「熱湯風呂」で長女虐待 浮かび上がる「孤立した母親の姿」 | 親子交流(面会交流)支援団体の代表であり、お坊さんでもあり、母でもある私の日々徒然日記

親子交流(面会交流)支援団体の代表であり、お坊さんでもあり、母でもある私の日々徒然日記

一般社団法人びじっと・離婚と子ども問題支援センターの代表理事であり、大法寺副住職でもあり。そんな自分の日々徒然日記。

 「娘が泣きながら転げ回る姿がおもしろかった」。2歳の長女に熱湯をかけてやけどを負わせたとして、ともに無職で、母親のA子(19)と友人のB子(19)が傷害の疑いで警視庁に逮捕された児童虐待事件。

 未成年ながら2人の子供の母親だったA子。B子もまた、1歳の娘を持つ母親だった。テレビ番組で放映される「熱湯風呂」を笑いながらまねた犯行は、とても親の行為とは思えない。なぜ2人の若き母親は暴走したのか。その背景には、子育てに孤立した姿が浮かんでくるのだが…。(道丸摩耶)

 ■「お笑い芸人みたい」とエスカレート

 警視庁少年事件課と  署の調べによると、事件の経緯は次の通りだ。

 3月12日。自宅マンションで、A子は朝からイライラしていた。「娘が言うことをきかなかったから」(A子の供述)だ。

 A子は20歳の夫と2歳の長女、8カ月の長男の4人暮らし。内装業の夫は仕事で留守だった。

 正午過ぎ、娘を連れたB子がA子のマンションを訪ねてきた。B子とはA子が高校1年のころに夫の紹介で知り合い、いつもいっしょに遊ぶ仲だった。

 午後4時50分ごろ、テレビを見ていた2人は空腹を覚え、冷蔵庫にあったシューマイを食べることにした。B子が、A子の長女にシューマイを食べさせようとしたそのとき、“事件”は起きた。

 「アチッ」と言ってシューマイをはき出した長女。熱々のシューマイを口に入れてしまったのだ。

 19歳の母2人が次に取った行動は、驚くべきものだった。

 「お笑い芸人みたい」

 2人の脳裏によぎったのは、お笑いタレントが熱いおでんを食べさせられ、派手なリアクションを取るテレビのシーンだった。

 「熱湯につけてみたら、おもしろそう」

 そういえば、タレントが熱湯につかり、その時間だけ宣伝ができる番組があった-。シューマイを吐き出した長女の姿を見て、2人は笑いながら“犯行”を思い立った。

 「これから言うことをきかなかったら『お風呂に入れるよ』といえばいい」。A子には、言うことをきかない長女を懲らしめたいという思いもあったという。

 「試してみよう」というA子に、B子は「おもしろそうだね。どんな反応するんだろう」と応じた。

 ■水ぶくれができ、皮はズルむけた

 2人が用意したのは、幅77センチ、長さ62センチ、高さ約22センチの幼児用風呂。台所に置くと、B子は鍋で水をわかし始めた。沸騰した湯を3杯入れ、水を少し足し、「熱湯風呂」が完成した。

 「お風呂だよ」

 A子は長女の服を脱がせると、長女を熱湯風呂につけた。

 次の瞬間、長女は泣きながら足をばたつかせ、転げ落ちるように自分から風呂を出た。

 A子は「時間が短い」と言って、今度は長女のあばらを両手で押さえ、再度熱湯につけた。

 「1度つかったのだから、2度目は大丈夫かと思った」(A子の供述)

 さらに、「アチッ」と泣き叫ぶ長女の肩に、B子はご飯茶碗(ちゃわん)で湯をかける。長女の泣き声はどんどん大きくなり、顔は真っ赤になった。

 約1分後、A子が手を離すと、長女は自分から風呂を出て床にあおむけに転がった。水深約8センチの湯につけられた長女の足は、真っ赤になっていた。

 泣きながら転がる長女の姿を見て、ひとしきり笑った2人は、ようやく事の重大さに気がついた。

 バスタオルで長女の体をふき、氷で冷やす。しかし、長女の足には水ぶくれができ、ズルむけた皮がこびりついていた。

 ■「熱湯かかった」とウソ…長男にも虐待の疑い 

 あわてた2人は、自転車で近所の皮膚科へと向かった。しかし、長女の容体は2人が考えていた以上に深刻だった。

 「ここでは診られない。もっと大きい病院へ行ってください」

 虐待がバレるのではないか。急に不安になった2人は一度家に戻ると、台所にあった幼児用風呂の湯を捨てた。

 「ラーメンの汁がかかってやけどしたといおう」

 そう口裏を合わせると、2人は別の病院に向かった。ひどいやけどに驚いた看護師に、2人はラーメンの汁ではなく、「ポットの熱湯がかかった」と説明。しかし、ここでも重症で診られないといわれ、長女は救急車でさらに別の病院に運ばれた。

