昨日は、東十条の篠原演芸場までベルと劇団「荒城」の『白虎隊』を見に行って来ました。








まず、一部は舞踊ショー、約2時間。








ちょっと長いよね。最後の方でトイレが混まないうちにトイレに行っちゃったよ。それから休憩を挟んでいよいよ『白虎隊』。1時間半くらい。

実は、僕の父の実家は、会津若松で製麺所をやっていて、そこに、曾々祖父がまだ赤ん坊で会津落城で逃げて来て、匿われたらしいんだよね。その曾々祖父のお兄さんが白虎隊員だったらしい。士中二番隊じゃないけど。前線で戦死して、飯盛山にお墓があると子供の頃、教えられた。

鶴ヶ城落城のきっかけとなったのは、城の南東約2kmにある小田山に、官軍が大砲を据えて城を攻撃したからなんだけど、小田山には子供の頃、よくスキーに行ったよ。
(▼砲撃されて無惨な姿になった天守閣)


ちなみに幕末の頃は磐梯山は会津富士と呼ばれていた。1888年の大噴火で今のような形になったの。
(1888年噴火前の姿)

(▼現在の裏磐梯)


なかなか切り口は面白かったけど、残念なところもたくさんあった。事実誤認というか時代考証が間違っているというか、僕は歴史の教員だからそういう点が気になった。



まず、会津の主力部隊は南側(中山峠・勢至堂口・日光口)に展開していて、官軍は二本松を落とした後、北側の母成峠は完全に裏をかかれたわけ。だから、母成峠を越えて侵攻してきた。だから、猪苗代湖の北側を通って半日で十六橋まで進撃してきて、官軍は会津軍の抵抗を受けることなく、若松市街まで到達できたんだよね。

それで本当は松平容保公の警備に当たるはずの白虎隊にも出動命令が下ったの。

しかし、武器もない、食料もない状態で敵中に囲まれた士中二番隊は、指揮官の日向(ひなた)内記が滝沢本陣まで食料と救援を求めに向かう。隊員たちは指揮官不在のまま、敵中に取り残されたわけ。そこで、年長者の篠田儀三郎が指揮官代行になって敵陣に突撃するか、城に一旦戻るかの選択を迫まられたわけよ。一旦城へ戻るにしても十六橋は占領されているわけだし、そんな時、誰かが猪苗代湖から飯盛山に抜ける戸ノ口堰洞穴の存在を知っていて、

そこを抜けて城の東側の飯盛山に出ようということになったの。少年たちにとっては、胸まで水に浸かり、しかも怪我人もいる。その中での行軍になったわけ。

でもすでに、その頃には官軍は会津城下に浸入していて、その戦火を城が燃えていると勘違いしたわけだな。

(▼今はこんな市街になってしまったが、当時は鶴ヶ城しか巨大建築物は見えなかったはずである)

この洞穴を抜けるシーンが描かれなかったのは不満だった。洞穴を抜けると鶴ヶ城が燃えているように見える。そこで自害という道を選ぶようになる。せっかく、書き割りやスモークや照明があるのだからそのくらいの演出はできると思う。

演出の仕方によってはもっと泣かせ所はあったと思いますよ。僕だったらこう演出したのにと思った所がいくつかありました。

まず始まりをどうするか興味があった。奥羽腰列藩同盟が会津藩の助命嘆願を拒否されるところから始まるが、できたら、官軍方の世良修造が暗殺されるところからスタートして欲しかったなぁ。その方が、やむを得ず官軍と戦うはめに追い込まれたという感じが出たと思う。

会津城下に突入したのは土佐藩兵であった。家老・西郷頼母の妻子一族は自害した。「しゃぐら」をかぶった土佐藩の指揮官が入ってくると女たちが自害している。その姿を見た土佐藩の指揮官は、「酷いことを…,。何も女子子供まで道連れれにすることはあるまいに…」と呟く。これは泣かせ所ですよ。是非入れて欲しかったな。

荒城の『白虎隊』では、中野好子が松平容保の義姉の照姫(会津坂下に避難されたとされる、しかし、これは誤報であった)を警固するために女子だけの義勇隊、「娘子(じょうし)隊」を結成するのだが、本筋とは関係ないのでちょこっとしか出て来ない。それはいいとして。

僕は去年、柏陵高校で白虎隊を扱った『引きな返しそ』という芝居にタッチしたので、白虎隊についてはかなり調べましたよ。

荒城の『白虎隊』も最後で生き残った飯沼貞吉に触れるなら、貞吉が西郷頼母の母から贈られたという「梓弓、向かう矢先はしげくとも、引きな返しそ、武士(もののふ)の道」という短歌をもっと生かすべきだったように思う。

飯沼貞吉が生き残って、通信士として日清戦争に従軍し、「白虎隊で一度死んだ命、銃はいらない」と言ったのは本当らしいが、そこに込められた思いはもっと感動的に伝えられたと思う。

よく出来ていたとは思うが、松平容保と家老・西郷頼母の話や日向(ひなた)内記の話はカットして、白虎隊に絞れば、もっと大衆演劇らしい観客が泣ける芝居になったと思いました。

ラストはカッコよかった。旗印は、「白虎隊」とするよりも「士中二番隊」として欲しかった。

余計なこと言ってすいません。読んでもらえるかどうかわからないけど…。