世にも奇妙な物語
2014年 春の特別編
2014年 春の特別編
原作:おかもと(仮)「空想少女は悶絶中」
(「5分で読める!ひと駅ストーリー 乗車編」宝島社文庫所収)
脚本:向田邦彦
演出:植田泰史
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友達と戯れ、おしゃべりを楽しむ。
女子高生は、
笑顔あふれる休み時間を過ごすもの。
そう思っていた。でも、私は…。
正直、クラスメイトの話にはついていけない。
でも、寂しくなんてない。
私には、掛け替えのない友達がいるから。
いつも私のペースに合わせてくれるし、
現実の友達のように、退屈じゃない。
ページを開けば、
ロマンあふれる戦国時代の武将たちが、
私を空想の世界へといざなってくれる。
この友達がいれば、他には何も要らない。
そう思っていた。
**********
片道1時間40分。
この長い通学時間のおかげで、
薄い本なら、1日で読んでしまえる。
読書好きには、悪くない時間だ。
そして、帰りのバスには、もう1つ楽しみがある。
甘くて淡い、ほんのささやかな楽しみが。
来た~! 石田様…。私の石田三成様。
私の中のイケメン戦国武将ランキング、
栄光のベスト1!
あの凛として、それでいてどこか物憂げな表情。
そして、猛烈に知的なまなざし。
まさに、まさに私が思い描いていた、
石田三成様そのもの!
はぁ~いい匂いした。
話しかけたこと? ないに決まってるでしょう。
見てるだけでいいの。第一、違う学校だし。
名前も知らないのに、どうやって…。
(妄想)
春斗) へえ~歴史好きなんだ? いいよねえ、歴史。
今夜僕と、恋の分け目の関ヶ原…。どう?
薫) うん。
あっ…。いっ、いつの間に…。
これって、席を譲るべき…だよね。
おじいさん…ってほどでもない? 初老?
でも、年上なのは確かなわけだし。
あっ、これで席を譲れば…。
(妄想)
うっ…ダメ。心臓が耐えられない~!
そんな事ができれば苦労しない。
でも、咳を譲ったら、もしかして…。
(妄想)
春斗) お年寄りに、優しいんだね。
薫) 三成様。
春斗) そういうところ…好きだよ。
薫) きゃ~! 三成様ってば~ん!
でも待って。やっぱり恥ずかしい。
だってまるで、みんなに、
私はいい人です~ってアピールしてるみたいだし。
どうしよう?
おい、そこの中学生! お前が譲れ。
どうせ家帰ってご飯食べて寝るだけだろう?
ダメだ。ゲームに夢中で気づいてない。
じゃあ…
そこのお姉さん、女を上げるチャンスですよ。
さあ、いい女っぷりを見せて!
あっ、妊婦さん? それじゃ、ダメか。
う~ん…あの人は病弱そうだし。あの子は遠過ぎる。
あとはみんな年上ってことは…。えっ?
車内譲るべきランキング、私2位~!?
う~ん…やっぱり、譲るしかないのか。
でもさ、この人、気難しそうじゃない?
(妄想)
薫) あの…どっ、どうぞ。
男性) おっ、お前、このわしを、老人だと言うのか?
薫) ひっ…。めっ、めっそうもございません。
あるよ、こういうこと。前に何度かあった。
あ~怖いなあ。譲るの。
やだ、こっち見てる?
何で譲らないの?って思われてる?
あ~もう! 一体どうすればいいの!?
大丈夫。こんな時こそ先人から学ぶの。
彼らなら、このピンチをどうやって切り抜けるのか。
家康なら…絶対たぬき寝入りね。
自らは動かず、時が来るのを待つ。
彼はこのやり方で、最後に天下を取った。
確かに、ピンチの時は逃げるが勝ち。
けど、そしたら私、罪悪感に耐えられる?
