「精霊の守り人～悲しき破壊神」
第４回 「笑う魔物」
バルサ（綾瀬はるか）はシハナ（真木よう子）から
届いた脅迫状に従い再びロタ王国を目指す。途
中の野営地で狼の群れに襲われるがアスラ（鈴
木梨央）が一瞬で狼たちを殺してしまう。高笑い
するアスラは禍々しいものに支配されていた…。
一方、サンガルにとらわれたチャグム（板垣瑞生）
は牢から脱走するが舟を漕ぎ出すときに敵の銛
を受け重傷を負う。それでも沖を目指すがヒュウ
ゴ（鈴木亮平）の海賊船が現れ行く手を阻む！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊届いた脅迫状に従い再びロタ王国を目指す。途
中の野営地で狼の群れに襲われるがアスラ（鈴
木梨央）が一瞬で狼たちを殺してしまう。高笑い
するアスラは禍々しいものに支配されていた…。
一方、サンガルにとらわれたチャグム（板垣瑞生）
は牢から脱走するが舟を漕ぎ出すときに敵の銛
を受け重傷を負う。それでも沖を目指すがヒュウ
ゴ（鈴木亮平）の海賊船が現れ行く手を阻む！
この世界には、魔物が潜んでいる。
外から訪れる、魔物。
そして、自分の中に眠る、魔物。
それはいつも、
食い殺す時をうかがっている。
用心棒のバルサは、少女と共に、
国境の街に身を潜めていた。
少女の命を狙う女は、
その、本性を現し始めた。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾁｬｸﾞﾑ） 父上が、私を殺せと命じたのだな？
モン） 皇太子を盾にとられては、新ヨゴ国に
勝ち目はございません。これが私の役目。
あの船に乗せられた、理由なのです。
ﾁｬｸﾞﾑ） モンを離せ。
ジン） モンは何があっても任務を諦めません。
ﾁｬｸﾞﾑ） いいから離せ。
そうと気付いていながら、
ジンはなぜ、帝を裏切る？
ジン） 次の帝をお守りするようにと、
聖導師様から仰せつかった。
ｼｭｶﾞ） 聖導師様が…。
ジン） 逃げましょう。私と一緒に。
ﾁｬｸﾞﾑ） よし、分かった。やってみよう。
逃げよう。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾏｰｻ） そのかわり、お願いがあるの。
いつかまたここに帰ってきてちょうだい。
ｱｽﾗ） え…？
ﾏｰｻ） もちろん、あなたがそうしたくなってか
らでいいの。私喜んで、あなたに、衣の
作り方教えてあげる。何でも私の知って
る事は全部あなたに教えてあげる。だっ
てあなたには見込みがあるんだもの。
あなたのお兄さんにもきっといい仕事が
見つかるわ。考えてちょうだい。
ｱｽﾗ） （泣） 私も、ここを離れたくない…。
ﾏｰｻ） あなたからその言葉を聞けてうれしいわ。
ｱｽﾗ） （泣）
ﾏｰｻ） お願いよ。忘れないで。
あなたがここにいた事を…。
私が、あなたを待っている事！
ｱｽﾗ） （泣）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（回想）
ﾊﾞﾙｻ） どうして！
どうして私を置いていくの！？
ｼﾞｸﾞﾛ） お前は四路街に残れ。
ここに残ればきっと幸せになれる。
ﾊﾞﾙｻ） なら、どうしてジグロは残らないの？
ｼﾞｸﾞﾛ） お前には私の事は分からぬ。
分かるようになってほしくないんだ。
幸せになってくれ。
ﾊﾞﾙｻ） や～っ！
ジグロも、私の事が分かってない！
分かってない！ 分かってない！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ｽﾌｧﾙ） ロタ祭儀場？ アスラをロタ祭儀場に
連れていくというのか。
ｼﾊﾅ） そう。ロタ祭儀場こそ、かつてはタル人
の聖地だった。あの伝説の、サーダ・タル
ハマヤが生まれた所。サーダ・タルハマヤ
は聖なる泉のあった場所に、宮殿を建て、
この国を統治した。そしてまさにそこで、
初代ロタ王に滅ぼされた。その場所で、
建国ノ儀が行われる。そこにアスラを連れ
ていけば、アスラはきっと神を招く。あの
母親が殺された、同じ場所だから。
ｽﾌｧﾙ） お前はなんという恐ろしい事を
考えているのだ！
ｼﾊﾅ） 分かって父さん。北部の者だけが、飢え
に苦しみ、南部の者だけが豊かさを貪る。
その果てに、他国に身を売ろうとしている
国なんだ。
ｽﾌｧﾙ） だからといって、
我らが破壊を求めてはならぬのだ。
ｼﾊﾅ） この国を一つにできる王が、やっと現
れた！ 私はそのロタ王に仕えるだけ。
ｽﾌｧﾙ） お前の慕うイーハン殿下は、
王ではない。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾖｰｻﾑ） 建国ノ儀は、お前が取り仕切るのだ。
もし私が死んでも、
その事は伏せておくのだ。
ｲｰﾊﾝ） しかし、そのあとは…。私は、兄君
のような名君になる自信はありません。
ﾖｰｻﾑ） お前というやつは…（咳き込み）
なるのだ。タルの女を愛せたお前だ。
お前にはできる！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾖｰｻﾑ） ロタの王家に生まれたお前が、タル
人と結ばれる事は、あってはならない。
