男の子って、素敵な生き物だなあ といつも思う。
きっと一生憧れて生きていくのだと思う。



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2004年。
深瀬と中じんはいつもバンドメンバーを探していた。


HELLO ENDING


「メンバー募集掲示板で探してるんだけどさ、なかなか見つからないよ」

「募集した人とは会えたの?」

「うん。会ったけど、難しい」

「なんで?」

「家が遠い。だからあんまりスタジオに入れない。
 それじゃ上手くいかないでしょ」

「そうか。地元で出会えたらいいのにね」

まだ10代だった彼らは、2人でパンクロックという
激しい音楽を作っていた。

ドラムとベースがいないので、
曲作りのために手に入れた「ドラムマシーン」を使って作った
初音源を聞かせてくれた。

中じんの歪んだギターにのせるのは、枯れた声で叫ぶ深瀬の声だ。

「F××k」「×××××」「××××」と叫ぶその激しい新曲は
近所迷惑になるので、
布団の中にもぐって録音したのだと教えてくれた。

HELLO ENDING



「コミュニケーションがとれるバンドが良いんだ」

「うん」

「同じ世界観をもった仲間じゃなきゃ、おれは音楽は作れないと思う」

「そうなんだ。バンドって、素敵だね」

クラシックしか知らなかった高校生の私は、
彼らのアグレッシブな動きを聞くのが楽しみだった。


HELLO ENDING



しかし、他人事だった彼らのバンド活動が一転する。



「音楽が出来る場所を作ろうと思う」



2005年。深瀬から招集がかかり、
ファミリーレストランに集まった私と中じんとLOVE。当時初代。
私はバンドメンバーでもないのに何故か真面目な顔で会議に参加する。

深瀬はゴソゴソと紙を数枚だしながら、話を続けた。


「いつまでもスタジオに入れないなんて言ってたら人生終わる」

「そうだね」

「だから、集まれる場所を作ろうと思う。」


彼が出したのは不動産やさんの物件資料である。
月額の家賃…15万円…20万円…
当時の3ヶ月分のバイト代が飛ぶ値段だった。

(えー!!物件を借りるのってこんなにお金がいるんだ…
 無理むりムリムリ!!
ねえサトシ君、キミの貯金ってゼロ円だよね!?
 しかも楽器のこととか、音響のこととかも分からないし…
 幾らなんでも遠回りなんじゃないかな、だってだって……)

バンドメンバーでもない癖に、頭の中で「無理論」をたたき出す私の前で
ワクワクしたまなざしの中じんが言った。



「面白そう!!やろう!!」



圧倒された。

初めて見たその瞳の「覚悟」や「決意」や「期待」の色を前にして、
私の「無理論」はあまりの恥ずかしさに怒りながら走っていった。


HELLO ENDING



「さおりちゃんは やりたくないなら良いよ」

「や…やるもん!!!!」


あれから6年の歳月の間に、
私はその「場所」の会計をやったり、料理をしたりしながら
いつの間にかバンドメンバーになっていた。

「お前だけは入れたくなかったけど、もうお前でいいや」

深瀬からの誘い文句は、今考えても酷いものだった。0点だ。
それでも、私は焦がれた瞳の中を覗いてみたかった。

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中島真一 と 深瀬慧。

優等生と劣等生。真面目と不良。

光と影のような
尊敬する仲間であり、作曲家でもあるこの2人と
一曲ずつかいて、CDを出すことが決まりました。

本当に嬉しいです。

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SEKAI NO OWARI

8月17日発売
トリプルシングル  『INORI』 

1.花鳥風月                  
2.不死鳥                   
3.Never Ending World  

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花鳥風月は、深瀬が作ったメロディに私が詞を。
不死鳥は、中じんのメロディに深瀬が詞を。
NeverEndingWorldは、私のメロディに深瀬が詞を書きました。

待っていてくれた人には、随分お待たせしました。

楽しみにしていてね。


HELLO ENDING