良心の呵責と、車内の冷たい視線。
家康の伊賀越えよりも、
過酷な旅路になるかもしれない。
じゃあ、信長なら…。
(妄想)
信長) 座るなら、殺してしまえ、ホトトギス。
殺しちゃダメでしょ。
さすが、自らを第六天魔王と称した信長。
私には到底マネできない。
となると…。
(妄想)
秀吉) どうぞ! この猿めが、温めておきました。
あっ、さあさあ、どうぞ。
なるほど。
瞬時に相手の懐へ飛び込む処世術。
確かに、ここまですれば、
どんなに気難しい相手でも、悪い気はしない。
よし。ここは秀吉で。
(おじいさんに席を譲る男性)
何ということだ。
あんな年上の人に先を越されるなんて。
本来なら私が譲るへきなのに。
こんな過ち、二度と繰り返しちゃいけない。
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アナウンス) 次は三増峠、三増峠。
おっと!
皆さん、今の地名、聞いたことありませんか?
そう、時は永禄12年。
小田原攻めから撤退する武田軍を、
北条軍が追撃した、戦国最大規模の山岳戦。
三増峠の戦いの、あの、三増峠なのです。
**********
しめしめ。来たぞ。今度こそ秀吉で。
三成さま…。
え~! どっ…どういうこと?
えっ? ちょっ、ちょっと…こっち来るし…。
この迫力、この殺気。
どこからどう見ても本物の武士。
えっ…この場合は、どうすればいいの?
譲る? 譲らない?
どっちが正解~~!?
(吊革に) つかまらない。
武士の意地? きっとそう。
幾つになっても誇り高いのが武士。
もし、席を譲ったら…。
(妄想)
薫) どうぞ。
男性) 無礼者!
薫) (刀で切られ) ぐえ~!
ごっ…ご無体な~
ここはまず、相手の出方を伺い、
坐りたいのかどうか、真意を確かめるのが上策。
そんな時に用いるべきは…。
そう、川中島の合戦で、武田信玄が用いた、
きつつき戦法よ!
きつつき戦法とは、
きつつきが餌を捕る際に、
木の反対側をつつき、
びっくりして出てきた虫を捕まえる、
その習性をヒントに、武田家の軍師、
山本勘助が編み出したと言われる戦法。
つまり、おとりを使って、
敵ををおびき出す戦法なのだ。
これが私のきつつき戦法。
すなわち、この動作がおとり。
坐りたい気持ちがあれば、
必ずやこの動きに反応を示すはず。
微動だにしない。
動かざること山のごとしか。
う~ん…。
この戦法が通用しないとなると…。
えっ? 矢、刺さってるじゃん。
だったら話変わってくるよ。
お年寄りな上に、ケガ人でしょ?
苦しそうだし…。
これはさすがに譲ってよくない?
だよね? いい? 譲るよ?
えっ? 嘘…嘘でしょ?
まっ…まさかこの子、立つの?
たっ、たっ…立った。
やめて。同じ女子高生で、
しかも…しかもこの位置関係。
これで先を越されたら、私は社内の笑い者。
それだけはさせない。
そんな下剋上、許すわけにいかない。
(妄想)
薫) 卑怯者!
薫) 我が先に見つけたお年寄りぞ!
恵美) ハハハハ…。笑止!
うぬは誰かが動かねば、動けぬ臆病者ではな
いか。そのご老体は余の手柄。
薫) ならぬ! ここでこちらのご老体を奪われたとあ
っては、末代までの恥! きさまには負けぬ!
恵美) いざ、参る! や~! どけどけどけ~!
道を開けろ~! えい! はあ! えい! じゃあ!
薫) や~!
薫) 手柄が欲しくば、われを倒してからにせよ!
恵美) 笑止! 覚悟せえ!
薫) やあ~!
恵美) や~!
薫) やあ~! や~! たあ!
ふっ…不覚…。み、三成様…。
恵美) (椅子を) どうぞ。
掛けさせたり~!
恵美) おじいさん。どうぞあちらの席へ。
あ~また先を越された。
男性) ああ、どうも、ありがとう。
でも、わしは次で降りるんじゃよ。
(妄想)
恵美) 空蝉の術か…。
**********
恵美) 立っちゃうと読みづらいよね、本。
薫) え?
