「ちむどんどん」 第93回
第19週「愛と旅立ちのモーウイ」
お母ちゃんをバカにするな！
※無断転載対策のため、不本意ですが、
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（机に向かい、事業計画書を
書いている暢子）
和彦） ただいま。
暢子） お帰り。
和彦君、うち、あの物件借りたい！
和彦） ん？
暢子） あそこなら、
きっとうまくいく気がする。
確かに計画よりは家賃高いけど、
ほんのちょっとだし。
和彦） よかった。
暢子） ん？
和彦） 最近、ずっと難しい顔してた
から。慎重に考えるのも大切だけど、
最後は、やりたいかどうかで決める
しかない。応援する。僕は、暢子の
笑顔が一番好きだから。
暢子） ウフフッ…。
和彦） そうと決まれば、早めに
契約しないと。誰かに先を越さ
れたら、悔しいでしょ？
暢子） うん。
和彦） うん。
暢子） でも、一つ問題があるわけ。
和彦） ん？
暢子） 契約して保証金を払ったら、
すぐに家賃が発生する。
和彦） ああ…。
暢子） 本格的に準備に取りかかる
ためには、なるべく早くフォンターナ
を辞めないと。ただ、そんなわがま
ま許されるかどうか…。
和彦） そうか…。
暢子） こんなに早くいい物件が見つ
かると思ってなかった。人によって
は、何か月もかかるって聞いたし。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜フォンターナ＞
房子） その物件に決めたのね。
契約はいつ？
暢子） 今月末です。
二ツ橋） 間取りも、立地も悪くない
ですし、店舗の２階に住むことが
できるそうです。
房子） そう。
二ツ橋） しばらくは、仕事を続けながら
開店準備をして頂き、どうでしょうか？
２か月、３か月後くらい…。
房子） 暢子さん。
暢子） はい。
房子） 今月いっぱいで退職。
それでいい？
不都合があれば考慮します。
暢子） いいんですか？
房子） いいの？ よくないの？
暢子） ありがたいです。
房子） 二ツ橋さんそれでいい？
二ツ橋） はい。
房子） 辞めていく人間に、
余計な人件費かけたくないから。
暢子） ありがとうございます。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜猪野養豚場＞
清恵） 待って！ 待って待って…。
寛大） じゃあ置くぞ。
清恵） うん。
寛大） 置くぞ。よっ…。ふぅ…。
清恵） はぁ…。
男手が必要な時に限って…。
寛大） 賢秀か？
そういやしばらく音沙汰ねえな。
清恵） 変なもめ事に巻き込まれて
なきゃいいけど、あのバカ。
寛大） 心配してるのか。
清恵） 別に。関係ないし。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜フォンターナ＞
賢秀） つまり、これを飲めば、健康で
長生きができるだけではなく、幸せ
の、ジャイアントビタミン仲間を増や
し、会員になったみんなが、金持ち
になれるという、もう、スーパーハッ
ピーな、システムなんです。今、本
部発表によると、なんと、全ての会
員が、毎週5人は新規会員獲得中！
この勢いは、止まりませんよ。
房子） それが本当なら、会員数はあ
っという間に日本の人口を超える。
賢秀） えっ？
房子） あきらかにねずみ講。
ねずみ講、という、立派な犯罪です。
賢秀） は…犯罪？ えっ、いや…。
房子） あなたは、その歩合だか、
配当金だか、もうもらったの？
賢秀） それは…まだ…。
房子） いつもらうの？ あなたは誰の
ためにこのビジネスを始めたの？
大事な人に迷惑をかけたくなかった
ら、ちゃんと自分で、真実を確かめ
てきなさい。
賢秀） はい…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（書斎を出る賢秀）
（スーパーバンドを外す）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜東洋新聞社＞
和彦） 社員特別融資って制度ありま
すよね。万が一の時に備えて、どん
な仕組みか知っておきたいんです。
田良島） わかった。総務に確認しとく。
金といえば、暢子ちゃんの兄貴が、
ねずみ講みたいな商売始めたって
言ってたけど、まさかこれじゃないよ
な？ 社会部の飲み仲間から聞いた
んだが、いくつかの会社を既に警察
がマークしてて、近々一斉に、逮捕
に動く予定だと。週刊誌も張りつい
てるらしい。マークされてる会社の
リストだ。
（賢秀の名刺を出す和彦）
田良島） おい、ドンピシャ！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
我那覇） 話が違うじゃないですか。
男性） どういうことですか。
男性） 納得できるように
説明して下さいよ。
我那覇） 配当金を、払って下さい。
男性） そうだ！
男性） そうだ！
黒岩） 配当金は、子供と孫が、それぞ
れノルマを達成したあと、半年以内に
支払います。契約書に書いてある。
我那覇） こんな小さい字で…。第一、
入会の時にはそんな説明一切…。
黒岩） 契約書をちゃんと読まなかった、
あなたたちが悪い。
我那覇） 約束どおり払って
もらわないと…。
我那覇） 賢秀君！
賢秀） だましたんですね。
黒岩） だました？
