一、
人の世の雑踏を
彷徨い探せど
曇りなき透明な輝きは
風の中に在りて
物言わぬ静寂の持つ力を知る
ニ、
己の語が語りきれぬ輝きは
風に水面に時の中に
在ると知りつつ
未だ想いを風に託す
三、
人の世の
雑踏を避け
彷徨い探せば汚れなき
清らかな純白は
人の心に非ず冬花に宿ると知りて
道端に白く咲く花に
憧れ佇む山道を行く
四、
何色にも
染まること無き純白は
空に浮かぶ雲に在りて
やがて舞う雪へ変わり行く
白雪に幻夢揺れる師走街
五、
智慧を宿す夜星が照らす人の世に
未だ純白を求めて止まぬ
人の欲を宥めよ
仄々東に曙の空
六、
人の世の河の流れの泡沫を
悠久の歴史の一片に
刻みて骸に還りゆく
命の儚さ憂う冬日
七、
人の世の
僅か五文字が
愛と離別を隔てさせ
人知れず
黙して流れた涙の数々は忘却の中
誰が一片を想い忍ばん
八、
運命に諍えぬ人命に
天の齎す大いなる導きあれ
祈りて今日も
冬空を見上げ佇む
「厳冬八句 平成」 流希