恵美) 私もどうするか迷ったんだけどさ。ていうか、
困るよね。あんな真ん前に立たれたら。
しかも座る気ないし。
薫) うん。
恵美) 土田恵美。よく同じバスになるね。
薫) えっ? あっ? ああ…。
恵美) あっ、本しか見てないか。何読んでるの?
恵美) へえ~いい趣味してるじゃん。
薫) えっ?
恵美) 今度何か貸してよ。
薫) うん。私、薫。朝比奈薫
恵美) 薫ね。よろしく。
薫) よろしくお願いいたす。
恵美) ハハ。いたすって…武士か!
薫) あっ、いや、違くて…。
こうして私は、
ず~っと欲しかったものを手に入れた。
春斗) ねえ。楽しそうじゃん。何話してんの?
恵美) 春斗にはわかんない話。
春斗) んだよ、冷てえな。
恵美) あっ、この子、薫。
春斗) よろしく。
薫) あっ…どっ…どうも。
恵美) 彼氏。
春斗) 違えだろ。
恵美) 嘘。ただの幼なじみ。
春斗) そう。えっ、何話してたの?
恵美) 内緒。
春斗) 何だよ。
恵美) 当ててみて。
それは、新たな戦いの始まりでもあった。
(妄想)
恵美) 遅いぞ! 武蔵。
薫) 小次郎、敗れたり! てや~!
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薫の中のイケメン戦国武将ランキング ↓
1位 石田三成
2位 真田幸村
3位 伊達政宗
4位 上杉景勝
5位 直江兼続
個人的には、直江兼続が入っていたのが嬉しい♪
あまちゃん以来、能年ちゃんの初のドラマ出演となっ
たのが、この、「空想少女」というお話。制服がまぶし
いよ~! そして、ついつい、天野アキがドラマ出演し
ているのを観るかのような気持ちになってしまうよ~。
バスの中で老人に席を譲る譲らない、たったそれだ
けのシチュエーションを、壮大に妄想する歴史大好
き少女。バカバカしいけど、元気があってよろしい!
いや、もう、能年ちゃんが観られるだけで嬉しいとい
う、親バカモードなので、これはもう、感想というより、
ただの、能年ちゃんファンの戯言だと思って下され!
落武者ならぬ、武士の姿もキュートだし、ラストの
宮本武蔵姿も可愛い。(って、何見ても可愛いんだ
けど。ああ、親バカ万歳!) 欲をいえば、石田三成
に見立てられた男の子が、好みのタイプじゃなかっ
たのが残念! 言ってしまえば、石田三成自体、好
きなタイプじゃないんだけど。種市先輩の武者姿と
か、ミズタクの落武者姿とか…。逆によからぬ妄想
が止まらない~。空想中年少女と化してしまった私。
アキが元気そうでよかった~(いやいや違うって!)
ちなみに、私も席を譲るのが苦手です。譲るのはい
いのだけれど、やり取りが気恥ずかしいというか…。
いつか機会があったら、秀吉になってみようかしらw
ちなみに、「世にも奇妙な物語」 2014年 春の特別編
で面白かった、ダントツに怖かったのは、「墓友」!!
いや~怖い怖い。だんだん身近な問題になりつつあ
るお墓の話は怖い。墓に限らず、簡単に、友達という
言葉を使っちゃいけないっていう、リアルなお話かも。
「空想少女」以外のラインナップはこちら↓
(個人的な好みで☆をつけておきます)
●「ニートな彼とキュートな彼女」☆☆☆
出演:玉森裕太、木村文乃
原作:わかつきひかる「灰色の想像力2」(創元SF文庫所収)
脚本:小澤俊介
演出:高丸雅隆
●「墓友」☆☆☆☆☆
出演:渡辺えり、真野響子 他
脚本:吉井三奈子
演出:松木創
演出:松木創
●「ラスト・シネマ」☆☆☆
出演:榮倉奈々、金子ノブアキ、きたろう 他
脚本:小峯裕之
演出:山内大典
●「復讐病棟」☆☆☆
出演:藤木直人、赤井英和 他
原作:清水義範
脚本:高山直也
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