「重版出来!」第5話~運を使いこなせ!なるかド下手新人デビュー | 日々のダダ漏れ

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「重版出来!」



第5話
運を使いこなせ!
なるかド下手新人デビュー


和田) そういやお前、運が強いって。
心) 勝てそうなところで負けて、
  無理そうなところで勝つ。変な運です!


**********

久慈) 電子化することで一冊でも多く売
    れれば、結構な話じゃないですか。
記者) いずれは紙のない、
    ペーパーレスな社会を。
久慈) いや…我々は出版社です。
    紙の本は出し続けます。そして、
    売りまくらねばなりません。
    目標は常に、重版出来です。


**********

心) どうやらとっても、いい人なん
  ですよね~。善人というか。
小泉) えっ?
心) 五百旗頭さんです。最近ずっと、隙あらば
  観察してたんですけど。買い物したら、おつ
  りは必ず募金箱に入れる。困ってる人を見
  れば、すかさず助ける。どう見ても車が来な
  い場所でも、信号を守る。いい人すぎます!
  誰も見てない所でまで。
小泉) 片思いの、相手って…。
心) あんなに仕事ができる上に、
  尋常じゃないレベルの善人だなんて。
ミサト) そんなに完璧な人じゃないわよ。
    いい人になろうとしてるんでもない。
心) じゃ、あの行動の数々は?
  ミサトさんと五百旗頭さんって、
  どういう関係なんでしょうか?
小泉) えっ、何で嬉しそうなの?
心) えっ?
小泉) えっ?
心) えっ?


**********

大塚) これが…僕の単行本の設計図。
五百旗頭) あとがき漫画も描きたいって言
      ってたから、それは、巻末に。あと、
      原稿の加筆修正も可能だけど。
大塚) あっ、トーンを貼り忘れたとこがあって。
五百旗頭) じゃ、直したいページをまとめて
      教えてくれるかな?
大塚) はい。あっ…あの、これ、
    もらってもいいですか?
五百旗頭) もちろん!
大塚) 宝物にします!
五百旗頭) もう1つ、大事な仕事。来週までに、
      カバーラフを何点か描いてほしい。
大塚) カバーラフ?
五百旗頭) 表紙のもとになるイラスト。それを
      もとに、デザイナーさんが、装丁デザ
      インを考えてくれる。どんな本にした
      いか希望はあるかな?
大塚) 例えば…1話ごとに、インクの色とか紙
    の色とかを変えた、レインボー仕様とか。
心) 素敵ですね!
  虹が出るシーンともかかってて。
大塚) はい。
五百旗頭) あのね、レインボーの場合、色ごと
      に版変えなきゃいけないから、手間暇
      含めて一冊3千円ってとこかな。
大塚) えっ…。
五百旗頭) 新人の単行本に3千円出す?
大塚) 出しませんね。


**********

五百旗頭) 新人の編集者が見落としがちなの
      が、重版がかかったときの収支。つま
      り、重版でどれだけ儲けられるか。
      カッコイイ装丁にしようって張り切りす
      ぎて、高い原価で作ってしまうと、本が
      死ぬ。
心) 死ぬ?
五百旗頭) 儲けが出ない本は、重版をかけて
      もらえない。重版が無理でも、せめて、
      黒字の実績が残るように作れ。
心) 実績が、残せなかったら…。
五百旗頭) あの作家は売れないって会社に
      レッテルを貼られる。そうなると、
      次の単行本が出しにくくなる。
      新人に限っては絶対に、
      重版がかかりやすい本の設計をしろ。
      作家の可能性に傷をつけるな。
和田) そのとおり! 漫画家がピッチャー。
    俺たち編集者がキャッチャーだ。クセ球、
    直球、大暴投。どんな球でもキャッチして、
    走者が出塁すれば、必ずや、刺~す!
    刺~す!


**********

野呂) では方向性としてはどんな感じに?
五百旗頭) 売れるデザインで。
      大塚先生にとって、初めての単行本
      です。このあと本格的な連載に持ち
      込んで、次の単行本では、マルイチ、
      第1巻の印をつけたい。そのために
      は、これを確実に売らなければいけ
      ないんです。
野呂) 売れる装丁、言うは易しですね。
五百旗頭) すいません。
野呂) 精一杯、やらせていただきます。
五百旗頭) よろしくお願いします。
心) よろしくお願いします。


**********

心) 私、ずっと見てたんです。
  五百旗頭さんが、ゴミ拾ったり、募金
  したり、ミミズをレスキューしてるの。
五百旗頭) お前がストーカーか。
心) 観察です。技は見て盗め、ですから。
  よき編集者になるためには、五百旗頭
  さんを観察すべしと考えました。
五百旗頭) 無駄な努力を…。
心) 無駄かどうかなんて。
五百旗頭) まあな。俺のも人マネだ。
心) 人マネ? 誰のですか?


