生命 | THIS IS BLOG SHiBAYAMA

生命

柴山です。

何から話したらいいのか、というか話すべきなのか、でも自分の中で整理をつける…いや整理という言葉は違うな、でも、はい、報告させてください。

2013年に脳に腫瘍が見つかり、それが原因で様々な障害があったのですが、その中でも特にショックを受けたのが、ホルモン異常から子供を作る機能が死んでいると宣告されたことでした。ただホルモン治療を続ければ可能性は僅かだがあるとのことでしたので迷わず治療することにしました。

それから2年間、ホルモン注射を打ち続けました。かなり辛い治療で、精神的にも経済的にも家族にかなりの負担をかけ、また周りの友人にも迷惑を沢山かけながら、それでも希望を捨てずに治療を続けてきました。

今年の7月、少しだけホルモンの数値が良くなり、今なら妊娠の可能性があると先生に告げられました。

とはいえ、俺の精子では自然妊娠はもちろん、人工授精、体外受精でも妊娠が厳しいため、顕微授精をすることになりました。

顕微授精とは体外受精を更にグレードアップさせた最終手段のような方法で、排卵→採卵→精子採取→顕微受精→胚移植という流れで進めていきます。その間、毎日嫁は注射を打ちに通院していました。

自分が原因なのに殆どの行程を嫁が行わなければいけないこと、莫大な費用がかかることに申し訳ない気持ちでいっぱいでしたが、何も出来ないでオドオドしてる俺に、嫁はいつも「こんなのへっちゃらだよ」って明るく振舞ってくれました。彼女だって不安で仕方ないのは分かっていたのですが、俺に責任を感じさせないようにいつも明るくしてくれていました。

そして8月、成功率が35%と言われる顕微授精をした結果、嫁が妊娠しました。

安定期に入るまでは、と思いごく一部の方のみに報告させて頂きましたがみなさん喜んでくれました。

それからはまるで世界が変わったように見えました。胎嚢、心拍の確認がとれ、エコーでもしっかり姿を確認出来るようになり、先日母子手帳を受け取りどんどん実感が湧いてきました。

そして10月28日。妊娠3ヶ月に入り、2週間振りの検診がありました。

病院の外で待っていると嫁から「心臓が動いてない」とラインがきました。胎児の心臓が動いていない、つまり流産とのことです。

妊娠初期は胎児染色体異常での流産の確率が高いことも知っていますし覚悟はしていたのですが、やはり一度心拍の確認が出来ると流産率はかなり下がると言われており、今日は不妊専門の病院から産婦人科に移る話をしたばかりでした。

嫁は大好きなお酒もナマ物も止め、規則正しい生活を送っていました。つわりの症状は軽く、母体に何も変化がないため検診まで流産に気付く人はいないようで、そのためまだ実感が湧かないのですが今おなかの中にいる子供の心臓は動いていないのです。

妊娠初期はこういうことがあるため、周りへの報告は安定期に入ってからにしたほうがいいと言われていますし、それは重々承知していたのでまだ一部の方にしか報告はしていませんでした。

だけどこうやってブログに書かせて頂いたのは、命を授かって短い間だったとしても、確かに2人の間には新しい命があり、会うことは出来なかったけど2015年の夏に2人の間に子供が存在したということを知ってもらいたかったからです。

顔も見ないままお別れしなくちゃいけないのは本当に悲しいです。本当に悲しいけれど、俺たちのところに来てくれてありがとうと心から思っています。2年前、妊娠は不可能と言われた俺たち夫婦でも子供を授かることが出来たという自信を持たせてくれた。

妊娠して出産する。そんな当たり前のようなことが本当は奇跡の連続で、今自分達がここにいることも奇跡の積み重ね。命の重み、尊さ、しっかり感じました。ありがとう。

数日後、嫁は掻爬手術を行います。しかし、掻爬手術後は妊娠しやすいとも言われているので、諦めず次に進もうと思います。俺たちなら大丈夫。きっと大丈夫です。

不妊治療を続けてきてゴール直前でまた振り出しに戻されてしまいましたが、あの子が嫁のおなかにいた3ヶ月の生活を思うと振り出しではなく10マスくらい進んだ所からのスタートだと思っています。

これまでも俺たちは全部乗り越えてきたので大丈夫です。ここまで読んで頂いた方、本当にありがとうございます。人知れず、相談出来ず、悩んでるご夫婦がいらっしゃいましたら話をしましょう。1人じゃないです。

そして、家族は俺が一生守ります。