図書の検索機です。「本を借りる」ボタンの隣に、それとまったく同じ大きさで「本を買う」ボタンがありますが、そもそもこのボタンは公立図書館に必要なのでしょうか?CCCは、公立図書館の指定管理者のはずでありながら、あまりにも商売人根性丸出しと言わざるを得ません。


なお、これは私が見落としていたのかもしれませんが、一般の自治体や大学の図書館には通常は設置されている、過去の新聞記事や裁判例などを検索できるPCのデーターベースのシステムが設置されていませんでした。さまざまな調べものをして、それをもとに図書館の資料を利用するためにとても有用なデータベースです。

中高生や大学生、社会人が勉強や、仕事の調べものをするのに非常に有用なデータベースですが、置いていない公立図書館というのは初めて見ました。「本屋にはそんなもの不要」というCCCの判断で撤去されたのなら、CCCは文化、学問およびビジネスの敵です。

そして、IT関連の本棚のコーナーに行くと、これはまず9月にメディアが武雄市図書館に関して報道し、10月1日頃にも海老名市図書館についてもネット上で大いに話題となりましたが、本当に武雄市図書館同様、海老名市ツタヤ図書館の本棚にもWindows98Meなどの解説本がならんでいて驚きました。


その隣には、WindowsXPの解説本が大量にならんでいました。


CCCは、こんなに大量にWindowsXPや98、Meの解説本を税金で買い揃えて、一体どうするつもりなのでしょうか?

ハフィントンポストの10月1日付の記事では、CCCのツタヤ図書館長で、2013年の武雄市図書館リニューアルオープン時の館長で、今般、海老名市立中央図書館長に就任した高橋聡氏は、「武雄市図書館の時は僕たちは『ド素人』だったが、その反省を海老名市に活かした」という趣旨の発言をしていましたが、まったく反省しているようにも、成長しているようにも思えません。

・「武雄市図書館の時はド素人でした」 海老名市でオープンした2館目のTSUTAYA図書館は何が違う?|Huffingtonpost

IT関係の本棚の隣の、法律書の書棚の商法関係のところに、金融商品取引法の本と、その旧法である証券取引法の本がいりまじって置かれていました。(証券取引法は平成18年に金融商品取引法に改正されたものです。)

これも、まさかCCCがわざと価値のない古い証券取引法の本をあえて選書して、CCCの関連会社のネットオフから在庫処分のため中古本を税金で購入したなんてことはないですよね?


かりにこれらの古くて現在は価値のない図書が、CCCが指定管理者に指定される前に図書館により購入されたものだとしても、海老名市中央図書館は本年せっかくリニューアルオープンという大規模な作業を行ったのですから、それにあわせて、古くて価値のない本は閉架書庫に移すべきです。

また、法律関係の本も、他の部分も全体的にみて、あまり充実しているとは言い難い状況でした。

たとえば会社法であれば、神田秀樹先生の『会社法』であるとか、前田庸先生の『会社法入門』などが定評のあるテキストだと思うのですが、そのような本は本棚にありませんでした。

金融商品取引法のところにも、河本一郎・大武泰南『金融商品取引法読本』などのスタンダードなテキストは置いてありませんでした。

宇賀克也先生の『地方自治法概説』などの定評のあるテキストもあったのですが、版がひとつ前のものが書架に置かれていたりしました。

憲法のところも、定番のテキストである、芦部信喜先生の『憲法』や、野中俊彦・中村睦男・高橋和之・高見勝利の4名の先生方の共著である『憲法Ⅰ・Ⅱ』も見当たりませんでした。

CCCは1階その他あちこちに、あれだけ大々的に新刊を販売する施設を用意し、これでもかとばかりに新刊を積み上げ、販売促進のためのスタッフも多数配置して、全力で営利を追求しているわけですが、公立図書館の指定管理者として、少しは図書館の図書にも予算をまわすべきなのではないかと思いました。

なお、法律とITの本棚は3階にあり、4階の子ども向けコーナーへ登る階段やエレベーターへの連絡通路のそばに配置されていました。

海老名市ツタヤ図書館は全体的に、本棚の配置の間隔が、普通の図書館より狭く、本棚の図書をみていると常に通行人の人々の背中が自分の背中にぶつかってきて不快でした。また連絡通路そばなため、通路や階段を歩く人たちの会話や足音も不快でした。

