切らないで! | ドゥーラのりこ

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オーストラリア在住のお産サポーター(ドゥーラ)、ヒプノバーシング™講師、マッサージセラピストです。
妊娠、お産、育児、健康、環境、ホームスクーリングに関しての色々な情報や考えをシェアしています。

こんにちは、エイミーズのりこです。

シドニーは、まるで冬のような気温ですね。
悲しいことに、夏は終わってしまったようです。


さて、今日はお産のお話でよくトピックになる、会陰切開のお話です。


私は、子供の頃、誰かのお産の話を聞いた時、あそこをハサミでザクッと切られる、ということを聞いて、子供ならがにも「お産は怖いものなんだわ」、と頭にインプットされたのを覚えています。

大人になった今でも、出産を迎えた妊婦さんを囲んだ集まり等で会陰切開をよく耳にしますが、経験者の体験談を聞いていると恐ろしくなってきます。
これからお産をするという方の前で、自分達が経験したお産ホラーストーリーを語るのはNGですね。


会陰(えいん)とは、膣口と肛門との間の部分のことを指します。

そこを、赤ちゃんの頭がもうすぐ出そう、という際に、ジョキジョキッと切ることを会陰切開と言います。英語では、Episiotomyと言います。

容赦なく、2~3センチほど、ハサミでザクザクっと切られます。(皮膚だけでなく筋肉繊維も)
最初は1~2センチ程切って、それからは、手で引きちぎる方法もあります。
赤ちゃんの頭が出る際には、傷口か更に広がりますし、もちろん血も沢山出ますので、赤ちゃんが血だらけになって生まれてきます。

日本では出産の約80%のケースに会陰切開が行われているそうです。

80%は、高過ぎです!

日本では、会陰切開が必要以上に頻繁に行われている、ということですね。

オーストラリア全体では、約20%です。
病院によっては、50%近くのところもあります。
私立(プライベート)病院は公立(パブリック)病院よりも、会陰切開率が高いです。

そもそも、会陰切開などが行われるようになったのは、第二次世界大戦後の頃です。
それまでは、お産は、自宅で産婆さんと、というのが普通でした。
もちろん、会陰切開なんていうものは存在していませんでした。

戦後、負傷人や病人が減り、病院が急に暇になり、それでは、出産を病院で、ということになったのです。
産婦人科なんていうものも作られ、それまでは、お産は産婆さんの仕事だったのが、戦後以降は男性の産婦人科先生がお産を担当する、という形になっていったのです。
分娩台なんていうものが作られたのも、この頃です。

それまでは、仰向けで産む(分娩台)、なんてことは全くありませんでした。
産婦さんの取りやすいスタイルで産む、そして産婆さんは、それに合わせるというのが普通でした。だから、産婆さんにとっては、体勢的に少し大変だったに違いありません。(膣近くに居れる様、腰を曲げたり、床に座ったりしないといけなかったでしょうから。)

分娩台が作られたのは、医療スタッフが苦労することなく、産婦を扱いやすいようにする為だったんです。

実は、この「分娩台での仰向けスタイル」が、会陰が伸びにくくなる一番の原因なんです。

仰向けスタイルでは会陰がかなり伸びにくいので切れる、又は会陰切開が必要になる、ということなんです。

仰向けスタイルがどうして、会陰を伸ばしにくくするか、とういうのは…

産婦さんの仙骨(腰の平らな骨)と尾骨(仙骨の下のお尻の奥にある骨)が動かなくなるからです。

通常、子宮口が全開になり、赤ちゃんが産道を通って膣から出てこようとする時、仙骨と尾骨は後ろ方向へ大きく開き動きます。
仙骨と尾骨が後ろ方向へ自由に開くことが出来ると、骨盤も最大限に両側広がり、骨盤底筋も大きく伸び、それにつられて会陰も最大限にゆ~っくりと広がります。

仰向けだと、仙骨と尾骨が自由に動けません。子の為、骨盤も広がりませんし、会陰も十分に広がりません。
仙骨と尾骨が自由に動く体勢だと、骨盤が30%程も大きく広がるそうです。

