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暁しぐれ

自由気ままに書き綴っていきます。
ですが、基本的には今まで読んできた小説の感想などが多いです。

最後の証人
著・柚月 裕子  レーベル・宝島社文庫

【あらすじ】
 元検察官の佐方貞人は刑事事件専門の敏腕弁護士。犯罪の背後にある動機を重視し、罪をまっとうに裁かせることが、彼の弁護スタンスだ。そんな彼の許に舞い込んだのは、状況証拠、物的証拠共に被告人有罪を示す殺人事件の弁護だった。果たして佐方は、無実を主張する依頼人を救えるのか。感動を呼ぶ圧倒的人間ドラマとトリッキーなミステリー的興趣が、見事に融合した傑作法廷サスペンス。

【感想・内容】
 読み終わったときに感じたのは、こんなにワクワクしたの久しぶりというのでした。ミステリ小説では裏切られる時は、すっごく裏切られる。その感覚がミステリ小説の醍醐味というか楽しみなんだと思います。
 プロローグは、殺人事件の殺人がまさに起こるところで終わって、物語に入っていくんですけど、物語の中心は公判の様子とかとある家族の話が出てきます。実は、このとある家族の話がこの小説のキーとなっていて、そこから裁判の内容が見えてきます。
 家族の話では、医師の人の目線で話が進んでいきます。のちに奥さんになる女性との出会いや、自分の子供のこと、子供が事故に遭った時のことや、その後の生活、周りのことなどが出てきます。僕自身は、周りに事故に遭った人がいなかったので、遺族の悲しみって想像するしかないんですけど、子供を事故で亡くすってやるせないっていうかなんというかって感じだと思うんです。ただ、目撃者の証言だと運転手が赤信号で飛び出してきて、車から降りてきたときにすごいお酒の匂いがしたのに、罪に問われなかったそうな。親的にはめっさ納得いかないと思う。僕もなんでって思うから。その理由は小説の中にちゃんと出てるけど、それってどう名乗って思いました。
 この小説で、裁判をしている事件は交通事故の件ではなく殺人事件なので、どうして交通事故が関係あるのって思うかもしれませんが読めばわかります。
C.S.T. 情報通信保安庁警備部‹2›
著・十三 湊  レーベル・メディアワークス文庫
【あらすじ】
 ‹神の記憶›とは!?スリル満点の捜査ドラマ
 脳とコンピュータを接続するブレイン・マシン・インターフェイス、通称BMIが一般化している近未来。
 情報通信保安庁を激しく揺り動かした‹AetΩ›事件からしばらくのち。警備部の御崎は、小さな事件を担当していた。一人の女子大生が、陰湿なネットストーカー被害を受けているという。犯人を追ううちに、未来を見通せると主張する謎の新興宗教団体に突き当たることになる――。
 第20回電撃小説大賞‹メディアワークス文庫賞›受賞作の続編、ついに登場!


【感想・内容】
 前回紹介した小説の第2巻です。今回は、なぜかネットストーカー事件から始まります。現代でもよくあるストーカーメールとか、盗撮写真とか、色々嫌がらせというか送られていていたという女子大生。小説の中でも、どういったメールがきていたのか載ってるんですけど、正直気持ち悪いと思いましたね。実際に被害に遭っている女性にこんなメール送られてくるのかなとも思ったし、やっぱり送ってくる人の考えっていうかそういうのが良く分からないのが本音です。
 
 そんなネットストーカーの事件を追っていた主人公・御崎蒼司は、無事に何事もなく、犯人を捕まえることになったのですが、犯人からどうやって彼女に送った写真を入手したのかを聞くと、とある宗教団体にある‹神の記憶›を見せてもらったのだと。
 また、職場の野球サークルに所属をしている御崎は、マネージャーである和泉莉子からストーカーの犯人がいっていた宗教団体の勧誘をされる。和泉は、入信をしているわけではなく、色々な知識を勉強するのは悪いことではないという考えから、そこの講義を受けているらしい。
 ‹神の記憶›がどういったものなのか、ストーカー事件の犯人の供述からどういった団体なのか調べることになった御崎は浅井と共に、その宗教団体に出入りをしている和泉を通して探りを入れる。

 一方、‹AetΩ›事件の犯人であった小塚の形跡を辿るため、小塚の過去を追っていた伊江村織衣は小塚の父親がいる施設へ訪れる。そこで小塚の父親が見ていた映像を≪ビーンズ≫を介してみた伊江村は驚く。それは小塚が体験した虐待の映像だった。その強烈な映像に伊江村は倒れてしまう。倒れた伊江村が意識を取り戻したのは夕方近くになってから。施設の医務室へ連れてこられていた伊江村は、そこの窓から見える建物について質問する。職員は‹神の記憶›集める宗教団体の建物だと答えたのだった。