そうしたところ、4階の階段から地元の市民の方と思われる、小さな子どもを連れた若いお母さんが降りてきながら、その子に、「プラネタリウムだったのに、あんなふうになって、もったいないね」と話しかけていたのは印象的でした。(*実話です。)

その4階にも行ってみました。プラネタリウムだった円形の部屋は、子ども向けコーナーとして、一応、絵本・児童書などの貸出可能な図書が置かれていました。

(海老名市立中央図書館4階の児童書コーナー。ハフィントンポスト「海老名市立図書館がオープン 画像120枚で館内を速報」2015年9月30日付より)

しかし、4階の円形の部屋以外の通路などの場所は、ここも1階のように、びっしりと販売用の新刊の絵本や、子ども用の各種の販売用のグッズがこれでもかとぎっしりと陳列され、販売員も多数待機しており、完全に商業化されていました。


最後に、1階奥の図書館の部分からみたところです。


写真の手前が貸出できる図書の書棚で、中央が利用者が本を閲覧するための机となっています。そしてその奥に白く積みあがっている本の山や、その背後の本棚は、またしても、ここも新刊を販売する蔦谷書店のスペースです。

このように、海老名市立中央図書館を訪問してみたところ、蔦谷書店の「本屋」の部分と図書館の部分は雑然と混在していました。それにより販売促進をするのがCCCのねらいでしょう。

そして、本屋と図書館の面積の比率は、6:4か7:3くらいと感じました。そしてうえでみたように、図書館の部分が、図書や雑誌などの蔵書の充実の具合などが非常に残念な状況なのに反して、新刊を販売する本屋の部分は売るべき本も設備もスタッフも十分すぎるほど十分に用意されていました。

つまり、私は、海老名市立中央図書館は、CCCが公立図書館を便利な商売道具に利用した大規模なブックカフェ(本屋)だと感じました。

この点、たとえば町の本屋の漫画コーナーに行くと、漫画の販売促進のための「無料お試し版」として、冒頭の1話程度のみを収録した誰でも読めるリーフレットが店頭に置いてあったりして、最後のページには「続きは単行本で!」と書かれていたりします。

CCCは、指定管理者制度により公立図書館を受託するにあたり、図書館を、蔦谷書店で本の売り上げを伸ばすための「無料お試し版」程度にしか考えていないと思われます。

わざと図書館部分にはいまいちな図書しか置いておかず、新刊を蔦谷書店部分で購入させ収益をあげようというのがCCCのねらいだと思われます。

すなわち、一言で言えば、海老名市立中央図書館とは、CCCが大声で「本を買って!雑誌を買って!コーヒー買って!何でもいいから買って!」とひたすら絶叫している拝金主義な雰囲気のビルであると感じました。

地方自治法244条の2第3項は、自治体が指定管理者制度を導入するための要件として

公の施設の設置の目的を効果的に達成するため必要があると認めるとき


と規定しています。

それをおおざっぱに噛み砕いていえば、①自治体(官)が運営するよりも、民間企業(民)などが運営したほうが、より一層向上したサービスを住民が享受できること、それにより、②住民の福祉が向上すること、の2点です(鑓水三千男『図書館と法』84頁、稲葉馨「公の施設法制と指定管理者制度」『法学』67巻5号61頁)。

しかし、本日、私が実際に訪問して思ったのは、図書館の本来業務である、図書を収集・保管・管理し、分類・整理整頓し、住民などの利用者に提供するという基本の部分が非常におろそかになっていると感じましたが、この点は図書館法などの法令に反しています(図書館法2条、3条1項、2項、「図書館の自由に関する宣言」前文冒頭の一文、第1条、第2条)。

雑誌はスカスカの状態ですし、単行本の図書のほうも、まるで古本屋のブックオフをみているかのような、とても公立の中央図書館とは思えない、図書がそろっていない状態でした。

また、本の配置・分類もCCCのひとりよがりであり、利用者を困惑させるばかりです。配置図・見取り図さえ掲示されていません(図書館法3条2号)。

図書の検索システムも、一般的な図書館のOPACと異なり、CCCが独自に作成したそうですが、非常に使い勝手が悪く、利用者が不便なだけでなく、他の図書館との図書の相互貸出などの連携に支障がでかねません(同法3条4号、9号)。

このような状況は、武雄市図書館についで、海老名市においても、CCCが「ド素人」の集団で図書館の運営を行っており、司書などの図書の専門家を排除していることを強く感じさせます。この点も図書館法などの法令に反しています(同法3条3号、同法13条1項)。

