「移民に歌を」
風が鳴り始めた。
西から東へ、少し尖った乾いた風。海に舞う鳥みたいな泣き声。
新しい風なんだろう。どこから吹き、どこへ流れるのか、僕は行く先を眺めてみた。
荒れた地がひろがる。そこなは道らしい道はなく足跡も見当たらない。
僕は思う。
風の声に耳を澄ませ、空が涙するときは両の手を広げ、稲妻が喚き散らす夜にはその叫びを浴びてみようと。
朝焼けに目を細め、幾億の星を数え、太陽に灼かれても砂上を歩き、凍てつく氷の国でも立ち止まることはなく。
新しい世界で新しい名前を呼び、
新しい街で新しい想いを抱き、
新しく出会う人々の鼓動を、この痩せた体に刻み続ける。
光を追い、光を求め、闇に触れることを恐れることもなく、この2本の足で歩き続ける。
孤独に負けない心を持ち、体温と同じくらい優しい言葉を探してみる。
抱いた想い、そんな全てを自分の言葉で紡いでいたい。
愛だとか自由だとか優しさだとか。
希望や願い。
かたちにはならなくとも誰もが胸に宿らせる、命への想い。
少し休んだら、また、立ち上がろう。
目を閉じて、微かに感じる光に手をかざして。
STAR ENTRYS
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