羽生選手のファンであるユリアさんがNHK杯でのバラード1番について書いたものを翻訳させてもらいました。

「善良なるフィギュアスケート」より
http://www.sports.ru/tribuna/blogs/dobroefk/864397.html
上のリンク先からジャンプやステップの動画(Gifファイル)が見られます。このブログでは写真にしてあります。



NHK杯  忘れられないショパンのバラード


「羽生-彼は山から流れ出でる川のようだ。何度見ても見飽きることはない。」ボイチュク。
(注釈:アレクサンドル・ボイチュクさんはかつてアイスダンスのフィギュアスケーターで、今はロシアのユーロスポーツでコメンテーターの仕事をしているそうです。羽生選手をとても好きで、彼に魅了されているんだそうです。)



「結弦は、おそらく、理想的なスケーターである。何といっても、ジャンプができるし、スケーティングは上手いし、表現力が豊かである。リンクの上にこの日本人が登場する時に受ける感動は、彼がコンディションが良く気持ちものっているなら、生まれつきとても美しく魅惑的な人が周囲の人々にどんな反響を呼ぶかということを思い出すと理解が早いだろう。
このような人が部屋に入って来たり、仲間に加わったりすると、皆が彼だけを見つめるだろう。」 
エカテリーナ・クリニチェヴァ

 

 先週末、日本でのグランプリシリーズで羽生結弦は輝かしい勝利をおさめ、ショートプログラム、フリープログラム、両方のプログラムの合計で記録的な高い点数を獲得した。
この試合で彼は初めてショートプログラムの新しいバージョンを滑った。
すでに夏にショートプログラムを残すことに言及しながら、結弦はバラードは技術的にもコンポーネントの面でも大きな可能性をもったプログラムであり、「ピアノの音楽は細かいところへの配慮や表現の正確さや繊細さを必要とする。」と言った。

結弦はグランプリシリーズのスケート・カナダの後、ショートプログラムを難しくする決断をし、すぐさま練習と思い立ったことの実現に取り組んだ。
プログラムの形はほとんど完全に変わった。

プログラムの中で2つ目の4回転ジャンプを加え、ジャンプの部分を難しくしただけではなく、つなぎのエレメントも(ジャンプへの入り方、出方を含め)難しくした。

以前のショートプログラムから残ったのは初めと終わり、ステップシークエンス、そして素晴らしいショパンの音楽だけである。今のバージョンでのバラードは-完全に新しいプログラムである。
結弦は「自分の滑りの違う面に」真剣に取り組んだ。
粘り強い練習はNHK杯での驚くべき演技を可能にした。

「いつかは4回転2回をSPに入れないと勝てないと思いました。自分のプログラムの中では4回転を2回入れてしっかり加点をもらえる入り方、下り方をして、その上でステップ・スピン・表現力、いろんなところで全神経を使いながら滑りきる、それが確実に平昌五輪までに必要になってくるし、現五輪王者として、そこは連覇するためにも圧倒的に強くならないと、と思っています。」羽生結弦

羽生のコーチ、ブライアン・オーサーは将来ショートプログラムに2つの4回転を入れる考えに同意しながらも、この決断に驚かされた。
「私は結弦のこのような演技を待ちわびていた。やっとそれが起きた。私の考える変更点は保守的だったが、彼は野心的だった。ショートプログラムに4回転を2つ入れることが世界トップレベルの新基準だ。」

「スケートカナダでのショートプログラムは私達の自尊心を傷つけたが、同時に結弦をより強くした。」(ブライアン・オーサー)

プログラムの始まりと演技開始前のポーズ。
プログラムに調子を整え、滑る前の緊張を払いのける新しいジェスチャーが現れた。

 


プログラムは動きを伴ったlobe(片足で滑る)と一連のステップで始まる。:
クロスオーバー、モホークRBO-LFO、スネークLFI、ブラケットLFI-LBO、クロスLBO(RBI)、モホークRBI-LFI、スリーターンLFO-LBI、スリーターンRBO-RFI、モホークRFI-LBI、2つのクロスオーバー、右足で後ろにローブ、クロスRBI(LBO)、ロッカーRBI-RFI、カウンターRFI-LBI、左足に移行、スリーターンLFO-LBI,スリーターンRBO-RFI、モホークRFI-LBI。


さらに結弦は内側のスプレッドイーグルで立ち、4回転サルコーへの入りを始める:
イーグルRFI-LBI‐スリーターンRBO-RFI‐モホークRFI-LBI‐4回転サルコー‐外側へのイーグルLFO-RBO、内側イーグルへ移行するLFI-RBI。

 
ジャンプの肯定的特徴:
難しい入り、ジャンプ直前にはっきりと識別出来るステップ、十分な高さと長さ、普通でない(難しい)出方、音楽構成に合っている。肯定的基準の合計+2

