私は将来、化粧品の開発に携わる仕事をしたいと考えています。「化粧品」と言うと、一般的なイメージとして容姿を整えることに用いられると考えるのが一般的なセオリーだと思います。化粧品とは私にとって、いわば自分をどれだけ美しく魅せるか、というように、言ってしまえば自己満足に過ぎない1つのツールと言う認識でした。
高校生の時、実習で訪問した上級学校の方によるセミナーで、たまたま化粧品の役割について聞く機会がありました。何年も寝たきりで生活に希望を持てなくなったお年を召した方が居たそうです。彼女は毎日毎日繰り返し襲ってくる刺激のない日常、そして孤独と耐えているうちに笑うことや人とコミュニケーションをとることさえも進んでしなくなりました。そんな彼女の姿を見た1人の女性が、どうにか元気づけたいと思い、彼女に化粧を施してあげました。女性が手鏡を彼女に向けたところ、大きく目を見開いて『わたしもまだ、こんなに綺麗になれたのね』と涙を流し、嬉しそうに言ったといいます。以来、昔のように明るく、おしゃべりが大好きな彼女に戻ったそうです。この様に、化粧品は容姿を整えるだけでなく、内面からケアする「メンタルのくすり」とも言えると感じました。外見が美しくなることによって、自分に自信が持てるようになる、人々の心理に直接働きかける化粧品の魅力に惹かれました。
「化粧品」に興味を持つようになり、自ら学び始めて最も衝撃を受けたのが医療の現場で使用されている化粧品です。近年では、化粧品が火傷や交通事故による怪我で皮膚に裂傷を被った際の治療法の1つとして注目されていることを知りました。元々生物や化学が好きだったこともあり、この分野で化粧品をもっと改良し、より多くの分野で再生医療的化粧品が使われる日が来れば、と考えるようになりました。
そこで、私は「糖鎖」の研究を進んで行いたいと考えています。糖鎖はそもそも高校の生物では扱われていません。高校2年生の時にたまたま受けた講義で糖鎖というものを初めて知りました。結論から述べると、糖鎖について専門的に学んだことも無く、現段階では独学での知識なので知っていることは極僅かですが、糖鎖についての重要性を強く感じています。
近年の研究から、全ての病気は細胞同士が繋がっていない、連絡しあっていないことが最大の原因と言われています。例えばDNAの塩基配列に放射線照射やある種の化学物質により、何らかの損傷が起こったとします。通常は遺伝子の発現が起こるため、損傷部分は他の塩基配列を読み取ることで複製が行われますが、刺激物質が強すぎてDNAの鎖がちぎれてしまう、すなわち二重鎖切断が起こってしまえば、現段階の医療では治療は困難とされているのです。この様なことからヒトの癌細胞ができてしまったりもします。講義では糖鎖は医療の面だけでなく、食品や化粧品などでも重要な役目を果たすいわば細胞同士のアンテナのような存在と学んだので、糖鎖についての研究を行い、大学入学後の専門課程を学ぶ上で、糖鎖をどのように利用し化粧品に応用していくかという自分の研究テーマをしっかり道筋立てていきたいと考えています。
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