夏の暑さの残る頃ーーー

ある映画の公開が、最終日を迎えようとしていたーーー



「何だよ……、公開終了の舞台挨拶って…
  聞いたことないよね?愛華ちゃん。」


「聞いたことないです、村雨さん…。
  一体何のためにやるのかしら……?」


舞台挨拶を控え、出演者たちは口々に疑問を口にしていたーーー。


「でもかなり報道陣集まってるよ…?」


「ねぇ、今日の新聞……見てこれ…」


「ーーー??

  『大ヒット御礼、映画トラジック・マーカー
  死神B・J役カイン・ヒールの正体とはーーー!?』

  何だこれ?
  正体も何も…奴はイギリスの無名役者じゃん?
  こんな、報道陣や俺らまで集めてやることか?」


「でもでもっ!!
  これって、またカインさんに会えるってことぉ!?」


「愛華ちゃん………、まだ諦めてなかったんだね………。」





*  *  *  *  *  *  *  *  *  *




時を同じくして、社長のキャンピングカーの中ではーーー


「あの…、ミューズ様…?
  私も…またセツになる必要があるんですか…?」


「うん♪ダーリンからの命令よぉ♪
  でも今日は“京子”の面影も残すよう、
  セッちゃんにしては、かなりナチュラルメイクだけどね?」


「はぁ…。」


「はい、これで終わり~♪
  舞台挨拶が終わるまでは、蓮ちゃんの控え室にいてね。」


「……はい、分かりました。」





*  *  *  *  *  *  *  *  *  *




「皆様、本日はお集まり頂きまして、誠にありがとうこざいます。
  まずは、この映画の大ヒットにつきまして、
  監督の僕から厚く御礼申し上げます。

  それから報道陣の皆様には、事前にFAXさせて頂きました通り、
  この場をお借りして、
  B・J役カイン・ヒールの正体を明かさせて頂きます!」


出演者たちの並ぶ舞台上を、
役と同じ黒ずくめの格好で、のらりくらりと登場する大男。

監督の真横まで来ると、後ろ向きに立つ。

出演者たちも知らされていないため、会場全体がざわめく。


「それでは!
  B・J役、カイン・ヒールの正体!
  それは、、、」


監督の合図で蓮は振り返り、
衣装のフードを取り去る。

すると、一斉にパシャパシャッと、フラッシュが焚かれる。


「ーーーどうも。
  B・J役カイン・ヒールを二重に演じさせて頂きました、

  敦賀蓮ですーーー。」


監督からマイクを渡された蓮が自分で挨拶をすると、
会場内からはどよめきと歓声が沸き上がった。

何も知らされていなかった出演者たちからも、
驚きと歓声の混じった悲鳴が上がるーーー。


「この度、僕がこのような無茶な演出を試みたのは、
  この映画の大事な鍵である 死神B・Jを、
  敦賀くんである、という先入観なく観て頂きたかったからーーー。

  そして、敦賀くんの演技力を信じて、撮影中から映画公開後も、
  他の出演者やスタッフにさえ、一切カイン・ヒールの正体を明かさずに、
  今日のこの日を迎えました。

  きっと、今映画を見終わった皆様以上に、
  出演者の皆さんは、驚いていることと思います。

  ……皆さん、今日まで騙すような真似をして、申し訳なかったーーー。」


近衛監督は、出演者に向けて頭を下げた。
それと同時に蓮も頭を下げる。


「今日こうして、映画公開終了のご挨拶をさせて頂きました通り、
  B・J役が敦賀くんであるということを踏まえて、
  この映画を観ていただくことはもう出来ませんが・・・

  Blu-ray&DVDの発売日を通常より早く設定させて頂きました!
  今度は、是非ご自宅の映像にて、
  改めてお楽しみ頂ければと思います!!」


近衛監督は、自信たっぷりにふんっと鼻息を荒くして、しっかりと宣伝をした。


「本日は、誠にありがとうございました!!」


未だ興奮から冷めやらない出演者たちも併せて頭を下げ、舞台挨拶は終了した。




⇒ Intertwined love (17) へ続く


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書きたかったんですよー♪
トラマファミリーへのカインばれ!
これから面白くなりますよー(*≧∀≦*)
↑って、自分で言うなってww

それにしても…この長編・・・
パラレルというよりは、
私の中の壮大な続き妄想ですね…(* ̄∇ ̄)ノ