 ま、おおよそ上記のような内容になります(笑)今回は浅井君の大活躍が見られるお話でもあるんですよね。そこが見どころでもあるので、楽しみにして頂けるといいのではないかと。
 そもそもですね。‹神の記憶›って何なんだろうって思う。世界中に人のすべての記憶のことらしいですけど。そういうことっていいことなのかな?とも考えながら読んでました。個人の記憶っていうのはプライバシーにも関わってくると思うんですよ。今はインターネット上でも色々なものが出てきていますけど。SNSでも使い方を間違えれば、大きな事件を生むというのは現代の色々な事件を通して感じてはいます。便利になるのは良いけどね。個人情報のことも。僕らはもっとネットというものに関して勉強をしていかなくてはいけないなと感じています。そういう個人的な意見は置いておいて。
 今回は御崎と伊江村の関係も少しだけ進展していきます。個人的には山上さんって可哀想だなって思った。責任感も強いし、すっごく姉御肌だから良い人に巡り会えると良いなと思ったりもします。浅井は相変わらずと言いますか、マイペースなんですけど、暗号の解析とか色々と活躍する場面も出てくるので、浅井って凄いなぁと思いましたよ。

 ここの登場人物は個性があってとても面白い。特に御崎の同期たちの絡みが大好きで。また、続きが気になる。

C.S.T. 情報通信保安庁警備部
著・十三 湊  レーベル・メディアワークス文庫

【あらすじ】
サイバー犯罪と戦う捜査官たちの活躍と恋模様
 脳とコンピュータを接続する≪BIM≫が世界でも一般化している近未来。海外から苛烈なサイバー攻撃にさらされた日本政府では、サイバー空間での治安確保を目的に「情報通信保安庁警備部」を設立する。
 だが、それを嘲笑うかのようにコンピューター・ウイルスによる無差別大量殺人が発生。家族に被害者を出した情報通信保安庁警備部・御崎蒼司は必死に犯人を追う一方で、美しい同僚・伊江村織衣身の安否も気遣うのだった――。
 スリリングな捜査ドラマと、不器用な恋愛模様が交錯する、超エンタテインメント作品!

【感想・内容】
 今回の小説は、近未来の日本が舞台で、ほとんど感覚的なものも現代と変わらない雰囲気の世界観ですね。ただ、一つ違うのはIT関係が発達した時代だということですね。ある時、海外からのサイバー攻撃にさらされた後に設立された、「情報通信保安庁警備部」が舞台になるんですけど。主人公は、見た目がチンピラの御崎蒼司。所属は第一部隊第五班の班長。
 物語の始まりは、とある現場。アイドルグループのイベントで爆発予告が出たために、駆り出されたところ。そういうのって警察の役目じゃないの?って思うんですけど、そこは小説の中に説明があります。そのイベント中に観客たちが急に暴れだし、現場は怪我人が出るほどに。暴れた観客は正気を保っているとは言い難い様子で、何か原因があったのでは?と思うようになる。その事件を境に≪ビーンズ≫が原因と思われる事件が発生する。犯人の目的とその方法を探る中、同期で唯一の部隊長である伊江村織衣が何やら独自に調べ物をしているようで。。。っていうような内容になってます。

 先ほど≪ビーンズ≫という単語が出てきましたが、これが脳とコンピュータを繋ぐ機械の名称になります。この≪ビーンズ≫がなかなか便利な機能を持った機械で、通話ももちろん可能なのですが、通話の方法が声を出すのではなく思えばいいと言いますか、声に出さなくても会話が出来るんです。また、≪ビーンズ≫を介して、直接ネットワークに繋ぐこともできるという。これなら、スマホやPCを使わなくても大半の人は大丈夫な感じですよね。本当にこんな世界がきたら便利だなと思う反面、来ない方が色々と良いんだろうなとも思います。

 この小説はネットワークの危険性をまた新たに提示しているような気もしますが、ちゃんと恋愛模様も描かれているところも面白いところだと思います。また、主人公である御崎蒼司の周りにいる人たちがユニークで(笑)個人的には同期の浅井と山上がお気に入りです。浅井みたいな同僚がいたら大変だろうなと思いますが、浅井みたいにやれたらどんなに楽しいのかなとも思ったり。