ちーちゃんはちょっと足りない | 日々のダダ漏れ

日々のダダ漏れ

日々想ったこと、感じたこと。日々、見たもの、聞いたもの、食べたものetc 日々のいろんな気持ちや体験を、ありあまる好奇心の赴くままに、自由に、ゆる~く、感じたままに、好き勝手に書いていこうかと思っています♪

ちーちゃんはちょっと足りない
阿部共実

ちーちゃんはちょっと足りない


中学2年生のちーちゃんと友達のナツ。
なにかちょっと「足りない」と感じる思春
期の女の子たちの日常と心のなかを、
コミカルかつ鋭く描いた衝撃作。


**********

「このマンガがすごい!2015 」のオンナ編第1位が、
この、「ちーちゃんはちょっと足りない」というマンガ。
ノーマークのマンガだったので、さっそく買って読ん
でみたのだけれど…。これが第1位に選ばれるって
いうこと自体、「このマンガがすごい!」って、すごい
な~っていうのが第一の感想。これを選ぶのかって。
正直言って、誰にでもお勧めできるマンガとは言え
ない、読者を選ぶマンガだという印象だったから…。
こういう痛いマンガは嫌いじゃない。でも、すごく好き
というわけでもない。それは、このマンガの「痛さ」が、
好みの痛さではないというだけのことですが。ただ、
この「痛み」が非常にわかる人もいるだろうことは理
解できます。このマンガがすごいというのも分かる。

ちーちゃんは、ちょっと足りない。実際、いろいろと、
ちょっと足りない女の子だ。
けれども、ちーちゃん自
身は、何か足りないと
思ってはいても(ほとんど、お
金であったり、物であったりを、自分は持っていない
と感じている)、まだ、自分自身を憐れんだり、
自分
に絶望したりしているわけではない。彼女のまわり
には人が集まるし、彼女を気に掛けてくれる人、助
けてくれる人がいる、人には恵まれている女の子だ。

そんなちーちゃんが主人公かのように物語は進み、
途中から、実は、
ちーちゃんは足りない。でも、自分
はもっと足りないと、
自分を憐れんで絶望しかけて
いるナツのお話だということがわかってくる。ちーち
ゃんは足りないと、誰より思ってるのはナツなのだ。
足りないことを、持っていないことを、誰よりも気に
しているのはナツ。決して何も持っていないわけで
はないのに、彼女はそのことに気が付けない。足り
ないことで頭がいっぱいになってしまって、変われ
ない自分、行動できない自分、「何もしないただの
静かなクズ」である自分にただ絶望してしまって…。

絵柄に騙されて、前半のほんわかに騙されて読み
進めていくと、とんでもなくどす黒い、痛々しい闇の
中にいつしか入り込んでいく。痛い、痛い、痛い…。
ナツの想いが、容赦なく赤裸々に綴られていく様子
が、果てしなく痛い。どんどん闇に飲み込まれてい
くナツを、最後の最後で救うのは(それを救いという
ならば)、ちーちゃん。ナツが、これから変われるの
か、救いはあるのか、その先は何も描かれない。た
だ、どんな時でも、きっと彼女を救ってくれるのは…
ちーちゃんなんだろうなと、それだけは確信できた。
とはいえ、なんとも恐ろしく脱力してしまう読後感…。
ネットで作者のインタビューを読んで、「空が灰色だ
から」のシリーズのほうを、読んでみたくなりました。

作者・阿部共実さんのインタビューはこちら↓

「このマンガがすごい!2015」
オンナ編第1位記念インタビュー 
阿部共実『ちーちゃんはちょっと足りない』【前編】
阿部共実『ちーちゃんはちょっと足りない』【後編】

●こちらで第1話をためし読みができます↓