the after years. part 9 | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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the sunshine underground / after life

 島へ渡る連絡橋、その真下に這うパイプ。それをつたってゆけば、必ず島へたどり着くだろう。
僕はひとりでも立つ力を手にし、君にまた出逢うだろう。
何も与えられずに生まれてきた、わずかに手にしたものは奪い取られた、しかも、僕は僕らの生存さえ嘲笑った人間に飼われてたんだ。
決着をつけなくちゃならないだろう。
僕らの生まれた、故郷のために。

  指先で感触を確かめながらパイプの上を這い進む、たどるたびに埃と錆が僕を包んだ、知らない間にあたりは夜の闇に覆われていたが、光になるものはここにはなかった、遥か下、海面には静かな波にたどりついた月の明かりが消えかけたランプのように儚く明滅を繰り返していた。はやり続ける鼓動を抑えながら、ただただ、暗闇の直線を僕は進んだ。

  夜が明ける。
  一夜をかけて、僕はようやく対岸に着いていた。フェンスはちょうど、ひと一人がくぐり抜けられる程度に格子が切り取られていた、恐らく、僕と同じやり方で入島したものがいるんだろう。
  切断され先端の尖った網に背中を擦られ、周囲の気配を嗅ぎながら、ついに僕は立ち上がった、
全身の埃を払い、汚れの酷いジャケットは脱ぎ捨てた。物陰を見つけ、僕はサンシャイン・アンダーグラウンドの様子を眺めた。

  故郷。
  僕とガゼルが出逢い、生き延びた場所。けれど不思議に感慨はなかった。その風景はあまりに思い出の地とはかけ離れていたからだ。もちろん、細部を見れば、かつてのサンシャイン・アンダーグラウンドの名残りはうかがえる、だが、島の何処からでも見上げることができた鉄塔はやはりなく、そして、あいつと……ガゼルと並んだ、廃車を積み重ねた高台も見当たらない。
  そして、ガゼルが指揮し、その果てに崩されたクーデター、あの虐殺の広場はその歴史を覆い隠そうとするように、コンクリートで硬く塗られ、さらにその表面を鋼鉄で張った建造物が太陽光を遮断していた。

  見る限り、アンダーグラウンドは新たに再生していた。ネイビーの軍服が火器を担ぎ闊歩している、島に生きると思われる人々の足取りは確かで、食うに困るような貧困がのさばった、かつてのスラムではない。だが、やはり、煙と埃が混じった風が鳴り、国籍を判別できない人種が目につく。
  やはり、法の下に庇護された地ではないのだ。

  島の中央、噴水が飛沫をあげる公園に足を運んだ、平和を意味し、僕らが存在したことをなかったことにするつもりか、鳩をかたどった彫刻までが広場を取り囲む。
  なにを眺めるでもなく、僕はただ、石のベンチに深く沈みこんでいた。意味の無意味を思うでもなかった。
  僕はただ、過去を懐かしむために来たわけじゃない。

  空腹と解けた緊張のせいか、いつの間にか眠りについていたらしかった。
  夢だろうか、あるいは幻かもしれない。

  千切れて落ちながら瞬間だけ激しく光を放つ、噴きあげては消えてゆく水の向こうに、並んで歩くふたりの姿が見えた。
  身を隠すでもなく堂々と中央を歩いている。
細長いシルエットだ、背の高いひとりはわざとらしい金髪で、もうひとりはまだ幼さを残してる、ちょうど、このアンダーグラウンドに生きたころの僕みたいだ。
  くわえタバコで、きっと口笛を鳴らしてるだろう、好戦的でどこか不敵な笑みさえ浮かべ、合わせた両手の拳の節を鳴らしながら歩いてる。

  ガゼル、と僕はつぶやく。その自らの声に目を覚ます。再び落ちてゆく太陽、一日が燃え落ちてゆく。
  その肩を、対向する誰かにぶつけながら男は歩き続けてる、きっと「へへへ」なんて不貞腐れた笑顔を浮かべ、人差し指で鼻の下を擦ってる。
  その姿は輪郭を伴って、ゆっくりと近づいてくる。
  夢でも幻でもない、それは、ガゼルだった。


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……続劇