仰向けだと、赤ちゃんが産道さえも通りにくくなるのです。

仰向け(又はリクライニング)の体勢だと、骨盤が十分に広がることが出来ない為、子宮口が全開であるのにも関わらず、赤ちゃんがなかなか出て来れない、又は、赤ちゃんの頭が骨盤に引っかかって、負担となり、心拍数が極端に減ってしまい、なかなか通常値に戻らない、ということが起きやすくなるのです。

赤ちゃんの頭を無理やりひっぱり出す、かんし(大きな鉄製の挟むもの)分娩や吸引分娩の必要性が出てきてしまうのも、この仰向けスタイルが大きな原因となっています。

かんしや吸引が赤ちゃんへの頭に大きなダメージを与えることは言うまでもありません。
尚、赤ちゃんの頭の内出血はほぼ高い確率で発生します。

そして、このかんし分娩や吸引分娩は会陰切開と共に行われることが多いです。


私は、「赤ちゃんが生まれる際は、仙骨や尾骨が自由に動けるような体勢をとりましょう!」と、産婦さんによくアドバイスしています。

四つん這い、膝つきスタイル、カエル座り、立ちスタイル、前かがみ、片足を椅子に、等、フリースタイルで、仰向けやリクライニング以外なら、何でも良いのです。

もし、無痛分娩を選択し、どうしても身動きが取れない場合は(無痛分娩は腰から下は動けなくなります。)、パートナーさんや助産婦さんに手伝ってもって、横向きで出産することも可能です。
横向きであれば、仙骨も尾骨も比較的動きやすく、会陰も切れにくくなります。切れたとしても、軽症で済むことがほとんどです。


会陰の傷というのは、4段階に分類されています。


自然に切れる場合(会陰切開を行わない場合)

第1度会陰裂傷(れっしょう)
会陰部の皮膚のみ、又は膣壁粘膜表面のみに傷が出来る。
これは、かすり傷程度で縫う必要がない。

第2度会陰裂傷
皮膚と共にその下の筋肉層までが損傷。
数針縫う必要があるが、回復は比較的早い。

と、自然に切れてしまった場合は、この第2度会陰裂傷までに留まることがほとんどです。

ハサミをつかって会陰切開、となると、

第3度会陰裂傷
肛門を絞める筋肉も断裂(縫う針数が多い。回復にも時間がかかる。傷が回復しても、大小便をもらしやすくなる。)

もしくは、

第4度会陰裂傷
会陰から肛門や直腸粘膜までが損傷。
かなり重症。長時間の縫合手術となります。回復にもかなりの時間がかかりる。

、となります。



会陰部とは、赤ちゃんの頭が出ようとしている時、ゆっ~くりと伸びるものです。女性の体はそのように出来ているのです。

ゆ~っくり伸びるのを待たないで、会陰切開をした場合、実際の娩出を10分程度早めることが出来ます。

たった、10分程度を節約する為に、女性の大事な部分をジョキジョキ切りますか??
10分ぐらい、待てませんか??先生??

と突っ込みたくなります。


もちろん、緊急事態で、今にも赤ちゃんを出さないと危険!なんていう場合は理解出来ますが、赤ちゃんの心拍数に異常なし、お母さんも異常なし、っていうのに、会陰切開をまるで当たり前かのように行うのには疑問を持ちます。

会陰切開はしたくない、出来れば自然に切れるのも避けたい、

という方には、

会陰マッサージをお勧めしています。

36週目から、会陰マッサージを毎日10分程度行うだけで、切れる確率がかなり下がります。

会陰マッサージは、自分で行う方法と、パートナーさんに行ってもらう方法とがあります。

私は、ご興味のあるお客様には、情報提供やアドバイスもしています。


あそこをマッサージするのはちょっと…

と抵抗がある方には、エピノーという道具をお勧めしています。

オンラインで購入することも可能です。
説明書は英語ですが、翻訳をご希望の方はご連絡下さい。

このエピノーは、きちんと毎日使用していれば、かなり高い確率で会陰が切れないことが期待出来ます。
産後も、骨盤底筋を鍛えるトレーニングとして使うことが可能です。
子宮口全開後、赤ちゃんが産道を通って出てくる時間も短くなるというデーターがあります。


もう一つ、会陰が切れないようにする為に出来ることは…

息みたくない時に息まない!