**********

五百旗頭) 常によい行いをするっていうのは、
      うちの、久慈社長のポリシー。俺はた
      だそれをマネてるだけ。
心) 社長と、五百旗頭さんって…。

五百旗頭) 文芸部にいた時俺が、最初に担当
      した本。社長の、肝入りの本でさ。
      部署にもよく顔出してくださってた。
心) 宮沢賢治詩集。
五百旗頭) その時知ったんだけど。久慈社長
      は、こういう大手出版社の社長にも
      かかわらず、毎日、電車通勤してる。
      酒もタバコもギャンブルもやらない。
      家は借家で、必要最低限の暮らしを
      守ってる。
心) まるで聖人ですね。
五百旗頭) 俺も最初はそう思った。
      でも聞いたらさ、どれも、
      運をためるためだって言うんだ。
心) 運をためる?
五百旗頭) 久慈社長、母一人子一人で
      育ったらしい。炭坑のある町で。

**********

久慈) そこは、変わりゆく時代から取り残され
    たような、貧しい町だった。炭坑夫だっ
    た父は、肺を壊して亡くなったという。
    物心ついた時には母と二人きり。

(回想)
担任) クラスでも一番成績がいいんです。本
    人も、進学して、医者を目指したいと。
母) はあ? 医者!?
  アンタ、そげんこつ言うたと!? 勝!
担任) お母さん。勝君の将来を考えれば、
    せめて高校だけでも出してあげるのが
    親の務めじゃありませんか?
母) 中学出れば十分やろが!
  私に体ば売れと言うとですか?
  貧乏人には、
  貧乏人の生き方があるとです。


**********

(回想)
爺) おいを殺したら、わいの、運は尽きるぞ。
久慈) ああ?
爺) ええこと教えちゃる。運ば、ためられるぞ。
   世の中はな、足して引いて、ゼロになるご
   とできとう。生まれたときに持ってるもんに
   差があっても、札は、同じ数だけ配られよ
   る。ええことしたら、運はたまる。悪いこと
   したらすぐに、運は減りよる。人殺しげな、
   一巻の終わりたい。運ば味方にすりゃ、
   何十倍にも幸せはふくれ上がりよる。
   問題は、どこで勝ちたいかや。自分が、
   どがんなりたかか、自分の頭で考えろ。
   考えて考えて、吐くほど考えて、見極めろ。
   運ば使いこなせ。
久慈) そがんこと…
爺) おいの言うことが信じられんか?
   信じられんなら、それがわいの運たい。

久慈) その晩、その町を出る事に決めた。
    上京して、町工場で働いた。毎日ひたすら、
    ただ、生きるために。ただ、飯を食うために。


(回想)
坂巻) うん。
久慈) 長いこと本なんて。
坂巻) 俺の、田舎の詩人だ。やる。


久慈) ただ、文字が並んでいるだけなのに、
    どうしてそんなに、泣けたのか…。


雨ニモマケズ
風ニモマケズ
雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ
丈夫ナカラダヲモチ
慾ハナク
決シテ瞋ラズ
イツモシヅカニワラツテヰル
一日ニ玄米四合ト
味噌ト少シノ野菜ヲタベ
アラユルコトヲ
ジブンヲカンジョウニ入レズニ
ヨクミキキシワカリ
ソシテワスレズ
野原ノ松ノ林ノ蔭ノ
小サナ萓ブキノ小屋ニヰテ
東ニ病気ノコドモアレバ
行ッテ看病シテヤリ
西ニツカレタ母アレバ
行ッテソノ稲ノ朿ヲ負ヒ
南ニ死ニサウナ人アレバ
行ッテコハガラナクテモイヽトイヒ
北ニケンクヮヤソショウガアレバ
ツマラナイカラヤメロトイヒ
ヒデリノトキハナミダヲナガシ
サムサノナツハオロオロアルキ
ミンナニデクノボートヨバレ
ホメラレモセズ
クニモサレズ
サウイフモノニ
ワタシハナリタイ

**********

十年後

(回想)
作家) 君が、若い頃出会ったっていう、
    その老人、そりゃきっと、
    聖なる予言者ですよ。
久慈) 聖なる予言者?
作家) 運命の神は、人が間違った方向へ
    と行かないように、人間のふりをして
    つじつじに立っているんです。聞くも
    聞かぬも、人の選択。


久慈) 作家とは、おかしなことを
    言うものだと思ったが…。


(回想)
爺) 問題は、どこで勝ちたいかや。
   運ば使いこなせ。


久慈) 隣の家からのもらい火で、アパートは
    全焼。家財一式を失った。私は、ギャ 
    ンブルをやめた。酒もタバコもやめた。
    趣味は散歩と掃除。家は借家。車も持
    たない。贅沢はせず、必要最低限の生
    活。そうして、1年がたつ頃、偶然に買
    い付けた、無名作家の海外ミステリー
    がモンスター級の大ヒット。重版に次ぐ、
    重版出来。もし、運がためられるのな
    ら、私は仕事で勝ちたい。すべての運
    を、ヒットにつぎ込みたい。そのために
    私は、運をため続けるのです。