その一方で、CCCは図書館法の目的外の活動である、本を販売し、コーヒーを売るという営利活動には全力をそそいでいます。

つまり、①CCCに海老名市立中央図書館を運営させたことにより、むしろ海老名市が運営していたときより図書館サービスはレベルダウンしたのであり、②住民の福祉は低下しています。

したがって、CCCによる海老名市ツタヤ図書館は、指定管理者制度に関する地方自治法244条の2第3項に照らして違法です。

海老名市はただちに、CCCに対して、報告を求め、実地の調査を行い、必要な指示を出し(同法同条同10項)、そのうえで、CCCに対して業務の全部または一部の停止を命ずるか、あるいは、指定管理者の指定を取消すべきです(同条11項)。

この点、海老名市に先行するツタヤ図書館の事例である武雄市図書館に関しては、現在、住民訴訟が提起されるまでに至り、訴訟が継続中です。その内容は、当時の市長であった樋渡啓祐氏に対して1億8000万円の損害賠償を武雄市が請求するよう求める内容です(地方自治法242条の2第1項4号。いわゆる「4号訴訟」。)。

現在の海老名市の市長は、近い将来、このような巨額の損害賠償請求訴訟を受けて立つという覚悟はあるのでしょうか。

また、このようなツタヤ図書館に関して、武雄市ツタヤ図書館のあり方を支持・賛同する政治家の方々のネット上での発言をみていると、「町おこし」「町のにぎわいの創出」「経済効果」の面に着目している意見が多いようです。

しかし、うえでみたように、図書館法2条が定める図書館の目的・定義や、同3条各号が定める図書館の業務のいずれにも、「町おこし」「町のにぎわいの創出」「経済効果」は含まれません。つまり、「町おこし」などは公立図書館の利用として目的外です。

そして、これもうえでみたように、指定管理者制度とは、「公の施設の設置の目的を効果的に達成するため」の制度であるので(地方自治法244条の2第3項)、「町おこし」「町のにぎわいの創出」「経済効果」などの図書館の目的外にこの制度を利用することは違法であり、許されません。

さらに「町おこし」という目的外に図書館を利用し、それにより図書館本来の機能が、海老名市や武雄市のツタヤ図書館のように大幅にレベルダウンしては、指定管理者制度のあり方として、本末転倒です。

政治家や自治体が、「町おこし」「町のにぎわいの創出」「経済効果」などを求めるのであれば、図書館などを隠れ蓑に使うという姑息な手段を使うのではなく、もっと正々堂々とした手段をとるべきです。

なお、海老名市立公立図書館を実際に訪問して、公立図書館としての機能のレベルダウンと、あまりにもCCCの商業主義が至上命題として全面に押し出されていることをみて、改めてつぎのような点を感じました。

一つ目に、図書館とはリクレーション施設としての機能を持つだけでなく、国民の「知る権利」(憲法21条)に奉仕する社会教育のための機関です。

つまり、図書館は、わが国の政治制度である民主主義(憲法前文第1段落、同1条等)を支える土台のひとつです。

このことは、昭和23年に制定された、国立国会図書館法の前文が、

国立国会図書館法

前文

国立国会図書館は、真理がわれらを自由にするという確信に立つて、憲法の誓約する日本の民主化世界平和とに寄与することを使命として、ここに設立される。


と規定し、また、全国の公立図書館、私立図書館等が加盟する全国図書館協会「図書館の自由に関する宣言」の前文1条、2条においても規定されています(鑓水三千男『図書館と法』6頁、塩見昇『新図書館法と現代の図書館』26頁、藤本齊「真理がわれらを自由にする<図書館文化と弁護士・弁護士会の使命>周辺雑感」『自由と正義』2015年10月号5頁、芦部信喜『憲法[第3版]』162頁)。

そのようなことを考えると、同じ「公の施設」であっても、公立公園や青年の家などと異なり、学校同様、やはり図書館は指定管理者制度になじみません。

そのため、公立公園などと異なり、公立図書館は民主主義の維持・運営のために最低限必要なコストのひとつとして、自治体など公的部門が税金で運営するべきです。

また、公立図書館をわが国の民主主義の維持・運営のための最低限必要な土台の一つと考えるなら、ある程度は必要最低限度あるべき蔵書や、あるべきレファレンス・サービスなどの水準なども想定されると思います。

