大丸心斎橋店本館は、第１期１９２２（大正一一）年４月、第２期１９２５（大正一四）年９月完成の心斎橋筋側、第３期１９３２（昭和七）年７月、第４期１９３３年（昭和八）年５月８日完成の御堂筋側の４期に分けた建設によって完成したアメリカンゴシック建築です。設計者はアメリカ人建築家、ウイリアム・メレル・ヴォーリズです。日本で最初にメンソレータムを販売したことで知られる人物ですが、関西学院大学や神戸女学院、山の上ホテルなど、関西を中心に１６００を超える建築を遺しました。
大丸心斎橋店の御堂筋側の外観は、御堂筋の拡張工事と大阪市高速鉄道第１号線（現大阪市営地下鉄御堂筋線） の完成に合わせて建設された御堂筋側の建物。地下２階で地下鉄心斎橋駅と連絡し、地上では御堂筋に向かって高さ百尺のネオゴシックスタイルの大百貨店が完成しました。
白い花崗岩を用いた基壇部（グランドフロア）、渋いスクラッチタイルを用いた胴部、テラコッタを用いた最上階（アティック）を使い分けた３層構造で、飾りは少なく、極力派手さを抑えて造られています。
一見地味な外観ですが、細部に目をやると繊細な飾りが施されていることがわかります。
幾何学模様や植物を抽象化した図柄を基調としたアールデコの装飾や動物たちの彫刻です。
御堂筋側正面玄関にも動物が隠れています。
大丸の社章の両サイドに見られる「イソップ寓話」をモチーフにしたと思われる「ウサギとカメ」。ヴォーリズ建築における「ウサギとカメ」は、滋賀県の豊郷小学校のものが有名ですね。
ドアを潜った風除室にも同じ装飾がみられます。
風除室の天井も幾何学模様の装飾で彩られています。
御堂筋側玄関の上部には、雪の結晶を積み上げたような装飾がみられます。
ゴシック様式だとふつうはアーチ状に積み上げますが、あえて直線的に積み上げ、モダンなイメージを強調しています。
御堂筋北玄関がある北西角の塔は、エンパイアステートビルをイメージして設計したともいわれています。
それは水晶六角柱のようにも見えます。
内部は北エレベーターと階段室（いずれもＢ１～６Ｆ）になっており、一般の利用および通行も可能です。
１Ｆエレベーターホールでは、照明などに完成当時の雰囲気を感じることができます。
エレベーターを廻る階段室の窓や天井飾り、照明器具なども完成当時のままだと思われます。
ここは売場外のような場所ですので人の通行は皆無です。その存在自体をご存知ない方が多いのではないでしょうか。なお、一番下の照明器具は２０００年末に撮影したものですので、現存するかどうかは未確認です。
◇データー（2011年度）
大丸 大阪心斎橋店
大阪市中央区心斎橋筋1-7-1
TE06-6271-1231
営業時間＝10時～20時（本館地2F～4F・北館地2F～6Fは10時～20時30分、本館8F・屋上・北館13Fレストランフロアは11時～22時、南館地1Fは10時～21時）
売場＝本館B2～8F・RF、北館B2～14F・RF、南館B1～8F・RF
売場面積＝77,490平方メートル
年商＝893.44億円
16/221（11年度百貨店店舗別売上ランキング）
※参考資料（1999年度）
売場面積＝37,490平方メートル
年商＝967.02億円
18/1000（99年度大型店舗ランキング）
参考文献
『大丸二百五拾年史』 大丸二百五十年史編集委員会 編 株式会社大丸 発行
『ヴォーリズの建築』 山形政昭 著 創元社 発行
『モダン心斎橋コレクション メトロポリスの時代と記憶』 橋詰節也 著 国書刊行会 発行
『ヴォーリズ建築の１００年』 山形政昭 監修 創元社 発行
特別展『煉瓦のまち タイルのまち―近代建築と都市の風景―』図録 大阪歴史博物館 編集・発行
『日経MJトレンド情報源2013』 日経MJ（流通新聞）編 日本経済新聞出版社 発行
『流通経済の手引き2001』日経流通新聞）編 日本経済新聞出版社 発行
「月刊ストアーズレポート 2012年6月号」 ストアーズ社 発行
「月刊ストアーズレポート 2000年5月号」 ストアーズ社 発行