ネイルサロンのおかしな現実。後編 | 爪の解剖学と材料学に基づいたネイルサロンNoelRose(ノエルローズ)パウラ後藤桂子

ネイルサロンのおかしな現実。後編

 

ネイルサロンのおかしな現状。
→前編はこちら

 
※沢山のいいね!やメッセージありがとうございますm(__)m
こんな事を綴っていても意味がないかもしれないと思っていましたが、叫び続けようという勇気を頂きました!ありがとうございます!
 
 
さて、原材料から叩き出して健全な経営をするには必要な施術料の半値が相場になってしまい、マシーン化した若手ネイリスト達しか居ないネイルサロン。
 
そこで何が起きてしまうでしょうか?
そのシワ寄せはお客様に降りかかります。
 
「定額制」や「やり放題」が当たり前となった頃、当店にいらっしゃる新規のお客様からおかしな言葉を聞くようになりました。
 
「凄い!お姉さんがオフすると痛くないんですね!オフって痛いものだと思ってました!」
 
…い、今なんと??
オフが痛いって、どういう事?
しかも「痛いのが普通だと思っていた」?!
 
ご新規様の殆どが「痛くない!」と感動されているのです。
 
意味が解りませんでした。
他のサロンで何が起きているのか…。
 
そう、若手がジェルと自爪の境目の区別も付かない程の未熟な目のまま、
無理矢理な時間設定に追われ、
ガツガツと自爪まで削っていたのです。

 
 
しかも、限界まで材料費も人件費も削減し提供している施術ですから、材料費に含まれるファイル(爪ヤスリ)も満足に支給されないサロンが多く、目が潰れて削れないファイルで圧をかけて削っているので摩擦熱が発生する事により「痛い」と思うのです。
 
 
そして、大変失礼ながら…
お客様も我儘放題を言い始めました。
 
やり放題をやっているサロンでは、お客様は少しでも多くのアートやパーツを乗せてもらいたいので「オフは15分で」など無茶振りをするようになったのです。
 
ゴテゴテと色々乗っていてハードジェルやアクリルでガッチガチに固めてあるネイルを15分でオフなんて無理です。
 
でも、ここニッポンは「おもてなし」の国。
「お客様は神様」なのです。
 
お客様にやれと言われたら、やるしかないんです。
盛り盛りガチガチのネイルを15分でオフせよと言われたら、致します。
 
が、ガッツリ削ります。
ニッパーでゴリゴリ剥がします。
その時に自爪の層が無理に剥がしたジェルに引っ付いて剥がれて、二枚爪になろうが薄くなろうが剥離しようが知ったこっちゃない。
 
と、なりますよね。

 
 
ですが、ちょっと待って下さい。
ソフトジェルは別名ソークオフジェルとも呼ばれます。
ソークオフとは、溶剤でオフできる、という事です。
 
ソークオフできるジェルがソークオフ出来ないハードでガチガチに固めてあるのって、
おかしいですよね?
 
当初ジェルは「ツヤが良くて長持ちするポリッシュ」感覚だった筈が、お客様の要求はエスカレートしていき…
 
「ストーンは取れない様に埋めて」
「パーツを乗せて取れない様にして」
「爪が薄いから厚塗りして」
 
只でさえ材料費も追いつかない価格設定なのに、そんな事を求められたらソフトジェルより仕入れ値が安く磨耗しにくいハードジェルを盛る他なかったのです。


 
ですがお客様は「付いているのはカルジェルです」と仰るのです。
プロは溶け具合、削った感触、ダストの出方、等で分かります。
 
容器だけカルやバイオで、中身は違う物を使っているサロンが横行している事にも愕然としました。
 
でも、それも仕方がなかったのかもしれません。
カルやバイオは他メーカーの倍以上の原価ですが、お客様は「カルかバイオがいい」と理由も解らず只のブランド信者になっていたのですから。
(今はどのメーカーに拘る方は減りましたが)
 
ですが、何を使用していても痛い思いをさせるようなオフをすれば爪は傷んで当然。


 
お爪が傷んで薄くなれば、持ちも悪くなります。
でも「4週間は持ってくれないと」とまた無茶な要求に、必要以上のサンディング(爪表面を削る事)をして、益々爪は傷んでいく。
(大体のメーカーが「3~4週間のもち」としているのに「最低4週間はもたないと下手」みたいな概念を植え付けたのも、差別化に必死になったサロン達の謳い文句の責任と思いますが)
 