GOEの低下:激しい着氷-1

プロトコルのGOE合計+1

ジャンプの後すぐにスケーターはステップのつなぎを行う:
クロスRBI(LBO)、ループRBI、ループLFO、音楽的アクセントでのポーズ、スリーターンRBO-RFO、スリーターンRFO-RBI、ループRBI、スリーターンLFO-LBI、シャッセ、2つのクロスオーバー、モホークRBI-LFI、ホップ、モホークRBI-LFI、フェイントステップ(スリーターンLFO-LBI、フリーの右足へ突き(片足を前に踏み出して重心をのせる)、左軸足への突き、クロスオーバー)


さらにコンビネーション4T-3Tへの入りが始まる:
後ろへのクロスロールRBO-LBO、チョクトーLBO-RFI、モホークRBI-LFI、シャッセ、スリーターンLFO-LBI-4T+3T。コンビネーション前のステップはプログラムのレイアウトによく描かれていて、音楽的アクセントに合っている。

 


コンビネーションの肯定的特徴:
難しい入り方、ジャンプ直前にはっきりと識別できるステップ、十分な高さと長さ、入るところから出るところまでの十分な滑らかさ、目に見える努力なしですべてのエレメントを実行している、音楽構成に合っている。肯定的基準合計+3

GOEの低下:なし

プロトコルでのGOE合計は+2.57

コンビネーションから出た後、モホークRBI-LFIとホップ。さらに動きの方向転換を伴う2つのホップ、スリーターンRFI-RBO(出る時のローブはとても美しいポーズ)、モホークRBO-LFOとバタフライの後にキャメルスピンFCSp4への入り。

難しさの特徴:
難しい入り方(バタフライ)、キャメルスピンの難しい変形(上へのキャメルスピン)、足を掴んだキャメルスピンの難しい変形(“ドーナツ”)、体勢を変えずに8回転。

レベル4のスピン

キャメルスピンの肯定的特徴:スピンの時の十分なスピード又は加速、すべての体勢でバランスの良さ、求められている以上の回転数(“ドーナツ“で10回転)、音楽構成に合っている(特に腕の幻想的な動き)。肯定的基準合計+2。

GOE低下:なし

プロトコルでのGOE合計 +1.07




プログラム後半が始まる。
クロスステップ、スリーターン
RBO-RFI、モホークRFI-LBI、クロスステップ、モホークLBO-RFO、シャッセ、モホークLFI-RBI、二つのクロスオーバー、スリーターンLBO-LFI、モホークLFI-RBI。さらにスケーターはイナバウアーをし、そこからトリプルアクセルへの入りが始まる。
スリーターン
LFO-LBI‐クロスス-シャッセ-カウンターLBO-LFO-3A-スネークRBO-RBIで出て、カウンターRBIRFIとスリーターンRFIRBO(複雑な)。


 


ジャンプの肯定的特徴:
難しい入り、ジャンプ直前にはっきりと識別できるステップ、十分な高さと長さ、普通でない(難しい)出方、目に見える努力なしですべてのエレメントを行っている、音楽構成に合っている。肯定的基準合計+3。

GOEの低下:なし。

プロトコルでのGOE合計は2.43


さらにすぐに足換えを伴うシットスピンを行っている-CSSp4.

難しさの特徴:
シットスピンの難しい変形(足を前に)、シットスピンの難しい変形(足を脇に)、片足への難しい体勢変化、明らかなスピードの加速、シットスピンの難しい変形(足を後ろに)。

スピンの結果 レベル4


シットスピンの肯定的特徴:
回転時の十分なスピード又は加速。軸がぶれずに回転する十分な能力、すべての体勢でバランスが保たれている事、普通でなく独創的である(すべての回転の間にアクセントがつけられた腕の動き)、スピンのすべての段階での十分なコントロール、音楽構成に合っている。肯定的基準合計+2/+3。

プロトコルでのGOE合計+1.21


スピンの後-クロスステップ、チョクトーRFI-LBO、クロス、モホークRBI-LFI、スリーターンLFO-LBI、2つのツイズルRFOと音楽的アクセントでの停止。

難しい回転:

時計回りに‐ループRBI、ロッカーRBI-RFI、カウンターRFI-RBI、ロッカーRBI-RFI、ブラケットターンLFO-LBI,ツイズルLFI

反時時計周りに‐2つのツイズルRBI、ロッカーRFI-RBI、ロッカーLFO-LBO、カウンターLBO-LFO、3つのツイズルRFI、カウンターLBO-LFO、ループLFO.

難しいステップ:
チョクトーLFI-RBO(反時計回りに)、2つのチョクトーRFI-LBO(時計回りに)

他のステップと回転:
時計周りに-スリーターンLFI-LBO、モホークRFO-LBO、RFO-LBO:

反時計回りに‐モホークRFI-LBI、スリーターンLBI-LFO、モホークRFI-LBI。

その他:
時計回りに3つのホップ、反時計回りに2つのホップ、2つのクロスステップ、4つの突き(片足に重心をのせる)。

難しさの基準(レベル4のためにはすべての特徴を備えていなければならない)

1) 16の複雑な(難しい)回転と3つの複雑なステップ(最低限11の難しい回転とステップが必要で、それぞれのタイプは2回以内、5つのタイプは両方向で行われなければならない)。

