the after years -part 6 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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the sunshine underground / after life

  ハーバーを抜けると風景は刷新されていた、見る限り島の周囲はぐるり一周を高い鉄網が囲み、何重にも張られた有刺鉄線が外部のものの侵入を阻んでいる。網目から島内の様子を伺う、そしてその風景は、俺たちがかつて生きたサンシャイン・アンダーグラウンドとは別の世界にしか見えなかった。

  面影がないわけじゃない、一見であれば荒廃は変わらないし、雑然とではあるが、かつてにように工業地帯があり、そしてまばらながら行き交う人の姿も確認できる。
  何が違うかと言えば……その場所に存在する人々の歩みに確かな目的が感じられるところだろう。いま、このサンシャイン・アンダーグラウンドに生きる人々はかつての俺たちとは違う、なんらかの意思を持ってここに集まったと云うことなんだろう。
  濃いネイビーの制服がライフルを手に徘徊している、島にいる者を監視しているのか、侵入者を警戒しているのかまでは分からない、どちらの任務も兼任しているのかもしれない。

  空を突くほどの高い煙突から灰色が流れる、それは鉛を溶かしたような雲に混ざり、陽を塗りつぶし、切れ間から黄金が鋭く地に刺さる。その光のなかに、跳ねるように踊る子供の姿はない。

  ディータと別れてしまってから、俺は世界を転々としながら、時々、この小さな島を思った。
何処にいても、そこにいる自分に違和ばかりを感じてたんだ。居場所を探す旅だったと言えば感傷的に過ぎるだろう、それでも、自分に与えられた場所がないと云うのは、わけもなく酷い焦燥に駆られる。
  サンシャイン・アンダーグラウンド。そして、それを有するニホンという国家が破綻し、経済的、軍事的超大国の統治下に置かれたという話は聞いた。結果としては、それがアンダーグラウンドではなく、本国内に数えられないほどのスラムをつくり、外資の流入も手伝って、無国籍国家の様相を呈しているらしいことも。

 そのとき、ニホンに生まれ育った人々は、なんの抵抗もなくあきらめたのだろうか。

「あんた、そんなところで何やってるんだ?」
  振り返った俺の視線の先、波間から顔を出した岩の上に人の姿を確認できた。
  波を打ち、砕けた水が光を乱反射させていた、眩しさに眉をしかめる、声の主は細長い両手を広げ、頼りない足場を楽しんでいるようにさえ見えた。



……続劇