正しい施術を行っていれば「爪が傷んだからジェルはしばらくお休みしなきゃ」なんて事は起きません。

 
現に、私が10年以上担当させて頂いているお客様は1度もお休みした事のない方が殆どです。
私だけではなく同じ位の歴を持ち、正しい施術をしているネイリストの顧客様は同じです。

 
きちんとした施術をしていないサロン。
知識の乏しいネイリスト。
無茶振りをするお客様。
その根底は価格崩壊したマーケット…。


 
それでもサロン達は頑張ります。
 
差別化を図り「ウォーターケアでジェル長持ち!」と謳い始めました。
確かにルーススキンをきっちり取れば持ちは良くなるでしょう。
 
…でも皆さん、ジェルって基本的にはオンの前にウォーターケアしちゃ駄目なのご存知でした?
 

【2018年3月追記】

殆どのメーカーが正規の工程として組み込んでないけど、別に大丈夫だよw

 
爪は皮膚の一部なので水分蒸散しています。
その水分が爪とジェルの間に溜まると中浮きしたり、リフトした状態で放置しておくと水分が留まり、そこに運悪く菌が付着し条件が整うと「グリーンネイル」になるのです。
【2018年3月追記】
蒸散している水分が中浮きの直接的原因にはならないし、
グリーンネイルはリフトの隙間の水分によって菌が増殖してなるものじゃありませーーーん!!w
 
でも、カルジェル(その他のメーカーもありますが)のように蒸散作用のあるジェルならギリセーフですし、シェラックの様にセミウェットケアを推奨しているメーカーはOKです。
爪の水分蒸散を妨げない為、基本的にはグリーンネイルにはならない原理です。
【2018年3月追記】
うん、グリーンネイルは爪の水分蒸散云々は関係ないからねwww
 
因みにバイオジェルはこのシステムではありません。
勿論ハードジェルもです。
 
でも、中から外に逃がしてあげられるという事は、外から中に入ってくる事もあるという事。
水分の行き来が過度になればポロッと取れることもあるので、逆にバイオなどの蒸散作用のないジェルの方がもつ方もいらっしゃいます。
 
カルとバイオの違い、その他数多くのどのジェルの特性を知っていて、
自分の扱っているジェルの特性を理解して施術しているネイリストがどの位いるのでしょうか。


 
こんなサロンもあります。
カルジェル専門店と謳いながら「ウォーターケアでしっかり甘皮処理!トップは安心のハードジェルコート!」…。。
言ってる事が無茶苦茶です。

ウォーターケアして、ベースからトップまで全てカルジェルを使っているのなら、上記に説明したように水分を蒸散させられるのでアリかと。
でも、ハードジェルで仕上げているのでは意味がなく、挙句に「安心のハードジェル」って、何が安心なのかの根拠も分かりません。
摩耗しにくいから「安心」なのでしょうか?




 
ソフトジェルがリフトしにくい理由は、アクリルやハードジェルと違い柔軟性がありお爪と共にしなるからです。
ハードジェルで硬めてしまってはその特性さえも奪ってしまいリフトし易くなるのです。
そして、リフトしてしまったらベースがカルでもトップで蓋をしているのいるのでグリーンネイルの危険性もはらみます。
【2018年3月追記】
うん、グリーンネイルは爪の水分蒸散もリフトも関係ないからねwww
 
勿論、中にはハードジェルの方が持ちがいい方もいます。
ソフトジェルではお爪がしなり過ぎるので、ある程度硬さを出す事で持ちが良くなるパターンです。
 
一言に「ジェル」と言っても、色んなシステム、色んな組み合わせ、そして、お客様の生活習慣や爪質に合わせなければ「◯◯ジェルだから絶対もつ!」とは言えません。
 
でも、そんな専門知識も引き出しもないまま、就職先で用意されたジェルを何だかよく分からないまま使っているネイリストが殆どだと思います。


 
そして「爪に優しい」はずのジェルが間違った使い方をされ、
今度は「ジェルのし過ぎで爪がボロボロ。そんなあなたに!」というキャッチフレーズで様々なネイルケア用品が開発。
 
こんな広告を謳われては、ジェル未経験者は「あぁ、やっぱりジェルは爪が傷むんだ」となっていきます。


 
そして「ノーサンディングジェル」と「ジェル用プライマー」の登場。
 
爪の表面を削る事なく乗せるノーサンディングジェルですが、今までしっかりサンディングしてジェルを乗せていた方は今迄のようには始めは持ちません。
ボロボロの部分が新生爪に生え変わるまで、起こりうる内容をお伝えするカウンセリング力も必要ですし、その上でお客様には根気よくサロンに通うサイクルを守ってもらわないと意味がありません。ですが・・・
結局「ノーサンディングジェルで持ちを良くしろ」と無茶振りです。
【2018年3月追記】
この当時は要するにパラジェルのことを指しているんだけど、今は別にノーサンディングなんて普通だよね。
4年もあったら常識とか新しい何かって変わる変わるー!!