賢秀） これ、悪徳商法の
犯罪なんでしょ？
黒岩） 人聞きの悪い。
これは、ネットワークビジネス。
賢秀） 俺は、会員をやめます。
預けた金を、返して下さい。
黒岩） ノルマを達成せず退会する場合、
違約金200万円を支払って頂きます。
賢秀） 200万！？
男性） やめたきゃ違約金持ってこい！
賢秀） 200万なんてあるわけないさぁ。
男性） だったら借りてこいよ。
お前みたいなクズにもいるだろお前。
親とかきょうだいとか。
賢秀） 預けた金を返して下さい。やん
ばるの母ちゃんが、コツコツ働いて
ためた金、あれだけは返して下さい！
男性） あんなはした金。
賢秀） はした金？
母ちゃんが、汗水垂らして
稼いだ大事な金ヤシガ！
返せ。母ちゃんの金を返せ！
（殴られる賢秀）
我那覇） 賢秀君、大丈夫か？
賢秀） 見ましたね？
先に手を出したのはこいつら。
これで、思う存分暴れられる。
（男たちを殴る賢秀）
我那覇） すまん！
（逃げる我那覇）
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
電・博夫） はい、石川です…。
えっ？ 比嘉賢秀の妹？
博夫） 良子、電話。
電・良子） もしもし、お電話代わりました。
違約金？ 何の話ですか？ 200万？
ここは、沖縄県ですけど…。
もしもし？ もしも～し？
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
＜あまゆ＞
（暢子が、コソコソ帰ってくる）
順次） お帰り。
トミ） お帰り。
順次） どうしたの？
三郎） 腹でも痛いのか？
暢子） 郵便局と、信用金庫で、うちの
開店資金の全てを。保証金と前家賃、
そのほか含めての200万円。明日の
朝一番で払いに行くんです。こんな
大金持ち歩くの初めてだから、
デージどきどきーして。
三郎） しまっときな。
大声で言うことじゃねえ。
暢） はい…。
順次） 世の中善人ばかり
じゃないからね。
智） 甘く見てると痛い目を見るよ。
昔の俺みたいに。
暢子） 智が、いつ？
智） 今はどうにか軌道にのったけど、
初めは若造だからとなめられて。
三郎） 金は生き物、大事にしてくれ
る人のところに集まる。粗末にする
人から離れてく。商売やんならその
こときっちり、肝に銘じておかなきゃ。
暢子） お金は、生き物…。
なるほど、ありがとうございます。
しまってきますね。
三郎） その方がいい。
（電話の呼び出し音）
電・暢子） もしもし、あまゆです。
比嘉暢子は、私ですけど。
違約金？
電・黒岩） 200万円、大至急
持ってきてもらえませんか。
でないと…お宅のお兄さんが。
賢秀の声） やめれ！
家族を巻き込むな！ うおっ！
電・暢子） ちょっと待って下さい。
あの…そこは、どこですか？ はい。
賢秀の声） 暢子、来るな！ あっ！
電・暢子） ニーニー！
（電話を切り、200万円の入った
封筒を見つめる暢子）
（店を飛び出す暢子）
智） 暢子。暢子おい！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（和彦が帰ってくる）
和彦） 暢子は？
三郎） たった今金持って。
智） 和彦、おい！ 待て！
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
（雑居ビルにやってくる
暢子と和彦と智）
暢子） ニーニー！
賢秀） 来るな！
黒岩） 暢子さん、お兄さんが約束
守ってくれなくて困ってるんですよ。
暢子） 悪いこととは、
知らなかったんだよね？
黒岩） お兄さんは、全て承知の上で、
契約書にサインして、会員になられ
ました。
賢秀） ケッ！
黒岩） 違約金はお支払いできますか？
（暢子の手に200万円の入った封筒）
賢秀） 暢子！
やめれ、俺なんかのために！
（封筒を突き出す）
賢秀） やめれ！
店を出すための大事なお金だろ？
黒岩） ハッハッハッハ…。
大げさだなあ。貧しい母親に
育てられた、哀れなきょうだいだ。
（黒岩の頬をたたく暢子）
暢子） お母ちゃんをバカにするな！
男性） このアマ！
暢子） キャッ、アッ…。
（男たちにボコボコにされる和彦たち）
和彦） 暢子！
♪（サイレン）
男性） やっ、やべえ！ ずらかれ！
（逃げる男たち）
♪（サイレン）
賢秀） 金返せ！ おい！
暢子） ニーニー！
お金はもういいから！
賢秀） 金返せ！ 金返せ！
暢子） もういいから！
賢秀） 離せ！
暢子） もういいから！
賢秀） 離せ！
暢子） もういいから…。
＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「貧しい母親に育てられた哀れなきょうだい」
と言われてキレる暢子。バカにしたというより、
単なる事実のような気が…。賢秀も、暢子も、
自分たちの行動を改めればいいだけなのに。
それにしても本当に役に立たないのが和彦。
田良島から話を聞いているのに、のこのこと
暢子についていくだけって…。警察呼べよ～。
暢子を先頭にして中に入れるなよ～。お前が
先に部屋に入れよ～。暢子が1人で駆け込ん
だのならまだしも、3人一緒に行っているのに。
ただただ全員バカ？なだけなのがマジきつい。
まともな人がいない世界を見続けるのホント…。
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