 診察した医師に、再度「お湯がかかった」と説明した2人だが、医師は両足に8センチに渡ってできたやけどの不自然さを見逃さなかった。虐待を疑った医師は児童相談所に通告。児童相談所から要請を受けた警視庁少年事件課は4月、傷害の疑いで2人を逮捕した。

 「娘に申し訳ないことをしてしまった」

 同課によると、取り調べに、反省した様子をみせるA子。B子は「いうことをきかない(A子の)長女を見て、腹が立った。反省している」と話しているという。

 しかしその後、A子の長男も今年2月、頭部外傷で入院していたことが警視庁の調べで分かった。

 医師によると、このけがは「足首を持って子供を振り回した際にできやすい」という。警視庁はA子が長男にも虐待していた疑いがあるとみて調べている。

 ■家庭内暴力はあった?

 実の子供に対し、母親とは思えないような軽いノリで虐待を加えたA子。その背景には、夫や姑(しゅうとめ)との不和から孤立する母親の姿が浮かび上がる。

 警視庁によると、A子は15歳のときに妊娠が分かり、通っていた高校を1年の3学期で中退。夫の実家に住み、平成18年11月に長女を出産した。しかし、姑との折り合いが悪くなり、19年に足立区のマンションに引っ越していた。

 「(事件の)2日前ぐらいから、長女が食事を食べず、言うことをきかなかった。外食をしても、ご飯を口から出し、恥ずかしい思いをした」(供述)

 初めての子育ては戸惑うことばかり。思うようにいかないことも多かった。加えて、長女は食の細い子だったという。

 「私はこんなにやってるのに、なんで食べてくれないの」

 そう叫んで、長女をつねったこともあったという。

 それに輪をかけて、夫との関係もうまくいっていなかったようだ。

 事件の翌日、A子は夫と別居し、実家へと戻った。

 「夫が暴力をふるうから」

 A子は捜査員に別居の理由をそう説明したという。

 もっとも、夫にも言い分がある。

 「生まれたときから、おむつを替えなかったり、ご飯を食べさせなかったりしていた。だから自分が注意していた」

 「夜遅くまで子供を寝かせなかった。『ねこまんま』のような食事をさせていたこともある」

 その一方で、A子は夫から暴力をふるわれたと主張する。夫は「暴力をふるったことはない」と話すが、仕事のため、日中の子育てが妻任せになっていた側面はあったという。

 「自分の実家に住んでいたときは、自分の母親が子供の面倒を見ていたのだが…」

 4月9日、A子は離婚届を提出。A子が逮捕されたのはその10日後だった。

 ■減らぬ虐待、対応策は…

 厚生労働省によると、平成19年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は、前年度より3316件増えて4万639件となり、初めて4万件を突破した。同省虐待防止対策室は「12年に児童虐待防止法が施行されて以降、相談件数は増えてきている」と話す。

 警視庁によると、都内では20年、児童虐待事件で12人が摘発されている。都内の児童相談所に虐待で通告された子供は135人で、そのうち94人が殴るなどの身体的な虐待に関するものだった。

 16年の児童虐待防止法改正で、虐待を受けたとみられる子供を発見した場合、速やかに児童相談所や区市町村に通告しなければいけなくなった。今回の事件では医師が虐待を疑い、児童相談所に通告したことが虐待の早期発見につながった。

 しかし、大阪市西淀川区の小4女児死体遺棄事件や兵庫県小野市で冷蔵庫から幼児の遺体が見つかった事件など、虐待をめぐる悲しいニュースはなくならない。大阪市の事件では、女児が事前に虐待をうかがわせる発言をしていたのに、見逃されてしまった。

 虐待防止対策室は「法改正により、さまざまな機関から情報を吸い上げられるようになった。しかし、通告義務の周知はまだ十分ではない」と話し、関係機関などへの働きかけを今後も続けていくとしている。

 若い母親のA子は決して育児を放棄していたわけではないという。思い通りにならないイラ立ちを、子供にぶつけてしまった情景が浮かび上がる。

 「食の細い子供の面倒をみるのは本当に大変。若いときは余裕もなく、必死のあまり暴力をふるってしまう気持ちはわからないでもない」といった声も確かにある。

 “危うい”状態にある母親を、いかに周囲がサポートするか-。虐待防止の処方箋(せん)は明確なのだが、その実践は一筋縄ではいかないようだ。

【産経新聞 5月17日13時12分配信】

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