この軽さが、民進党だね!ー長島議員の大芝居を笑う |  政治・政策を考えるヒント!

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   政策コンサルタント 室伏謙一  (公式ブログ)

 4月10日、長島昭久衆議院議員が民進党に離党届を提出したのは皆様ご承知のとおり。ただし、離党届を出せばそれでおしまいとはいかず、民進党執行部としては除籍(除名)処分とする方向で検討しているようであるが。まあ当の長島議員ご本人とすればどちらであろうと我関せずといったところだろう。

 

 さて、今回の離党劇、背景としては何があったのだろう?ご本人は共産党との共闘は自らの信条に反するとばかりに、「共産党との選挙共闘という党方針は、私にとり受け入れ難いものです。」とか、「国家の基本である外交・安全保障政策において、私の目指す「リアリズム」と共産党の路線とは、残念ながら重なることはありません。」とかもっともらしい理由を挙げ、「真の保守」を確立すると説明していた。(この段階で私には「寝言」にしか聞こえなかったが・・・)

 

 確かに、昨年の参院選を中心に共産党との選挙共闘には強く反発する民進党支持者は少なくはなかったようであり、一部の党所属議員からは、支援者から「頼むからやめてくれ」と懇願されたという話や「共産党と組むなら支持できない」と言われたという話も聞いている。

 

 もっとも、もし長島議員が共産党との共闘が自らの信条に反するというのであれば、昨年の参院選の段階、遅くとも都知事選や衆院補選の段階で離党していてしかるべきであったと思う。それ以前に、平和安全法制(いわゆる安保法制)の採決において、「安保法制を採決する本会議場に一人茫然(ぼうぜん)と座っておりました。前日までの激しい党内論争に敗れ、失意のどん底で党議拘束に従い、安保法案に反対票を投じました。」と苦渋の決断をしたようなのだが、今更そんなことをこれ見よがしに言うのであれば、その段階で造反して離党しておけばよかったのではないか?と思われてならない。

 

 はっきり言って、言葉が軽い。どう考えても長島議員が挙げた離党の理由は本当の理由とは思われず、今回の離党は全く別の事情からであると考えた方いいだろう。

 

 ではその別の事情とは?ズバリ、保身であろう。

 

 長島議員の地元選挙区である東京21区、東京都立川市、昭島市及び日野市がこれに該当するが、その地元で民進党の市議をしていた長島議員の元秘書で都議選の民進党公認予定候補が離党し、都民ファーストへ行ってしまった。そして、この都議選候補は「希望の塾」に参加していたらしいのだが、「希望の塾」に参加していたのはこの候補一人だけではなく、他にも多くの地元の民進党地方議員が「希望の塾」に参加していたようであり、そうした地方議員もまるごと離党すると見られている。(バラバラにと、ということだろうが。)

 

 国会議員と地方議員の関係は親分子分関係のように見られがちであるが、確かにそうした場合もあるが、多くの場合は持ちつ持たれつの関係である。特に国政選挙の場合、当落は地元選挙区の地方議員がどれだけ票を積み上げられたかによるところが大きい。要するに国会議員は地方議員に支えられていると言っていいのであるが、その地方議員が離党して違う政党に行ってしまうというのは、これすなわち支えを失うことを意味する。別の表現をすれば、建物の土台が崩れてしまうに等しい。今回の長島議員の場合、地元選挙区の地方議員の離党で、まさに支えを失って茫然自失に近い状況だったのではないだろうか。

 

 長島議員は民主党から自民党へ政権交代した平成24年の衆院選で、東京の小選挙区で勝利した数少ない議員。平成26年の衆院選では小選挙区で敗れて比例復活となったものの、その票差は約1600票、惜敗率にして98.055%であり、決して選挙に弱いわけではない。しかし、それは長島議員を支える地方議員たちあってのことであり、それが無くなってしまえば比例復活すら難しくなる可能性もある。

 

 長島議員にとって今回の離党、生き残るためにはそれ以外選択肢はなかった、といったところではないだろうか。それを共産党との共闘がどうの「真の保守」がどうのと、笑止千万である。だいたい長島議員、「真の保守」などと言っているが、「活米」などという、とても国際政治を研究してきたとは思えないようなトンチンカンな概念を作ったり、米国では何の力もなくトランプ政権からも遠ざけられているいわゆるジャパン・ハンドラーズとベッタリの関係であったりと、どっからどう見ても保守ではない。そんな人物が「真の保守」を云々とは、悪い冗談にしか聞こえない。

 

 さて、長島議員の今後の動きとして、小池知事や都民ファーストとの連携が噂されている。これについては可能性は十分あるだろう。なんといっても地元選挙区の地方議員に限らず民進党の地方議員が次々と都民ファーストへ流れていっている。そうなれば小池知事と組む以外に選択肢はなくなるだろ。もっとも、小池知事の側は相当厳しく品定めをするだろう。小池知事と連携しようという一部の国会議員の勝手連の動きがあることは既に承知の上(誰とは言いませんが・・・)。長島議員には選択肢はないが小池知事には選択肢はある。苦渋の決断のように大芝居は打ったが、つまるところ簡単に旗色を変えてしまうような人物を信頼に足る人物と考えるかどうか。

 

 一方、自民党の下村議員も秋波を送っている。しかし、東京21区で自民党が立てた候補は前回は小選挙区で勝利。表面上は「ウェルカムだ」と言っていても、現職が次の選挙が厳しいということでもない限り差し替えはないだろう。まああったとして、比例の東京ブロックぐらい。この可能性はゼロではないと思われるが、どうなることか。

 

 ところで、長島議員の離党を受けて動揺が広がった民進党、細野豪志衆議院議員が代表代行を辞任し、ダブルパンチを食らったような状況だが、今後どうなるか?(なお、後者の方は離党はせずで、近い将来を見越した早めの動きといったところだろう。これについては今回はこれ以上立ち入らない。)

 

 長島議員の離党については、党内では「さもありなん」という声もあったようだが、次の選挙での不安を抱える議員が右往左往して離党する可能性も出てくるだろうし、それ以前に執行部批判が湧き上がってくる可能性は否定できないだろう。

 

 そうしたことの一つのメルクマールというか分水嶺になりうるのは離党都議(候補を含む。)の処分をできるかどうか。おそらくできないのではなかという声もあり、出来なければ党の求心力が一気に弱まることになるだろう。

 

 加えて、これは特に旧民主系について言えることだが、こうした状況になると、党のことや政策のことよりも、まず保身、第一に保身。長島議員に続けとばかりになりふり構わず保身に走る議員が出てくるのではないか。そして保身のためにまず採りうる分かりやすい選択肢と言えば、執行部批判。大敗が予想されている都議選の結果とあいまって、蓮舫降ろしと党内対立が激化していくのは必至であろう。

 

 旧民主系の御家芸再びといったところだろうが、逆に、真に国民の側を向いて仕事をしている議員は誰か、見極めるにはいい機会だろう、数は少ないとは思うが。まあせめてもそれが、長島議員の離党に端を発する民進党の混乱で、一筋の光明といったところか。