だからお酒は面白い。 | 燗酒好きのカピバラさんの日常

燗酒好きのカピバラさんの日常

福島県二本松と本宮の葬儀屋さんの隣でで酒屋をやっています。お酒の事、日常の気づき、趣味の読書の事など書いています。blogを見てお酒に興味を持って貰えたら嬉しいです。

年末から年始にかけて、改めてお酒の面白さを実感しました。

今では常識になってしまったことを疑うことで、新しい楽しみ方が生まれるのですね。
 
あけましておめでとうございます。福島県の燗酒と自然派ワインが好きな酒屋です。
 
今ある常識って、大多数の人が良いと思っているものだと思うのですが、常識=正解とは限らないですよね?最近そんな体験をしました。
今日はそんなことを少し書きます。
 
一つ目は、ビールは冷やして飲むものという常識。
日本では、ビールはキンキンに冷やして喉越しや清涼感を楽しむものというのが一般的な考えだと思います。特に日本の大手メーカーのビールはピルスナータイプの物がほとんどで、冷やして飲む方が美味しい物が多いです。夏場にはこういうタイプのビールをゴクゴク飲むのが最高ですよね。
でも、東北の冬は寒いです。氷点下の夜なんてザラにあります。そんな日は、キンキンに冷えたビールは冷たすぎます。
冷えた体に冷えたビール。体的にもあまりおすすめはできないですね。(笑)
そんな時に思い出したのが、ヨーロッパでは常温でビールを飲むこともあるということ。
もともとビールは大昔から飲まれているものです。当然、昔は冷蔵技術もなく冷やすという行為は一部の特権階級の贅沢でした。そんな中、庶民は冷やさない常温のビールを飲んでいたことは容易に想像できます。
調べたところ、昔ながらの上面発酵ビール(エール系)は常温でゆっくりと飲むことでビールの様々な味わいを楽しめるということがわかりました。
 
 
早速常温でビールを飲んでみたところ、これが意外にも美味しい。様々な花やフルーツなどの香り、ローストした香ばしい香りなどが感じられ、冷やした時よりもより味わいも豊かに感じられました。(一番搾りの黒は、ピルスナーと同じ分類の下面発酵のビールでしたが黒ビールということで常温でもとても美味しく感じられました。)
この体験でビールはキンキンに冷やして飲むものという常識が1つ崩れました。
 
二つ目は、日本酒は新鮮な物が美味しいという考え。もちろん、熟成に取り組んでいる蔵元も多く、熟成して美味しい日本酒も全国には多数ありますが、まだまだ新鮮な物を良しとする方が多いのが現状だと思います。もちろん、お酒のタイプによっては生酒やフルーティな香りを楽しむものなど早く飲んだ方が美味しいお酒もありますし、シチュエーションによってはそのようなタイプのお酒の方が食事などにも合う時も多々ありますので、それ自体が悪いということではなく、熟成したお酒にもとても面白い発見もあるということを知っていただきたいのです。
 
今日飲んだこのお酒。数年前に出雲の蔵元に見学に行った時にとても美味しかったので仕入れたお酒です。約10年前に作られた純米原酒になります。
10年前のお酒というと、「飲めるの?」とか「酢になってるのでは?」といぶかしむ方もいると思いますが、とても美味しく、上級の辛口のシェリー酒のような風味をまとった味わいは、熟成でしかなしえない味わいだと思いました。
以前別の蔵元さんが仰ってましたが、「どんなお金持ちも権力者も時の流れだけは自由にできない。熟成とは最高の贅沢なのではないか。」というような話をされていました。
まさに時の流れでしかなしえない、味わいをこのお酒に感じました。
 
どちらのお酒も常温のビールの方が素晴らしいとか、熟成した日本酒の方が上だとかという話ではなく、普段当たり前に思っていることを時にはあえて破ってみることで、新しい発見や新しい楽しみがみつけられるのかもしれないと感じるんです。
もちろん失敗することも多いかと思いますが、時には常識を外して楽しんでみませんか?面白い発見ができるかもしれませんよ。
まぁ、失敗しても酒飲み話のネタがひとつ増えますから無駄ではないですよね。(笑)