「マッサン」 第143回
第24週 「一念岩をも通す」
第24週 「一念岩をも通す」
父の助言。ウイスキーの肝、キーモルトを探せ！の巻
三級ウイスキーの開発を始めて、１週間。
マッサンは懸命に、安くてうまい、
命の水造りに挑んでいますが、
なかなかうまくいきません。
政春） いや…味わいを優先すると、スモーキーフレ
ーバーがとんでしまう。どがぁなアルコールで
希釈すりゃええんじゃ。
悟） スモーキーフレーバーいうんは、
そがに大事なもんなんですか？
政春） ウイスキーちゅうのはのう、
香りを楽しむ酒じゃ。その味わいも、
香りによって大きく左右される。
悟） なるほど。
政春） 何じゃ？
俊夫） 安いとうまいは両立しまへん！
エッセンスを使うしかなぁんじゃ。
政春） 続けるど。
悟） はい。
俊夫） 時間の無駄じゃ思いますで。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ラジオ） ♪東京ブギウギ～ リズムうきうき
心ずきずき わくわく～
海を渡り響くは 東京ブギウギ～
ブギの踊りは 世界の踊り
二人の夢の あの歌
悟） ただいま。
政志） おお、お帰り。
エリー） ご苦労さま。今日も遅かったね。
千加子） あれ？
エマ） お父さんは？
悟） もうちいと続けるけん、先に飯食え言うて。
エリー） あっ、どうぞ、食べてください。
千加子） お父ちゃん、どこ行くん？
政志） ああ…ちいと、風にあたってくるわい。
ラジオ） ♪東京ブギウギ～ リズムうきうき
心ずきずき わくわく～
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
政春） あかん…。
（ドアが開く音）
政志） 邪魔するど！
ハハハッ…お母ちゃんにそっくりじゃのう。
政春） どこが？
政志） 一目見りゃ、機嫌が分かる。ええ加減に仕事
片づけて、早う飯食うてくれんにゃ、片づかん
言うて、エリーさん嘆いとったど。
政春） そがなこと言う訳がなぁ。
政志） よう分かったのう。言うとったのは千加子じゃ。
政春） エリーには、結婚してから一遍も、そがなこと
言われたことがないけん。
政志） ええ嫁さんもろうたのう。
政春） ハハハッ。
政志） 「薬を使わんでも、安いとうまいを、両立され
たる」、言うた手前、あとに引けんようになって
しもうたんか？
政春） わしゃ…自分に妥協しとうないだけじゃ。
政志） ほうか。なら…しっかりやりんさい。
政春） 親父は、どうじゃった？ 広島の柔い水で、灘・
伏見に負けん、うまい酒造ろう思うて、いろいろ、
試してみよったんじゃろう？
政志） ほうじゃ。
政春） そがな時は、どうしたんじゃ？ どうやって、
うまい酒にたどりつけたんじゃ？
政志） 忘れた。そがな大昔のことは、覚えとらん。
政春） わしゃ、真面目に聞いとるんじゃ。
政志） わしも真面目に話とるわい。
政春） ほうか…。じゃったらもうええわ。
政志） ハハハハッ…！ まあ一つ言えるとすりゃあ、
肝をつかむんじゃ。
政春） 肝？
政志） わしゃ、ウイスキーの事はさっぱり分からん
が、味も色も香りも、全部いっぺんに何とかし
よう思わんで、まず、肝を決めて、それをつか
むんじゃ。
政春） 肝…。
政志） わしの場合は米じゃった。
政春） 米が？
政志） わしは、ず～っと、麹にこだわっとったんじゃ。
柔い水に合う麹を求めて、あちこち駆けずり回
っとった。じゃけどいつまでたっても、納得のい
くうまい酒は出来ん。ところがある日、お母ちゃ
んがいつもとは違う米注文してのう。たまたま、
いつもの米は、売り切れとったらしい。ほいで、
その米を食いながらふと思うたんじゃ。いつも
とは、別の米を使ういう事は、なぁもんかいうて。
ほいで、今使うとる米に出会うて、その米を、肝
に据えたんじゃ。この米の良さを最大限に生か
せる、麹はどれじゃいうて。改めて、麹を探し始
めたんじゃ。
政春） それで今、使うとる麹に？
政志） うん。考えてみりゃ、お母ちゃんのおかげじゃ
のう。フフッ…邪魔したの。今日はちいと、飲み
過ぎたわい。先寝るど。
政春） ああ…。
マッサンの頭の中を、父・政志の言葉が、
グルグルと回っていました。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
よく朝、
マッサンは貯蔵庫に籠もっていました。
悟） 叔父さん！
俊夫） 何をやっとるんでがんす？
政春） 肝を探しとるんじゃ。
悟） 肝？
政春） わしゃ今まで、原酒をどがぁなアルコールで
割りゃええんか、そがなことばっかり考えとっ
た。じゃけど、肝心の肝を決めずにやっとった
事に、気が付いたんじゃ。
悟） どういう意味です？