だから私が引き裂いた。その後のお前の
タル人に対する姿を見れば、あれはお前
のいっときの情欲ではなかった。人の心
だけを見て愛せる、お前の優しさだ。お
前の優しさは、何も変わらない。その優
しさに自信を持て！ 人々が王に求める
のは、優しさではない。自信だ！
この国を、頼んだぞ。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾁｬｸﾞﾑ） バルサ…。
ﾋｭｳｺﾞ） バルサというのは、よほど君の大切
な人らしいな。銛を抜く時にもその名を
呼んでいた。
ﾁｬｸﾞﾑ） お前は誰だ？ うっ…！
ﾋｭｳｺﾞ） まだ無理をなさらぬように。
私はヒュウゴと申します。
タルシュ帝国の軍人です。
ﾁｬｸﾞﾑ） 私は…タルシュ帝国に捕まったのか。
ﾋｭｳｺﾞ） いいえ。タルシュ帝国に
救われたのですよ。殿下。
ﾁｬｸﾞﾑ） シュガは？ タガルとオルは無事か？
ﾋｭｳｺﾞ） 一緒に逃げた者たちですか？
殿下を船にお乗せしたあと、
島に送り返しました。
処罰される事はありません。ご安心を。
ﾁｬｸﾞﾑ） そうか。無事か…。水をくれ。
ﾋｭｳｺﾞ） 少々お待ちを。
ﾁｬｸﾞﾑ） うっ…。
ﾋｭｳｺﾞ） うっ！
セナ） どうしました？
ﾋｭｳｺﾞ） 自分の舌を噛もうとした。大丈夫だ。
私の指でよければいくらでもお噛み下さ
い、殿下。死んでは何も得られませんよ。
殿下。実は私も、
あなたと同じヨゴ人なのです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾁｬｸﾞﾑ） ヨゴ人？ 新ヨゴ国ではないだろう。
ﾋｭｳｺﾞ） 南の大陸にある、旧ヨゴ国です。
かつてタルシュ帝国に侵略され、
今は属国になっております。
我がヨゴ国が敗戦した時、私はまだ子供
でした。親兄弟を戦火で焼かれ、タルシュ
帝国を恨む事しかできませんでした。だ
が、敗戦でヨゴ人は貧しくなったか、いい
え、豊かになりました。タルシュ人の奴隷
になったか、いいえ、人々はむしろ、解放
された気になってゆきました。そして全て
のヨゴ人が思うようになったのです。親兄
弟を失ったのは、戦火を避けられなかっ
た帝のせいではないのかと。殿下にはま
だ、民を戦火から救う道が残されておりま
す。そのためにはまずタルシュ帝国の事
を知るべきでしょう。そのためにお連れす
るのです。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾊﾞﾙｻ） アスラは、狼が怖いのか？
ｱｽﾗ） だって私のお父さん、
狼に、かみ殺されたのよ。
ﾊﾞﾙｻ） 大丈夫。
冬の間におなかをすかせた狼が、
羊を狙いに来ただけだ。
ここにいれば安心だから。
ｱｽﾗ） どこに行くの！？ バルサ！
ﾊﾞﾙｻ） 大丈夫だ。私が追い払ってやる。
ｱｽﾗ） お父さんだって、そう言ったのに…。
だけど、殺された！
ﾊﾞﾙｻ） ほかの人が起きてきたら、
すぐに戻ってくるから。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ｱｽﾗ） いたでしょ？ バルサ。
カミサマいたでしょ？
バルサも見たでしょ？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（回想）
ｼﾞｸﾞﾛ） 楽しいか？
ﾊﾞﾙｻ） え？
ｼﾞｸﾞﾛ） 笑っていたぞ。
ﾊﾞﾙｻ） 笑ってなどいない！
ｼﾞｸﾞﾛ） 気付いていないのか。
人に槍を向けた時、
お前は自分の魂にも槍を向けているのだ。
自分の魂をも殺しているのだ。
自分の魂をどう守るかは、
お前が自分で考えろ。
俺にも、それは教えられん。
ﾊﾞﾙｻ） 分かった。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
ﾊﾞﾙｻ） （泣）
ｱｽﾗ） 泣かないで。バルサ。バルサ。
バルサもかつて、殺戮を楽しむ破壊神になりかけ
ていた。初めて人を殺したあの慟哭の日から、い
つしか人を殺すことに慣れてしまっていたバルサ。
神を呼び出し、笑うアスラの姿に、昔の自分を見
たバルサの涙に、切なくなった。こういうのに弱い。
気付いていないのか。
人に槍を向けた時、
お前は自分の魂にも槍を向けているのだ。
自分の魂をも殺しているのだ。
自分の魂をどう守るかは、
お前が自分で考えろ。
俺にも、それは教えられん。
人に向けた刃は、いつしか自分に返ってるのだと
思う。人を傷つけた時、自分の魂もまた、傷つくと。
ジグロとバルサの旅を、もっと見たかったなぁ…。人に向けた刃は、いつしか自分に返ってるのだと
思う。人を傷つけた時、自分の魂もまた、傷つくと。
昔のバルサを、もっと、知りたいと思ってしまった。
シーズン２で、大分世界観に慣れてきた気がする。
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第２回～罠（わな）
第３回～光の力
第４回～笑う魔物
第５回～聖なる場所へ
第６回～帝国の牙
第７回～神の守り人
第８回～王子の足跡
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