ある海老名市ツタヤ図書館推進派の市議は、「他の市と同じ図書館が海老名市にあっては差別化が図れず意味がない。調べものがしたいなら海老名でなく自転車で隣の市の図書館にいけばいい。」という趣旨のツイッターの投稿をしていました。

しかし、私設の民間のブックカフェなら差別化は大事ですが、市立図書館である以上は、まず必要最低限求められる蔵書やレファエンスサービスなどを達成したうえで、開館時間の延長や、喫茶店の併設などのプラスアルファの部分を検討すべきです。

二つ目に、わが国は1990年代の歴代政権により、「行政改革」「構造改革」「規制緩和」「官から民へ」などのさまざまな「公務の民営化」の政策が強力に導入・推進されてきました。2003年に導入された指定管理者制度もそのひとつです。

しかし、CCCの運営による海老名市立中央図書館の惨状をみるに、やはり、

「『官から民へ』の新自由主義的改革とそれにともなう公務と公務員の範囲の縮小は、行政の公共性の後退と行政責任の放棄をもたらすものであり、国民・住民の権利保障の観点から見て大きな問題をはらむものである」(晴山一穂・西谷敏など『公務の民間化と公務労働』41頁)

「それは一言でいえば、憲法25条で保障された「健康で文化的な最低限度の生活」の破壊に他ならない」(晴山一穂『現代国家と行政法学の課題』48頁)

という、1990年代以降のわが国の「行政改革」「規制緩和」などによる「公務の民営化」の問題点の大きさを感じずにはおれません。

■ツタヤ図書館の問題に関するサイト
Twitter ID @todotantan 様のサイト
・#小牧市 新図書館の住民投票について #公設ツタヤ問題|海馬への境界線

武雄市図書館などに関するまとめサイト
・佐賀県武雄市の問題について:takeoproblem

ツタヤ図書館に関するサイト
・海老名市立図書館に行ってみた|Togetter

・海老名市中央図書館の謎分類メモ #公設ツタヤ問題 #海老名分類|Togetter

・海老名市立図書館がオープン 画像120枚で館内を速報|Huffingtonpost

・「武雄市図書館の時はド素人でした」 海老名市でオープンした2館目のTSUTAYA図書館は何が違う?|Huffingtonpost

・武雄市だけじゃない!「リアル図書館戦争」が拡大中|週刊朝日

・批判多数のTSUTAYA運営武雄図書館 市教委は「わからない」|NEWSポストセブン

・関連会社から“疑惑”の選書 武雄市TSUTAYA図書館、委託巡り住民訴訟に発展|週刊朝日

・書籍・DVDなど大量廃棄 武雄市図書館新装時に|佐賀新聞

・「TSUTAYA」図書館 小牧市 住民投票で反対多数|NHK

・小牧市住民投票:新図書館に反対多数…計画見直しへ|毎日新聞

・図書館の自由に関する宣言|日本図書館協会

■関連するブログ記事
・調布市立図書館がsuica等のFelicaを図書館利用に使えるようシステム改正-個人情報保護

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・「武雄市図書館の時はド素人でした」とCCCツタヤ図書館長が「自白」/指定管理者制度

・ツタヤ図書館は新刊やコーヒーの販売収益で図書館を運営している? #公設ツタヤ問題

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・三鷹市立図書館開館50周年記念図書館フェスタと武雄市図書館について

・Tサイト(CCC)から来た「アンケート」のメールが個人情報的にすごかった/利用目的の特定

■参考文献
・鑓水三千男『図書館と法』6頁、84頁
・塩見昇『新図書館法と現代の図書館』26頁
・芦部信喜『憲法[第3版]』162頁
・宇賀克也『地方自治法概説[第5版]』327頁
・晴山一穂・西谷敏など『公務の民間化と公務労働』41頁
・晴山一穂『現代国家と行政法学の課題』48頁
・藤本齊「真理がわれらを自由にする<図書館文化と弁護士・弁護士会の使命>周辺雑感」『自由と正義』2015年10月号5頁


図書館と法―図書館の諸問題への法的アプローチ (JLA図書館実践シリーズ 12)



新図書館法と現代の図書館



ず・ぼん19: 武雄市図書館/図書館送信/ほか (図書館とメディアの本)



公務の民間化と公務労働 (自治と分権ライブラリー)



現代国家と行政法学の課題―新自由主義・国家・法



憲法 第六版



地方自治法概説 第6版



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