the after years. part the end(?) | ワールズエンド・ツアー

ワールズエンド・ツアー

田中ビリー、完全自作自演。

完全自作、アンチダウンロード主義の劇場型ブログ。
ロックンロールと放浪の旅、ロマンとリアルの発火点、
マシンガンをぶっ放せ!!

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the sunshine underground / after life

  誰よりも速く走ればそれでいいんだ、そう、誰よりも。
  ガゼルが言って、それを合図にディータも駆け出した、僕は慌ててふたりの後を追う、その背に羽根があるかのように、風を裂いて加速してゆく、突然の行動に僕たちを監視していた兵が一斉に発砲する、もちろんそんなのが当たるはずがない、足跡か影か、わずかな過去を狙っているみたいにさえ思う、加速する意思は感傷を剥ぎ取るように直線を滑ってゆく。

  速度、それは絶対的な瞬間だ。僕は息を切らせながらひたすら体を躍動させる、ヒトだとか動物だとか……そんな感覚さえない、海から吹く向かい風の隙間を縫うようにただ進む。銃声と怒号がまだ聞こえてる、出自のわからない様々な言語で飾られたコンテナが立ち並ぶ倉庫街を抜け、無人の港にたどり着く。
  振り返ると荒れて傷ついた地が広がる。僕はただ、『ふたりに会ってこい』と言われ、よく理由も分からないままこの島にやってきた。
  分かったこともある、かつて混沌のうちに焼き払われたこの地はいま、不本意な再生を遂げさせられようとしている。ここに生まれ、生きた人びとの意思も、そして、この島を建造した人間の思いも放棄されてしまうかたちで。

  ガゼル、ディータ。僕は話し始める。
「なぜ、オヤジがあんたたちに会ってこいって言ったのか、それが分かる気がする。トーキョーへ行こう。ボスに会って欲しい、僕がオヤジと呼んでる、ラドラムに会わせたいんだ、いや、きっと、オヤジもそのためにここへ行けって言ったんだよ」
「……ラドラム、か」
  そういうことか、ディータはタバコに火をつけた。
  ああ、嫌いか、ディータはギャングなんて嫌うのか。
「いや、嫌うとか好きだとか、そんなのじゃない。ラドラム・ファミリーは知ってる。それでお前がこのシマに来たってことだな」
  そうだ、この島は政府によって廃棄された、そして流入してきた他勢力によって、支配を受けてる。
「俺は……ガゼル、ディータ、俺はいくら腐ってもニホン人なんだ、力を貸してくれ、バクスター一家と駐留軍から祖国を取り返す。この国は、俺たちの国なんだ」

  しかたねえな、ガゼルは火種を踵ですり潰した。
「お前の一味のシマなんかどうでもいい、でもな……」
  泥が泡をたてる波打ち際に唾を吐く、そして続けた。
「支配は嫌いなんだ、どうせ行くところもない、せいぜい抗ってやろうじゃねえか、なあ?」
「ああ」、ディータは仕方ないな、みたいな感じで同意した。
  面白いな、次の敵はニホン国臨時政府と支配者の合衆国、そして俺たちの故郷を奪ったマフィアか。
「最高だな、ディータ」
「最悪ってヤツだよ、どうしようもないな、お前は」

  キン、とコンクリートを弾く耳障りな音が届いた、ようやく追いついた追っ手たちは飽きもせず僕らを狙ってた。遠吠えとともに足音が波のようにやって来る。
  片目を下弦の月のようにしかめ、その夥しく群れる者たちを凝視していた、かかってこい、そう言わんばかりに。

「たったいま、この瞬間をもって」
「俺たちは仲間だ」
「お前がボスなら、こんなとき、どんな命令をする?」
  答えはひとつだった。
「総員、その命をもって帰還しろ、それ以外にない」
  港にはクルーザーが待機してる、僕たちは島を離れ本土に向かう、逃げろ、いまはまだ死ねない、僕たちはトーキョーへ帰るんだ。
 待ってろ、サンシャイン・アンダーグラウンド。必ず、この地は取り返す。
  いまはただ、逃げろ。
  誰よりも速く。


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the after years / the sunshine underground afterlife……the end.

But a story going around an island still continues.

Next trial “THE DIRTY COLORS”.

All Photograph,Image Illustration and Text……by billy.

thank you.