メトネル「ピアノ・ソナタ ホ短調Op.25-2[夜の風]」 | サーシャのひとり言

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「夜の風」

夜の風よ、何に咆えているのか?

取り乱し、何をそんなに嘆くのか?

ときにかすかで悲しげで、ときに騒がしい

そのただならぬ声は、何なのか?

心に直接訴える言葉を使って

謎めいた苦しみをおまえは語り続け、

うめき、ときおり心の中をかき乱し

凄まじい音を立てるのだ!


その恐ろしい歌をうたわないでくれ

太古の混沌の歌、祖先の歌を!

それは夜の魂たちの好む物語

彼らはむさぼるようにこれに聴き入り

死の地平から逃れようと必死にもがき

無限との合一を渇望するのだ!

眠れる嵐を起こしてはいけない!

その下に混沌がうごめいているのだから。

      フョードル・チュッチェフ(1803-1873)

      宮澤淳一訳(ライナーノートより)


メトネルのピアノ・ソナタ ホ短調Op.25-2(ピアノ・ソナタ第7番)には通称のもととなったチュッチェフの詩「夜の風」の全文(上記)が楽譜の冒頭に掲げられています。二連からなるその詩の形式と内容に呼応するようにこのソナタも二部形式から構成されています。


メトネル以外のロシアの作曲家でも、その当時のロシアの詩人にインスパイアされて作曲をした人は多いようですが、私は、彼の音楽を聴いているととりわけ文学的なかおりを感じます。

それは、彼が「おとぎ話」や「忘れられた調べ」といったロマンチックなネーミングの作品集を作ったことの影響かもしれませんが…。


咆えたてる夜の風…それは、ロシアの広い大地を吹きすさぶ氷交じりの身を切るような嵐なのでしょうか?

しかし、私には荒々しい風の音よりも、その向こうにかすかに見えるような暗く甘い憧れの影がこの曲の心髄となっているように思えます。

時々、「ロシアのブラームス」と評されてもいるメトネルですが、本質的なところはよりシューマンに近いのでは…と思っています。

本当に大好きな曲の一つです。


メトネル「ピアノ・ソナタ ホ短調 Op.25-2 夜の風」

ショパン「前奏曲 嬰ハ短調 Op.45」

     「夜想曲 嬰ヘ短調 Op.48-2」

     「夜想曲 変ホ長調 Op.55-2」

     「夜想曲 ロ長調 Op.62-1]


ミハイル・リッキー(P)  

COCO-78842


ミルンの演奏も大好きです。いずれ取り上げたいです。ニコニコ