近くに可愛いおばあちゃんが住んでいた。

チヨエさんは八十半ばをすぎていた。ピンク色や可愛いものが大好きで、ショルダーバッグに小さな ふなっしーをぶら下げていた。チヨエさんは人から いろんな物をもらっては、人にいろんな物をあげていた。私にもいろんな物をくれた。網戸が外れた時は直しに行ったり、頼まれてスポーツブラを買いに行ったりもした。ずっと歳上だけど、言動が可愛くて のんびりしていて、時々せっかちで危なっかしくて、ほっておけない存在だった。

認知症が進んできたチヨエさんは、昨年末から施設や病院を転々としていた。冬季はインフルエンザ感染の恐れがあるので、面会する事が出来なかった。
チヨエさんと仲良しで、まるで姉妹の様なイクコおばあちゃんと一緒に、チヨエさんのお見舞いに行こうと約束していた。

やっと暖かくなってきた四月の初旬、痩せこけてしまった チヨエさんは、主治医の身長が高くてイケメンの先生に、お姫様だっこをされ、いろんな話をしながら、徐々に呼吸が弱くなり 息を引き取ったと、イクコさんに昨日聞いた。

「なんて幸せな最期なんだろう。まるで おとぎ話みたいだね」と、イクコさんと私は涙を流しながら、チヨエさんの話をたくさんした。

亡くなる直前に、チヨエさんは ご家族同伴で イクコさんの部屋と私の部屋を尋ねて来たと聞いた。
私は留守にしていて会えなくて残念だが、姉妹の様に長年近くに暮らしてきた イクコさんとは しばしの間、話す事が出来たという。
それは何よりも嬉しい事だ。