政春） 悟。ウイスキーの肝いうたら何じゃ？
悟） 原酒ですか？
政春） ほうじゃ。
もう一遍テイスティングをし直して、
うちの三級ウイスキーの肝になる、
キーモルトを探すんじゃ。
悟） キーモルト？
俊夫） 原酒をブレンドする時に、
その中心に据える原酒の事じゃ。
政春） こん中に必ず、
三級にふさわしいキーモルトがあるはずじゃ。
俊夫） へじゃ、またこの樽を一から？
政春） いや…今までは、５％しか入れられん以上、
熟成の進んだ、古い原酒の方がええ思うとった。
じゃけど、若い原酒の方が、キリッととんがった、
スモーキーフレーバーが利いとる場合もある。
俊夫） へじゃ、今度は若い樽を？
政春） 蒸溜してから５年以内の樽を、
全部テイスティングしてみる。
悟） ５年分全部味見するんですか！？
政春） 信じてやり続けるしかなぁ。
出会うまで、絶対わしゃ諦めん。
悟） 俊夫さん。
俊夫） ん？
悟） わしにも、何か手伝えることはありませんか？
俊夫） どけ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
その日からマッサンは、毎日、朝から晩まで、
５年以内に蒸溜した原酒を、試飲し続けました。
そして、３日目の夕方。
政春） 俊兄！ どうじゃ？
俊夫） うん！
悟） わしも、一口ええですか？
政春） ああ、飲んでみい。
悟） （咳こみ） こりゃ香りがきつすぎませんか？
政春） まだ３年もんで、若い分角が取れとらん。
じゃけど、これじゃったら、20倍に薄めても、
しっかりスモーキーフレーバーが
残るはずじゃ。
マッサンは、悟がむせるほど、
香りの利いた若い原酒を、
キーモルトに選んだのです。
政春） よっしゃ！
俊夫） お坊ちゃま！ この樽は…一馬が育てた、
大麦で仕込んだ原酒でがんす。
悟） かずま？
俊夫） 戦死した、わしの義理の弟じゃ。
悟） 戦死？
俊夫） ウイスキーに一番合う、大麦を育てたい言う
て…。長いこと、品種改良に、取り組んどった。
じゃけど…その種をまく前に、
出征してそのまま…（泣）。
まさか、こがな事があるんじゃのう…。
（回想）
一馬） いつか…世界に誇れる、メイド・イン・
ジャパンのウイスキーを、造って下さい！
俺の夢は…社長に託します。
俊夫） たいした奴じゃ。
一馬の残した麦の種が、
マッサンの背中を強く押そうとしています。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（注）希釈…原酒の濃度を下げ、味や香りを整える事。
今日は、ちゃんとウイスキー関係のお話。ようやくマッ
サンが、主人公らしく見えてきました～（遅すぎっｗ）。
エリーお得意の盗み聞きもなかったので、久々に清々
しい気持ちで画面を見守ことができました～（爆）。さ
すがに最後の最後に世間の声を取り入れたってこと
なのか…？ とはいえ、まだまだ油断できないけれど。
父親に対する態度が偉そうなのが気になったけれど、
久々に父と息子の会話はよかった。やはり、ベテラン
さんが出ると画面が引き締まる。吟パパはいいね～。
ニコニコ穏やかに、息子に道を示す父。ちゃんと親父
にもありがとうって言えよ～！とは思ったけど。何しろ
エリーにしか優しくなれない冷たい息子だからしょうが
ないか…ｗ 機嫌がすぐわかるところが母親そっくりと
言われたのに笑った。なるほどね～母親似だったか。
やっと見つけたキーモルトが、一馬の大麦で仕込ん
だウイスキーだったというオチは、本来なら感動する
べきところなのだろうけど…。一馬が品種改良してい
るシーンを、ちょっとでも見せていてくれたら…。急に
セリフだけで説明された大麦なのがね…。残念という
か、セリフだけで、後はぜ～んぶ脳内補完してくださ
いねって視聴者に丸投げの手法には乗れない訳で。
しかも、本当は世界に誇れるウイスキーになりたか
っただろう一馬の酒は、三級酒にされてしまうという。
マッサンの役に立っただけでありがたく思えって事？
役者さんはそれこそ脳内補完して演じるしかないの
で、感情移入して演じているだろうけど。視聴者の方
は、主人公その他が、仕事をしているところを見せて
もらえていないので、くだらないどうでもいいエピソー
ドしか頭に浮かばず。突然、セリフだけで感動して下
さいと言われても無理なものは無理！ ここで感動さ
せたいなら、つまらない恋バナよりも、そのへんをし
っかり描いておいてほしかったよ…。明日はきっと三
級酒が完成して、めでたしめでたしになるはず。よう
やくマッサンのウイスキーが一般に認められる瞬間
が訪れるのでしょうか？ 期待しないで待ちましょうｗ
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