自分のことって、わかっているようでわかっていないかもしれない…小学3年生のよしだけんたくんがおてつだいロボットに自分のことを教えるため、あらためて自分のことを考える。そんな「哲学」している絵本を紹介します。もう、これがおもしろいのなんのって。わたしは図書館で読んで、即座に購入してしまいました。
ぼくのニセモノをつくるには/ブロンズ新社

2014年9月発行

宿題、お手伝い、部屋の掃除。やりたくないことだらけでゲンナリしていたぼくは、いいことを思いつきます。
「ぼくのニセモノを つくって そいつに ぜんぶ やってもらおう!」

そして、いちばん安いおてつだいロボットを買いに行きます。ちょっと近未来の世界ですね。
このロボット、自分で歩きますし話もします。「にせもの作品」について聞き「じゃあ、あなたのことくわしくおしえてください!」と手帳とペンを手にしています。何から教えればいいかなーとちょっと考えるぼくに、じゃあ、「ぼくは○○」ってかんじで、いってみましょうかと提案します。
出てきたのは、こんなかんじ。ハイ、ここでぼくが6月17日生まれ、アップル小学校3年生のよしだけんたくんだとわかるんです。

ぼくはなまえとかぞくがある
ぼくはすきなものと きらいなものがある
ぼくはできることと できないことがある
ぼくはむかしからぼく
ぼくはおとうさんとおかあさんの子ども
ぼくはあとがのこる
ぼくはマシーンでもある
ぼくはまだつくりとちゅう
ぼくはコロコロかわる
ぼくはたぶん人気者
ぼくはいろんな居場所がある
ぼくはぼくしかしらないことがある
ぼくはひとりしかいない

プロフィールを知っただけではまだ「けんたくんらしさ」がわかんないですねと食い下がるロボ。けんたくんは「じぶんのことを はなすのって むずかしくて めんどくさい」と思いつつ、考えます。
できること できないこと、このひとつひとつが笑えます。ぼくが使ったり作ったりしたものの痕跡、つまり「ぼくはあとがのこる」っていうのもあぁ、わかる…うんうん、うちの子もそうだわ!と笑ったあとにふと思うのは「じゃあ、わたしは?」…自分じゃ気づいていないこと、ありそうですね。

自分から自分を見るだけではなく、みんなからみた けんたくんはどんなかんじかと、ロボはさらに食い下がります。
まわりの人の頭の中にも、ぼくはひとりずついる。…たしかに。人の頭の中にいる自分っていうのは、自分ではどうにもできないんですよね。だから「自分が他人にどう思われているのか」って思い悩んでもあんまり意味はない(ってのがわたしの持論です)。

けんたくんは考えていくうちに、自分の内側には自分しか入れない、ぼくだけの世界がもうひとつある。これってスゴイことだ、と気づきます。

最後に、おばあちゃんの言っていたことをけんたくんは思い出します。すなわち─
にんげんは ひとりひとり かたちのちがう 木のようなものらしい。(中略)
木の おおきさとかは どうでもよくて
じぶんの木を 気にいってるかどうかが
いちばん だいじらしい。

さて、ロボは「けんたくんのニセモノ」になれるのでしょうか?

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自分のニセモノを作るために、自分のことを説明する。そのために考える。あらためて知ったり、気づいたりすることがある。設定がユニークです。これは「発想えほん」と書かれていますが、「哲学」なんてことばはどこにもない。けれど、まさにこれぞ哲学!

ヨシタケシンスケさんのイラストはそこはかとなく可笑しくてなんとも和みます。

アップ特に好きなのはできないことにリストアップされた「よる12じまでおきている」
まったくもー起きてなくていいじゃない!宿題終わってない?いつまでも遊んでるからでしょ!…なぁんて、つっこみたくなります。

これまでにご案内した本にもヨシタケシンスケさんのイラストがありますよ。
右矢印病気の全体像を知る参考書★『トリセツ・ヤマイ ~ヤマイ世界を俯瞰する』
右矢印強い父親だけが子育てができる。農学博士が教えるオスの育児★『身近な生きものの子育て奮闘記』

2014年12月5日~14日にはヨシタケシンスケ絵本原画展が開催されるそうです。

  本    本    本    本    本

余談になりますが、この絵本を紹介するのにブログのテーマは何にしよう?と悩みました。「自分」とかないしな~うーん、というのでとりあえずけんたくんに敬意を表して?「子ども」にしてみました。
子どもが読むのも、親子で読むのも、もちろんたのしいのですが、おとなが自分ひとりでじっくり読んで考えてみる、というのも最高に有意義な時間になることでしょう。

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