 
そして、ジェルは「爪に優しい」が大元なのに何故ジェル用プライマーを開発!?
でも…これもお客様の「持ちを良くしてくれ」の声を形に表したメーカーの心意気です。
【2018年3月追記】
今思えば、ジェル用プライマーがあっても別にいいじゃん、と思う。
別に正しく使いさえすれば、材料的に考えたら普通のジェルと濃度の違い程度なんじゃないかなって思うから。
 
 
この、ネイル業界のハチャメチャさに未来を感じれますか?
 
全てが狂っていませんか?
 
【2018年3月追記】
4年あれば常識もプロダクツも変わるのに、これだけは変わんねーよなー。
 
そして、ネイリストになった時から思っていました。
私達ネイリストはお客様に刃物を向けています。
キューティクルニッパー、アクリルニッパー、メタルプッシャー、コーンカッター、など他にも沢山の危険な器具や薬剤を扱い、皮膚(甘皮や角質)を除去しています。
 
時に医者が使う物と同じ物で処置し、医者ではどうしようもなく爪を剥ぐしか選択肢がない事例をネイリストならカバーしてあげられる事も多々あります。
 
髪を切っても血は出ないのに美容師は国家資格です。
まつエクは、ネイルよりずっと歴史が浅いにも関わらず美容師免許が必要となりました。


まつ毛エクステは眼球に損傷が出たり瞼が腫れたなど消費者センターに多くの相談があったため国はすぐに動いたのだと思います。
(美容師は眼球の勉強をする訳でもないのに、お国のお偉いさん達が「首から上の理美容に関する」「まつ毛も毛でしょ」的な考えでとりあえず美容師免許にした感が否めませんが。)

ですが、ネイルは指先をちょっと怪我させられたって翌日にはかさぶたになり治癒するので余程でない限り相談に行く人も少ないのだと思います。ですが・・・

 
なぜ、切れば血が出る皮膚という箇所を切除し時に医者と同じ処置を行っているのに、ネイリストが国家資格ではないのでしょうか?
 
国家資格にする・しないという事は以前から業界内では話されて来ていますが、色々大人の事情でずっと実現できていません。

でも、この全てにおいて飽和状態のネイル業界を正す道は、

 
①お稽古感覚で簡単にネイリストを目指すような志の低い人間は踏み込めない地位にする
(お稽古で美容師やその他の国家資格を目指す人いませんよね?)
②結果、ネイリストの質を向上
③健全な経営のできる施術料を戴いても消費者が納得する知識や技術力を持つ

④健全な経営のできる状態になれば労働条件がまともになる
⑤ネイリストを目指す人間の志も上がり、未経験者の育成もする事が出来る

そうなって、ようやくこの業界の未来は切り開けるのではないでしょうか?

 
私は、この仕事に誇りを持っています。
ネイルが、いかに女性を癒し、モチベーションを上げ、気分を良く出来るものか、心底知っています。
 
女性が働かなければ労働者が足りない今、その働く女性達を癒し勇気付ける事の出来る、縁の下の力持ちの役割を果たすこの仕事が私は大好きです。

 
そして、ネイリストもまた女性です。
結婚や出産を機にネイリスト人生を諦めた人も数多くいます。
全国で星の数程あるネイルサロンで、産休や育休制度のあるネイルサロンは数える程しかありません。
男性ネイリストもいますが、大手のゼネラルマネージャーにでもならない限り家庭を築く給料はもらえないでしょう。
【2018年3月追記】
ここは結構変わってきたなー。まともな所は。
 
長い想いのたけを綴ってまいりましたが、まだまだ伝えたい事は山程あります。
声を上げる場所も勇気もなく、悶々と心の底で苛立ちと不安を持ったままのネイリストが全国に沢山居ると思います!
 
勇気を出して、声に出して行きませんか?
私達の未来です!
 
先生方が道を切り開いて来てくださったように、これからも私達がネイル業界の道を切り開いて行かなければいけないんです。
 
長い文章に最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。

ネイリストでなくても共感して下さった方々、ありがとうございます。是非、この記事を拡散して全国のネイリスト達へ届けてください。
 
そして、共感して下さったネイリストの方々、是非ご連絡下さい。
メッセージ、コメントなど、ご連絡お待ちしております。
love,
Paula Keico