6日間を捕獲器の中で過ごしたのです。
保管環境は、各役所により変わりますが、ほとんどが専用の場所があるわけではなく、市役所の片隅に置かれます。
笛吹市では、基本的に捕獲器での保管。
固い鉄板の狭い捕獲器の中で、ゴハンを食べ、糞尿をし、そこに寝ます。
捕獲器の掃除の際、リードがつけられる犬はお散歩に連れて行ってもらえます。
そんな環境で、今回の事態が起きました。
老犬で、足元もおぼつかないラニ。
公示終了日。
私が会いに行った時、彼女は濡れていました。
何故、濡れていたのか。
それは、彼女に大量のウジが湧いていたから。
私に会わせる直前に、その事実に気が付いたとのことでした。
捕獲器の中で糞尿まみれになっていたラニ。
肛門付近についたウンチとたくさんのウジ。
肘にはいつから開いていたのかわからないという大きな穴とその穴の中をひしめき合うように動く大きなウジ。
時刻は夕方17時30分過ぎ…
保健所にもセンターにも搬入できる時間ではありません。
行政で対応するには、明日の朝まで待つしかないのです。
ウジはあっという間に育ちます。
まだまだ増えることでしょう。
朝まで待つことは、ラニの命に関わると思いました。
衰弱して動かないラニを前に、すでに手遅れかも…とも。
幸いにも、公示が17時30分で切れていたので、一般に引き渡すことが可能な状況でした。
急いで病院に電話をし、状況を説明。
診察時間ギリギリに滑り込みセーフ。
そこから一時間程…ウジと格闘しました。
写真は大方ウジ除去を終えたものです。
ラニが痛がって暴れるので、私は保定のため手が使えず、作業中の写真はありません。
肛門からお腹にかけてものすごい数でした。
バリカンでウジごと毛を刈り、取り除いていきます。
皮膚に残ったウジは、ピンセットで一匹ずつつまんで除去。
皮膚はウジによりえぐられ、化膿している箇所もありました。
陰部付近に隠れていたウジ達は逃げ場を求めて膣内にも侵入。
これはやっかいなことに…と先生の苦い表情。
しかし、ウジは酸素のない体内では生きられないため、必ず呼吸しに出てくる…先生はじっとその瞬間を待ち、ウジが頭を出した一瞬を逃さず捕まえてくださいました。
膣からは三匹。
一番酷かったのは、大きく穴の開いた左肘。
役所では、いつから穴が開いていたのかわからない…とのことでしたが、この穴はウジが開けた穴です。
ウジの唾液には、タンパク質を分解する力があり、皮膚を食い破るように穴を開けていくとのこと。
奥行き3cm程はあるこの穴の中から、呼吸のため定期的に大量のウジが頭を出します。
私は元々、虫も平気だし、グロテスクなものも比較的見慣れていますが…さすがにゔわぁぁ~と声が出ましたよ。
まさに虫唾が走る思い。
帰宅後。
できるかぎり毛を刈り、シャンプーをし、乾かしてからさらに毛を刈り…バリカンの刃がダメになり…綺麗に刈れなかったけど、とりあえずこれが限界。
トリミングしながら、数ミリサイズの小さなウジを除去。
その小さなウジでさえ、皮膚に小さな穴を開けながら、あちこちに潜んでいました。
おつかれ、ラニちゃん。
徹夜でトリミングを終え、迎えた朝
トリミングは、元気なコでも体力を消耗します。
衰弱していたラニには、つらい作業だったでしょう…
よく耐えました。
あとはゴハンをたくさん食べて回復しようね
痴呆からか、右旋回をし続けるラニ。
ラニが付けていた首輪。
不自然に壊れたナスカン。
マカリイにも、全く同じ状態の首輪とナスカンが付いていました。
徹夜でウジ退治をしたものの、ラニの食欲が上がらず…
自力で食べる気はないようなので、流動食を強制給仕。
しかし、口周りに当たるものに手あたり次第噛みついて放さないので、注入するのも一苦労。
容器はすぐにボロボロ。
食べないと、皮膚も治らないよ!
その後、強制給仕を3日ほど続け、4日目に突如食欲が出て来ました
それはもう驚くほどガツガツと…
自力で完食
食べながら寝ちゃうラニ
ここからラニの幸せへの快進撃が始まります
現在、ラニちゃんは新しい家族のもとで、夢いっぱいの生活を始めています
ご心配頂いていた皆様、ご報告が遅くなり申し訳ありません
詳細はまた改めて別記事にて
今回の件で、行政の公示期間中の保護動物の保管場所・管理状況に関しては、すでに改善をお願いしております。
これまで、保管時にウジが湧くような事態はなく、今回初めてのことで職員の方々も対応の仕方がわからないという状況でした。
水をかけたのは、汚れていた部分を洗い流してあげようとしたからです。
ちなみに、行政の保管場所では、お湯はありません。
水をかけたのは、その時に職員さんにできる最善との判断からでした。
しかし、ウジやハエの卵は洗い流しても取れません。
ひたすら取るしかないのです。
そのことも含め、職員の方々に対処法を周知して頂き、尚且つ、今後このような事態が起きないよう対策をお願いしました。
保管場所や使えるものなど、役所での保管ではかなり限られています。
その限られた場所と物の中で、職員の方々が日々奮闘してくださっていることをお忘れなきようお願いいたします。
保護される犬猫達に辛い思いをさせているのは、遺棄した元飼い主や、迷子にさせてしまった飼い主です。
万一、迷子にさせてしまった場合には、早急に市役所、保健所、警察署それぞれに連絡をお願いいたします。