2) 体の完全な回転を伴う(たとえそれぞれの回転方向で円の1/3であっても)両方向での回転(時計回りと反時計回り)。

3) 少なくとも円の1/3の間、体の動きが使われている。

4) 3つの複雑な回転から3つの異なる組合せ実行されている。(ステップシークエンスのレベル4のためには異なる足での2回の組合せで足りる)。すべての組合せはステップの時にはっきりとしたリズムで行われている。

 

3つの複雑な回転からなる組合せ

ロッカーRB-RFI-カウンターRFI-RBI-ロッカーRBO-RFI(右足で)

 

ロッカーLFOLBO‐カウンターLBOLFO‐ブラケットLFO-LBI(左足で)

  




ツイズル
LFI‐カウンターLBOLFO‐ループLFO(左足で)

 


3つの複雑な回転のコンビネーションの略図
 

ステップの肯定的基準:
十分なエネルギーと実行、ステップの時の十分なスピード又は加速、ステップの時に両方向のステップを行っている、丁寧なステップでの良いコントロールと体全体を使っている事、目に見える努力なしでエレメントを行っている、音楽構成に合っている。肯定的基準合計+3。

 

ステップの後すぐにスケーターはスリーターンRFI-RBOの後に最後のスピンのコンビネーションCCoSp3Sp4を行っている。

 

スピンの難しさの特徴:キャメルスピンの難しい変形(脇に)、立ちながら体勢の難しい変形(胴体を前にかがめて)、シットスピンの難しい変形(足を前に)、一つの足で難しい体勢変換。

 

肯定的基準:回転時の十分なスピード又は加速、スピンの軸が十分に保たれている、すべての体勢でバランスが保たれている、普通でなく独創的である(腕の動き)、スピンのすべての段階で良いコントロールがされている、エレメントが音楽構成に合っている。肯定的基準の合計 +2/+3

プロトコルでのGOE合計1.21

このスピンはプログラムの中に終止符を置いている。
回転時最後の体勢で上に向けられたスケーターの腕の動きは完全に音楽的アクセントに合っている。


プログラムはスケーティングスキルのすべての基準を伴っている。
羽生は広く場所を使った、振れ幅の大きい、軽々とした、スピードのある、多面的の、片足での、エッジの効いた滑りと傑出した滑走を披露した。

 

プログラムで使われているつなぎTRは多様性がある。
ステップと回転以外にフィギュアスケートのエレメントが使われている。:
イナバウアー、突き(片足に重心をのせる)、イーグル、ホップ。ステップと回転の事項は絶え間ない方向転換とコンポーネントTRの“難しさ”と“複雑さ”の基準を伴った、体の動きを伴っている。
エレメントへの短い準備、同窓的で複雑な入りと出は完全に“質”の基準を伴っていて、TRとSSの点数に反映されている。

すべてのエレメントとステップは振り付けの一部分であり、プログラムの構成に素晴らしく描かれている。振り付けは“スケートの見せ場“に優れていて、ここでは腕の胴体の働きがすばらしく振り付けされている。すべてのエレメントは違う大きさでリンクの面積に割り当てられ(最大限にリンクを使っている)、プログラムの構成に描かれている。

プログラムの音楽にリズムとテンポの変化が使われており、それはスケーターの動きによって使われている。
すべての振り付けのアクセントは完全に音楽的アクセントを合っている。結弦はプログラム全体を通して音楽の驚くべき感情表現している。

クラシック音楽は、結弦自身の言葉によると、深い解釈を必要とする。
スケーターは音楽のスタイルを表さなくてはいけないだけでなく、すべてのアクセントを伝え配置しなくてはいけならず、一つの音も一つの音楽的フレーズをも失ってはならない。
自身のショートプログラムで羽生はこの課題をすばらしく乗り越えた。
内容の複雑化とエレメントの新しい配置はプログラムにより多くのつやを与え、ミスなく素晴らしくエレメントを行ったことは印象を強くした。


プログラムの最後での驚くべきまなざしと腕を使ったこのように雄弁なジェスチャー。

  

羽生結弦はここで立ち止まろうとは思っていない。


ショートプログラム後半での4Т-3Тのコンビネーションとフリープログラムでの4Loについてはどうなるだろう?)
 

でもこれはもう他の歴史になるけれど。)

 
尊敬を込めて。ユリヤ。
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ユリアさんの記事をブログで紹介させてくださいというやりとりしたところ、ユリヤさんから
「ロシアのファンを代表して、日本にいる結弦のファンの人達に素晴らしい勝利おめでとうと祝福したい。」
とのことでした。


それから、訳文の訂正です。
「NHK杯 ショートを終えて」
http://ameblo.jp/ru-skate-memo/entry-12100425675.html
ユリアさんのバラード1のステップの説明の中で「素晴らしいステップ」と訳してしまいましたが、間違えで、
正しくは「交差するステップ」=「クロス」でした。
スペルを見間違えて違う言葉と勘違いしてました。
変だな、とは思ったんですが・・・確かに素晴らしいステップではありますが
 
他にも間違えがあるかもしれません。見つけたら教えてください。

さっきは「ブラケット」を「ブランケット」と書いていることに気がつきました。