**********

五百旗頭) 俺も、勝つならここぞってとこで
      勝ちたい。だから運をためてる。
      まあ、半信半疑だけどな。

**********

心) 野呂さんマジック、楽しみです。
野呂) マジック?
心) 作家さんの描いたカバーラフが、野呂
  さんの手にかかると、魔法みたいに素敵
  な装丁になるって聞きました。
野呂) 僕はただデザインの師匠に
    言われたことを守ってるだけだよ。
    「世の中をよく見ろ。世間は遊びであふれ
    ている。書店へ行けば途方もない数の本
    が並んでいる。その中から一冊を選んで
    もらう魔法は…ない。だから、考えろ。考 
    えて考えて、決められた予算の中ででき
    うるかぎり、最大最高の仕事をしろ。常に
    己に問え。自分の仕事だと胸を張れるも
    のを、世の中に送り出せているのか」。
心) 胸を張れるものを、世の中に。


**********

心) これ…全部?
小泉) 廃棄しなくちゃならない本。
    倉庫を借りるのはタダじゃないし、
    スペースに限りもあるから、無制限
    に在庫を置けるわけじゃない。売れ
    なかった本は、定期的に断裁しなき
    ゃならない。
心) 社長は、毎年ここへ?
久慈) はい…我々は毎年多くの本を出版
    しています。それは、誇りです。生き
    ていくのに、本は必ずしも必要じゃな
    いかもしれない。読まなくても、生き
    ていけるかもしれない。だが、たった
    1冊の本が、人生を動かす事もある。
    誰かに救いをもたらす事もある。だ
    から私は、1冊でも多くの本を、読者
    に届けたい。それが、本への恩返し
    なんです。
心) 恩返し?
久慈) 本が…本が私を人間にしてくれた。
    これからも、私は本を売ります。
    だから、ここへ来るんです。
    この痛みを忘れないために。


**********

大塚) 僕、忘れません。
    決して忘れません。この光景。


**********

心) 忘れません。
  この光景…決して!


**********

和田) 前代未聞…いいじゃねえかよ。
    見たことないもん載ってるのが
    雑誌の面白さだよ。


**********

久慈) 一等…当選!?
    こんなところで、運を使うわけには…。
孫) おばあちゃん、折り紙な~い。
多恵子) あるでしょ、たくさん。
孫) かわいくないもん。
久慈) は~い、折り紙どうぞ。
孫) ありがとう。
久慈) は~い、換金されなかった宝くじはね、
    慈善事業に寄付されるんですよ。

(宝くじにハサミを入れる孫)
久慈) これでまた、重版出来できるぞ。
孫) じゅ~?
久慈) じゅうはん、しゅった~い。
孫) じゅうはん、しゅった~い!
久慈) よくできたね。
    じゅうはん、しゅった~い!


**********

運ば、ためられるぞ。
世の中はな、足して引いて、
ゼロになるごとできとう。
生まれたときに
持ってるもんに差があっても、
札は、同じ数だけ配られよる。
ええことしたら、運はたまる。
悪いことしたらすぐに、
運は減りよる。
人殺しげな、一巻の終わりたい。
運ば味方にすりゃ、
何十倍にも幸せはふくれ上がりよる。
問題は、どこで勝ちたいかや。
自分が、どがんなりたかか、
自分の頭で考えろ。
考えて考えて、吐くほど考えて、
見極めろ。運ば使いこなせ。

今回は、興都館の社長久慈のお話がメイン。
運はためられる。っていうか、いい事と悪い事
は同じ数だけあると…何となく、経験的にそう
思ってきたなあと。とはいっても、久慈社長の
ように善行を日々重ねているわけではないの
で、いい方にも悪いほうにも大きくは動かない。
そこそこいい事があると、そこそこ悪い事が起
こる。臨時収入があれば、家電が壊れてその
分がちょうど補填されるみたいな? 何だかい
つも、トントンになるというか。不思議とそうな
るので「トントンの運(と自分で名付けてるw)」
があると思ってきたのだけれど…。知らないう
ちに、いい加減で運を調整してきたのかも、な
んて思ったりした。これからはもっと積極的に
運をためるぞ~とも思ったりして。めざせ一日
一善、いや三善、四善、五善! みみずレスキ
ューまでは、さすがにできそうにないけれど…。

絶版となる本が裁断されるシーンは、やっぱり
胸が痛くなる。でも、日々生み出される本を全
部そのまま置いておくスペースなんてないよね。
電子書籍の登場で、絶版になった作品を読め
る機会は増えたけれど、やっぱり、紙の本は格
別で。好きな本は、手放すまいと心に誓った私。
本もまた、一期一会。今までの出会いに感謝。


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