Side.尚




「ショー、タロー…
…お願い…があるの…

  …一人に…して…」




ーーーークソッ…

俺の前で、泣くことはおろか、
キレることすらしやがらないなんてっ…!

アイツが嫌がるように……キス……してやったのに…

……ちょっと待てよ…?
それでアイツは、どこに行ったんだ…?

そもそもどっか行くつもりで飛び出して来たんだ…

こんな時間に、女ひとりで…?

襲われでもしたら、どうすんだよっ…!

……しょうがねぇ…探すか…


少し辺りを歩くと、すぐ近くにある公園を見つけた。
もしかしたら、と思って暗闇の中の公園に目を向けると、
キョーコと思われる一人の女の影がベンチに見えた。


……アイツは、ガキの頃からこうして一人で……


一人にしてくれと言われた以上、出て行くことはできねぇが、アイツが下宿先に戻るまでの間、様子だけでも見ててやるか…

…って!!
ホントに俺は心配性の親父かよっ!!


しばらくの間、泣き喚くでもなく、ぼーっとただ座ってるだけのキョーコを公園の茂みの影から見ていると、
一人の男が、キョーコに向かって歩いていくのが見えた。

…っ!ほら見ろっ!
だからキョーコのやつ、
こんな時間に女ひとりでこんなとこにいるからっ!

慌てて助けに出て行こうと身を乗り出したその時…
その男が見覚えのある男だと気づいた…。


あのヤローはっ…!
ーーーー敦賀蓮っ…!!

こんなところまでキョーコの近くに来やがるなんてっ!
あのヤロー、マジでキョーコに拘りすぎなんじゃねーのか!?


結局、敦賀蓮が現れた衝撃で、茂みから出られずにいると、
キョーコが泣きながらヤツに飛び付いて行くのが見えた。


ーーークッッソッ!!!!
何なんだよっっ!!キョーコのやつっ!!

俺の前じゃ泣かねぇのに、ヤツの前では泣くのかよっっ!!!!


ヤツの胸で泣き喚くキョーコを見ていられなくて、帰ろうかと思った時、
少し離れた茂みにもう一人の男の気配を見つけた。


ーーー誰だ…?


その瞬間、シャッター音と共に、フラッシュの光が一瞬見えた。


ーーーなっ!!!?
どっかの記者が張り込んでやがったのかっ!!


その時、以前軽井沢で、スキャンダルによって役のイメージに傷が付くのが嫌だと言っていたキョーコを思い出す…。


しょうがねぇ…締め上げるか…


そう思って茂みの中から腰を上げて、キョーコと敦賀蓮の様子をもう一度確認しようと視線を向けた時ーーー


!!!!!?
………キス、してやがるっ!!!?


ーーーカシャッ


ーーーっっ!!!?
撮られてんじゃねーかっ!!
クッソッ!!


シャッター音を聞いて、考えるより先に身体が動いていた。


「ーーーてめぇ、どこの記者だ!?」


「っ!?
ふっ…!不破尚っ!?」


「どこの記者かって聞いてんだよっ!」


胸ぐらを掴んで、問い詰めた。


「げ…月刊BOOSTの者です…」


BOOST!?
チッ!よりによってタチの悪ぃ芸能スクープ誌じゃねーかっ!


「カメラ貸せ。」


「…!?こ、これは…大事な商売道具なんで~…」


「じゃあデータ消せ。」


「いや~、そう言われましても~…」


「消せっつってんだよっ!
カメラぶっ壊されたくなければ、
今すぐ消せっ!!」


「…っ、へぃ、分かりましたよ~……」


そう言うとキツネ顔にグラサンかけたような顔の記者は、しぶしぶ俺の目の前で、今撮った写真のデータを消していった。

ほっとしながら、またキョーコたちの様子を見ると、ベンチに並んで何かを覗き込むように二人で仲良く座ってやがる…
こっちの声は距離もあることから、二人には聞こえていないようだ…。


…チッ!
俺は何やってんだか…


記者が帰っていったのを確認して、俺もその場を離れた。


それにしても、あのヤロー…
なんでキョーコにキスなんか…
…っ!?
もしかしてタイミング的に、俺がキョーコにキスしたの見てやがって、それで…?
まさかとは思うが、俺があの公園にいたことにも気づいてて………?

~~~~~あーもうっ!!
考えることすら、うぜぇっ!!

俺はだるまやの近くに待たせてあった、軽井沢の一件以来アシ代わりにしてる、スパイダーの車に乗り込んだ。



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あれ?おかしいな…
Fin.て締めたはずだったのに、
妄想が止まらなくなった…(笑)
そういえばショータローはホントに大人しく帰ったの?
と思ったら、こんな感じになりました~。
おまけと言いながら一番長いとか…(;^ω^A

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