「さおりちゃん、縄跳びしたいから100円ください」

そう言いながら私の実家に汗だくの深瀬が現れたのは
5年くらい前のことだ。

HELLO ENDING

「運動したいの?」

「うん」

「100円ないの?」

「うん」

私たちはclubEARTHを立ち上げた頃、
バイト代が入れば片っ端から木材や機材を買っていたので、
とても貧乏だった。

友達がペットボトルを買っているのを見て

「けっ、金持ちは良いよな」

と嫌みを言ってしまうくらい貧乏だった。

HELLO ENDING

clubEARTHは大赤字を叩きだした。
家賃や光熱費の他に、莫大な工事費と機材費。

アルバイト代を全てそれらに当てても足りなくて、
コワーイ人から電話がかかってきたこともあった。


HELLO ENDING

毎日グラム29円の鶏肉を食べ、
電車代を節約する為にどこへでも自転車を走らせ、
朝から晩まで音楽のことを考えて、
たまに安いお酒で乾杯をした。

HELLO ENDING

大赤字だったけれど、
楽しくて楽しくて仕方がない毎日だった。

HELLO ENDING

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デビューして3年目に突入した今も、
まだ大赤字をたたき出している私たちのライブ。

炎と森のカーニバル。
総制作費、5億円。

「巨大樹の下でライブをやりたい」

そう言って、本当にそのライブを実現させた深瀬が
今日28歳になった。

私も含めた会場に入った全ての人たちが
深瀬に夢を魅せて貰った日になった。

景色が全部涙色に染まるような、
それはそれは素敵な日だった。

HELLO ENDING

「絶対に30mじゃないと駄目なんです」

スタッフの大反対を押し切って、巨大樹は30mになった。

HELLO ENDING

セットを初めて見た時、
私は深瀬の精神力の強さに心を打たれた。

あんなに大反対を受けたら、
私だったら、15mくらいになってしまったかもしれない。

HELLO ENDING

そう思うと、悲しくて悔しくて言葉が出なかった。

HELLO ENDING

もっともっと頑張らなくては、
彼を孤独にさせてしまう。

HELLO ENDING

そう思った。
そのくらい、炎と森のカーニバルは美しかった。

HELLO ENDING

書きながら、目に涙が溜まってくる。
明日もあさっても、頑張ろうね。
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慧くん、誕生日おめでとう。
28歳になれて、本当に良かったなあ。