the sunshine underground -14(end chapter 2/2) | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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 ガゼルへ。
 夜は明ける。ありふれた言葉だ、だけど、それは真実だ。いま、僕はそう思う。
酷い暮らし向きだったはずなのに、それを恋しく思うのは、たぶん、君がいたからだ。
生々しく記憶は残ってる、だけど、ずいぶんな時間が経った。
あの日、鎮圧された君らの多くは射殺されてしまった。
ガゼルと言う名を探してはみたけれど、所詮は本名じゃない、所在はつかめないままだ。
 サンシャイン・アンダーグラウンドは、僕たちの故郷はまだ残っている。
あまりに多くの犠牲に立ち、また、例のウイルスの実験場にされていたことが明るみになり、再開発の計画が暗礁に乗り上げたからだ。

 汝の隣人を愛せよ。
聞き飽きるくらい聞かされた言葉だ。
君はいま、どこにいる?

 僕は元気だ。亡命者として、別の名を借りて生きている。ディータと言う名で呼ぶ者は誰もいない。だけど、僕の本当の名はディータだ、それはいまも変わらない。 
 ここに一枚の写真がある。ガゼル、いつか君に再び会えたら、あの街に生きた時間を取り戻そうって話したいんだ。


☆☆☆


 ディータ、生きてるか。
 俺はあの日、拘留された、暴動の主犯とされたけれど、そう大きな罪には問われなかった。
皮肉なことだよ、俺に国籍がなかったからだ、法的に存在しない人間を裁く法がなかったんだ。
国外退去を求められたが、俺には行くべき場所なんてなかった。受け入れてくれるような国もなかった。
それで良かった。
お前がいないのなら、生きたい場所なんてない。

 いまは世界中を放浪する日々を送っている。暮らし向きはアンダーグラウンドにいたころとたいして変わらない。
名を聞かれることはまずないけれど、聞かれたらガゼルと応える。
他に名乗る名は、ない。
 読み書きは少しだけできるようになった。ずいぶんな取り調べを受けたし、調書を読めないことには話にならなかったんだ、ただ、それだけのことだけど、おかげでこうして手紙を書ける。

 未来は見えない。
別に見たくもないし、そのときになれば分かることだ、それでいい。
アンダーグラウンドはまだ残されたままだと聞いた。戻る気にはなれないけれど、懐かしく思うときもある。

 なあ、ディータ。
夜は必ず明ける。当たり前で古びた言い方だけど、それはよく分かる。生きてさえいれば、必ずまた夜明けを見る。
 一枚の写真を同封しておくよ。
俺たちの故郷の、朝焼けの写真だ。
もしいつか再会できたら、あの鉄塔に変わるものを見つけよう。
今度こそ、その頂を目指すんだ。

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all photograph and illustration and text...
by Billy.

“the sunshine underground”

the end.