SMAP『華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ』は最強の“両A面シングル”だ | オーヤマサトシ ブログ

SMAP『華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ』は最強の“両A面シングル”だ

ツイッターなどのネットでの評判を見ても、ごく一部とはいえ自分の周りの様々な人達の反応を見ても、そして自分自身の実感を考えても、今度の水曜日にリリースされるSMAPの両A面シングル『華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ』が、発売前なのになんだか盛り上がりを見せている。

もっと正確に言うと、先日2週にわたって登場した『ミュージックステーション』でのパフォーマンスを見た人が、ほぼ全員口を揃えて「この2曲を歌うSMAPがヤバい」と興奮しているのだ。

『ユーモアしちゃうよ』は元旦の『CDTV』(その前にラジオ・カラオケ等でも流れていた)や『Mr.S』ツアーのファイナル名古屋公演でパフォーマンス済、『華麗なる逆襲』もドラマ『銭の戦争』でオンエアされており、つまり楽曲自体は『Mステ』オンエア以前にも世に出てはいた。

にも関わらず、『Mステ』のパフォーマンスが決定打となった。このことが、いまのSMAPのモードを示していると思う。



<改めて振り返る『藍色のGANG』の衝撃>

まず『華麗なる逆襲』から。昨年のシングル『シャレオツ』から始まり、アルバム『Mr.S』、先月終了した『Mr.S』ツアー(まだツアーファイナルから1ヵ月くらいしか経ってないのか…!)でもライブ構成の軸となった、オトナでダンディな世界観。ツアーは終了したが、そんな方向性はこの曲でさらに進化している。いまさらこんなことを言ってもあれなんだけど、『Mr.S』ツアーのセットリストに『華麗なる逆襲』が入っていたらと想像すると、リリースがもう少し早ければ…と残念な気分が生まれなくもない。

でもそんな妄想は野暮の極地というもので、というのも『華麗なる逆襲』でSMAPが獲得したしなやかやダンディズムは、(もうさんざんいろいろな人が言っているのでいまさら感バリバリですが、大事なことなので言います)『Mr.S』ツアーの『藍色のGANG』を経た草彅剛がいるからこそ表現できたものだからだ。



優れた表現とは、受け手にただ快感や満足を与えてくれるだけではなく、予想外の発見や驚きをももたらしてくれるものだと、個人的には思っている。そういう意味で、ツアー序盤の東京~中盤の福岡~ファイナルの名古屋と見続けた中で、『藍色のGANG』における草彅の進化には、正直ビビった。

ある程度決められたセットリストや構成のもとで行われるライブツアーにおいて、アーティストにとって「同じ楽曲をいかに毎回新鮮にパフォーマンスできるか」ということは課題のひとつになると思うのだが、草彅は『Mr.S』ツアーで、『藍色のGANG』というたったひとつのお題に対して、「ギターの腕前の習熟」とともに、パフォーマーとして破格の進化を遂げてしまった。

声も、目も、表情も、息遣いも、身のこなしも、ギターのストロークも、ステージを重ねるごとにますます色気と迫力を増していった『藍色のGANG』は、いつしかMr.Sライブのなかでひとつの沸点となっていった。自分はそんな草彅にめちゃめちゃ興奮すると同時に、「俺はこれまでこの人の何を見てたんだろう(何も見てなかったのかも)」と、ちょっと反省すらしてしまったのだった。



<『華麗なる逆襲』で草彅がもたらした“+@”>

で、すごいのが、こないだのMステでやった『華麗なる逆襲』での草彅が、そんなツアーで得たものを最大限に発揮しているだけでなく、さらなる+@をも、いともあっさりと見せつけていたことだ。

『藍色のGANG』と『華麗なる逆襲』のいちばんの違いとはなんだろう。答えは超シンプルで、“ひとり”か“5人”か、の違いだ。草彅はMステで披露した『華麗なる逆襲』のパフォーマンスで、『藍色のGANG』で身につけた、落ち着きと危うさが同居する色気を暴発させていた。そしてそんな彼の変化がSMAP全体に明らかに大きな影響を与えていた。これこそが草彅がもたらした、でかすぎる+@だと思う。

草彅だけが突出してるわけではない。単に4人を引っ張ってるわけでもない。そもそもSMAPというチーム自体が強烈な個性の持ち主が集まったプロ集団なわけで、安易に誰かに合わせるだとか誰かを立たせるだとか、そんな安直なバランスの取り方をする人たちではない。でも確実に、草彅がSMAPというチームの佇まいを変えてしまっているのだ。

草彅がセンターに踊り出たときの絵面、見た? 俺、あんなSMAP見たことなかったよ。楽曲の世界観こそ『Mr.S』に通じるかもしれないけど、まったく別物。これ、俺まだ全然うまく言葉にできないのが悔しいんだけど、草彅剛は『華麗なる逆襲』で、すごいことをやっていると思う。



<『ユーモアしちゃうよ』のフリーダムさの理由>

『ユーモアしちゃうよ』は前にブログで書いた(その記事→SMAPの『Mr.S』ツアーは、なんでこんなに最高だったのかしら)ように、いまのSMAPにとっての超重要曲だ(楽曲単位では、『華麗なる~』よりもポップスとしての精度は高いと個人的には思っている)。で、曲については前の記事で書いたので、今回はMステのパフォーマンスについて。