です。

よく、映画やテレビの出産シーンで、産婦さんの周りの人たちが、「Push! Push!(息んで!息んで!」なんていうこと言い、産婦さんは、顔を真っ赤(または紫色)にし、うぅ~~ん!なんて言いながら息んでいるシーンをよく見かけますが、息みたくないときに無理やり息むと、会陰が切れやすくなります。
絶対どうしても我慢出来ないほど、息みたくなった時だけに、ほんの少しだけ息む、または、息むというよりも、息を吐いて子宮の収縮に体に任せるのがベストなんです。

頑張って息まなくても、子宮は赤ちゃんを押し出すものすごい力をちゃんと持っています。それに、重力の力もかかると、赤ちゃんが更に出やすくなります。

「息まないお産」は何件か見てきましたが、本当にスル~っと赤ちゃんが回転しながら出てきます。子宮と重力だけの力で。

本当に腕の良い助産婦さんは、「はい、今息んでぇ~!」とか、「大きく息を吸って、はーい!おもいっきり踏ん張って!」なんていう指導はしません。

これは、英語では、Purple Pushとも呼ばれているのですが、息を大きく吸って、顔が紫色になるまで、思いっきり息むのは、赤ちゃんに酸素が十分に行かなくなります。(お母さんにも十分に酸素が行きません。)
その為、これを長時間続けていると、赤ちゃんに負担が係り、心拍数が減り、なかなか通常の数値に戻らない、なんて言う緊急事態になるリスクが高くなります。
そして、これではいかん!ということで、かんし分娩、吸引分娩、会陰切開、最悪の場合は緊急帝王切開、となってしまうのです。

Purple Pushは避けましょう!

分娩第2期(実際に産み出る時)は、何も、急ぐことはないのです。
ゆっくりと、会陰部が伸びるのを待って、赤ちゃんがゆっくりと降りてくる(重力に手伝ってもらいます。)のを待ち、子宮の収縮の力に身を任せれば、無理やり息む必要もないし、会陰が切れる確率も減ります。
お産は早ければいいというものではないのですから…

病院へ提出するバースプラン(お産リクエスト)に、「息む指導をしないで下さい。」と書くご夫婦の方も多くいらっしゃいます。
このような方々は、よくいろいろと調べているなぁ、と関心します。


無痛分娩の場合、腰から下の感覚がなくなるから、息みの指導が絶対必要、ということも考えられますが、無痛分娩でも、ほとんど息まずに子宮の収縮力だけで、赤ちゃんが出てきたお産も見たことがあります。
この方は、横向きで出産されていました。無痛分娩でしたけど、私はずっと子宮のツボをマッサージしていたのですが、産婦さんは、ずっと横向きで、何も息んでいないのに、赤ちゃんの頭が少し見え始めてきて、助産婦さんも私もびっくりしましたが、赤ちゃんは子宮の収縮と共に、ゆ~っくりと回転しながら、ゆっくりと生まれてしまいました。
子宮のパワーってすごいなぁ~と感動しましたね。

最後になりましたが、もう一つ、会陰が切れない為に出来ることは、口周りの筋肉を柔らかくすることです。
過去のブログ
にも書きましたが、繰り返します。

口は柔らかく!
声を出すのであれば、低い声で、「おぉ~~」、か、「うぅ~~」です。



ドゥーラサービス(お産お手伝い)、会陰マッサージ、エピノー説明書翻訳等に、ご興味のある方は、エイミーズのりこまでご連絡下さい。

尚、出産中に子宮がパワフルに収縮出来るよう、妊娠中に子宮マッサージを頻繁に受けておくことも、お勧めです。
私のマタニティーマッサージのサービスには、子宮マッサージを含むことも可能です。



今日もブログを読んで下さって、ありがとうございました。


エイミーズのりこ