大小 谷川俊太郎

小さな戦争やむをえぬ
大きな戦争防ぐため

小さな不自由やむをえぬ
大きな自由守るため

一人死ぬのはやむをえぬ
千人死ぬのを防ぐため

千人死ぬのもやむをえぬ
ひとつの国を守るため

大は小をかねるとさ
量は質をかねるとさ


これが、世の常。
Mr.Childrenだって「例えば誰か一人の命と引き換えに世界を救えるとして」と歌詞を書くくらいだから、無意識にそういった感覚を持っている我々なのだろう。

この詩の最後は「~とさ」「~とさ」と、なんだかみんなそんなこと言ってるよ。そんな第三者的な締め方をしています。
そこに、谷川さんの本人はいないような。どこか読むものに委ねているような。

でも、このように詩を書いたということは、この大小を暗に否定する気持ちを持っているのか。


昨日、今年の8月16日(終戦記念日翌日)に放送された谷川さんを特集した情熱大陸を見ていました。
その中で、谷川さんはこう言いました。

「戦争は絶対なくならないと確信するようになりました。」
「今、すごく偽善的な生き方が流行っている。」

戦争はなくならない。そういった現実を深く理解した上で、その中で戦争をなくすためにはどうすればいいか考えなければ変わらないと言いました。

この思いを聞いたのち、この詩を読むと読み方が変わります。
この大は小をかねることを否定したいわけではなくて、それは事実であり、それは避けられないことであることを示し、それを踏まえた上で読者に委ねているのかなと。


戦争に行きたくない。
戦争は悪でしかない。


そう思っていない人などいないはずだけど、なくならない。
それが、なぜなのか。悪であるそのものを越えるほどの何かが、そこにはあるのか。なぜそれは生まれるのか。
それを考えることが我々の使命なのかもしれません。


自分の思いを言葉にし伝えることは難しいことではありますが、とても大事なことだと思います。
何もしなければ何も変わらない。

ただ、その思いを主観的な視野の狭いもので終わらせるのではなく、より広い視野をもち、いろいろな事実、考えを踏まえた上で発信していくことはもっと大切なことだと思います。

偽善的な意見だと一蹴させないためにも。