木村のカメラぶつかり芸や、香取のアドリブ(先週の共演~今週の番組前半のVTRでのエビ中ぁぃぁぃのフリをあの大サビでブチ込むとは!)、それを受けて草彅の吹き出し(あれって思わず吹き出したんだろうけど、実は「この曲であれば吹き出しちゃってもいいや(だって慎吾があそこまでやってるんだし)」というプロのパフォーマーとしての冷静な判断が数秒のうちになされていたはず。むしろ中居の動揺のほうが素に見えた笑 しかし何度見ても『華麗なる~』であれだけキメキメだった人と、『ユーモア~』の最後で大事な振付を完璧に間違えた人が、同一人物とは思えない…。閑話休題)。

あのパフォーマンスの流動的で不定形な感じは、明らかに『Mr.S』ツアーで培われた/メンバー間で共有されたグルーヴだった(例:ココカラの剛ソロのくだりや、バンバカの歌割りの変遷など)。

『Mr.S』ツアーが歌を中心に据えた構成だったからこそ、歌という軸さえブレなければあとは好きやってよし!、とすら言える潔いフリーダムさ、それがそのままMステのパフォーマンスに受け継がれていたのだと思う。これはMステ以前に、すでにライブなどで数回披露した経験があったことも大きいだろう。



<なぜSMAPはあそこまで“わちゃわちゃ”するのか>

とはいえ、年末のCDTVから2ヵ月もたたないうちにこの自由度(アドリブ&歌いまわしのアレンジ多数)を身につけているというのは、『ユーモアしちゃうよ』という曲をパフォーマンスすることに対するメンバーのモチベーションというかテンションが、そもそも相当高いのだと思う。

紅白終わりで数曲メドレーの最後という条件付きだったCDTVのグダグダ振り付けのチャーミングさ(あれはあれで最高だったけど)とは比べ物にならないほど、Mステの5人は『ユーモアしちゃうよ』という楽曲を、完全に物にしていた。

そして何よりも最高なのが、Mステで5人が見せたパフォーマンスは、単なる悪ふざけではなく、『ユーモアしちゃうよ』という楽曲のメッセージを見事に体現するものだったことだ。

「君を笑顔にするためならなんだってやるぜ(カメラにだってぶつかるし声だって変えるぜ)」というアイドルの存在意義をこれでもかと見せつけるMステのパフォーマンスは、アイドルとして見るとかなりオルタナティブな存在感をみせていた渋谷すばる氏のパフォーマンスといい対比になっていて、番組構成としても素晴らしかったと思う。(話逸れますが渋谷さんいい歌い手だな。もっといろんな曲を聴いてみたくなった)。

俺、『ユーモアしちゃうよ』を聴くと、あんなに幸せで笑顔になる曲なのに、なんでかちょっと泣けてきちゃうんだけど、この曲でSMAPが見せる“わちゃわちゃ”がいつも以上に胸を打つのは、5人の<アイドルとしての覚悟>のようなものを、改めて感じるからかもしれない。



<『華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ』が両A面である幸福>

長く活動を続けることと、常にフレッシュでい続けること。このふたつはどっちも大事で、でも両立するのがすごく難しいことだ。で、これまで20何年間か、SMAPはこのふたつの車輪を常にフル回転させながら進んできた。

いろんなタイミングでその都度あらたな魅力を見せてきた5人だが、今回の『華麗なる逆襲』と『ユーモアしちゃうよ』で、<パフォーマーとしてのSMAP>の魅力をアップデートしたことは、自分にとって実はかなり衝撃だった。

これまでだって彼らの表現には真剣に向き合ってきたつもりだったけれど、「あれーそうか、5人のパフォーマンスってこんなに凄かったのかー」と、もう何度目かという感じで思い知らされたというか。で、そういう強度を持った表現っていうのは、やっぱり広く、多くの人に伝わるものなのだろう。「いいものは必ず伝わる」なんて軽々しく言われるけど、あのMステで5人が放った輝きが、一瞬のうちに大勢の人たちに共有されていくさまは、痛快としか言いようがなかった。



そんなわけで、とにかくパフォーマンスに驚かされた『華麗なる逆襲』と『ユーモアしちゃうよ』。じゃあ延々Mステの映像だけみてればよし、音源は必要なし!なのかと言われると、答えはもちろんNO!

ここ最近SMAPのシングルは両A面であることが多かった。が、それぞれの楽曲のクオリティは素晴らしいにも関わらず、両A面にする必然性は薄かったと言わざるを得ないかと。両A面にするということは、(両方推したいんです!というレコード会社側の論理は置いておいて)本来、ふたつの楽曲をあえて矢面に立たせることで、何かしらの化学反応だったり相乗効果が生まれるべきだと思っている。そこが決定的に足りなかったんだよなあ。

そういう意味で今回の『華麗なる逆襲/ユーモアしちゃうよ』は、いっしょに味わう意義が十分にある2曲だと思う。単純に「ダンディ/かわいい」という二面性に萌えるもよし、楽曲のクオリティはどちらもかなり高いので音の細部に耳を傾けるのもいい。初回盤のPVでは映像での5人のパフォーマンスを目撃できるし(『華麗なる~』のPVはマジで吐くほど楽しみ)、通常盤でついにSMAPと邂逅を果たすtofubeatsリミックス(これも激超楽しみ)で踊るもよし(踊れる感じなのかは知らんけど)。いろんな角度から、「いまSMAPがこの2曲を歌う意味」を読み解くことができる2曲だと思うのだ。



とにかく、今回ほど盤として持っておきたい両A面シングルもあまりないってことは言っておきたい。「とりあえず買わなきゃ」じゃなくて、「絶対買うしか!」と前のめりになってCD屋に駆け込みに行きたい、俺にとって久々にそんなシングル。ユーモアちゃんのことはよくわかんないけど、とりあえず全速でタワレコ行くぜ!