前回のお話はこちら
SS 二人だけの花火大会 (1)












ラブミー部の部室を出た二人。
途中で夕飯の材料の買い出しも済ませ、蓮のマンションへと到着する。

手際よく作られた夕飯を食べ終えてから、早速花火の準備に取り掛かる。


「花火ってどんなのですか?」


キョーコが尋ねると、これだよと持ってきたものは、
普通にコンビニなどでもよく見る手持ち花火の小さなセット。

打ち上げタイプのものもなく、二人でやり切れそうな量にキョーコはほっとした。


「ところで、花火の準備は、どうしたらいいのかな…?」


「………もしかして、敦賀さん、
  やったことないんですか?」


「あぁ、初めて…だね。」


蓮はキョーコの指示通りに、バルコニーに水を入れたバケツを一つ用意した。

キョーコが花火を袋から取り出して準備しているとーーー


「最上さん、ちょっといいかな……?」


蓮に呼ばれてリビングへ戻ると、そこに置かれていたのは、男女1着ずつの浴衣。


「えっ?………これはーーー?」


キョーコが驚いて言葉を詰まらせていると、


「実は、手持ち花火をもらったCMの撮影で使った俺の衣装と、
  その時に共演した女優さんが使わなかった、この浴衣まで貰っちゃって…
 
  良かったら、最上さん、着てくれない?」


「え?ーーーいいんですか……?」


「もちろん。

  この3点セットを貰った時から、
  最上さんと…って決めてたんだーーー」


「………///」


キョーコは素直に嬉しかった。
期待しちゃいけない……と心では思いつつも、頬の緩みは隠しきれていなかった。





ゲストルームで着替えを済ませたキョーコ。

照れくさそうにしながら、リビングへと出る。

リビングで着替えを済ませていた蓮は、キョーコを見てーーー


「良かった………。

  思った通り、最上さんによく似合ってるーーー。

  可愛いよ。」


白地にピンクや紫の大きな朝顔の花が咲いた、落ち着いた雰囲気の浴衣を着たキョーコ。

蓮からの賛辞に頬を染めながら、


「あ、ありがとうございます///」


(もぉ~っ///今日の敦賀さん、普通の人なら勘違いするようなことしすぎ……///)





準備万端でバルコニーへと出た二人。


「あ!ちょっと待ってください!」


キョーコは、パタパタとリビングに戻ると部屋の電気を消した。


「この方が、雰囲気出ますよ。」


ニコリと笑ったキョーコに、蓮も優しく微笑んだ。





勢いよく、真っ直ぐに白い光を放つ花火ーーー

バチバチと音を立てながら、横に広がり弾ける花火ーーー

赤や緑、色とりどりに変化していく花火ーーー



きゃあきゃあとハシャいだりーーー

じっと光を見つめたりーーー

そんなお互いの表情をたまに盗み見るように見つめる二人ーーー



今はまだ、その視線が重なり合うことはないけれどーーー

同じ空間で、同じ時間(トキ)を過ごしている喜びを感じていたーーー





最後に、広いバルコニーに設置された小さなベンチに並んで座って、線香花火を始めた二人。

10本ほど入っていた線香花火も、あっという間に終わりが近づく。

最後の2本になり、


「敦賀さん、勝負しましょう。」


キョーコの申し出で、競い始めた二人。

先に蓮の花火が散ってしまい、


「私の勝ちですね。」


ニコッとキョーコが微笑み、また視線を自分の花火へと戻す。



パチパチ……と小さな音で小さく弾ける線香花火を見つめるキョーコ。

淡い暖かな光に包まれるその横顔を、蓮は愛おしそうに見つめていたーーー。



徐々に小さくなる光の玉。


最後に、ポトン……と儚く落ちて、


「終わっちゃいました………ね?」


キョーコが顔を上げた、その瞬間ーーー




ーーーチュ………




ほんの一瞬だけ重なった口唇。

慌てて離れた蓮は、口許を押さえ、真っ赤になってしまった顔を背けた。


「ーーーごめん。」



驚いたキョーコ。


どうしてーーー?



「こんなことされたら………、

  勘違い………しますよ?」


「……っ!?勘違いなんかじゃーーー」


蓮が弁解をしようと、キョーコに向き直ったその時ーーー


キョーコは、蓮の頬を両手で挟み、
勢いよく口唇を重ねた。



「ーーーいつも、勘違いさせるようなことばかりする敦賀さんに、仕返し……ですっ///」


キョーコは、真っ赤な顔で可愛らしく蓮を睨み付けた。



驚いて目を丸くしたまま固まっている蓮を余所に、


「さっ!片付けしちゃいましょう!」


と立ち上がったキョーコの腕を、
蓮がぐいっと引き寄せる。


「俺の方こそ……勘違い、するよ?」


真剣な蓮の表情に、一瞬息をのんだキョーコ。


「し……して頂いて構いません……っ///」


否定しなかったキョーコを見て、
ニッと表情を変える蓮。


「ーーーきゃっ///」


そのままキョーコを抱き上げて、リビングへーーー。




⇒ SS 二人だけの花火大会 (3) へ続く


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