第三話 | ジュセー 徒然。

ジュセー 徒然。

てきとーに。
創作とかやってます。

「ん……」

目を開ける。
夜の闇は、去っていた。
陽の光が、差し込んでいる。
いつのまにか、眠っていたようだ。

「あいつ、どういうことだ?」

黒星は室内を見回す。白星が帰ってきた形跡は、無い。

「朝帰りするようなタイプでもないだろ?……」

行方不明。そんな単語が頭に浮かぶ。
何か、事件に巻き込まれたのか。

……。

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日照り。季節はもう、夏になろうとしていた。
太陽の熱。

炎天下の中を、夢遊病患者のように独り言をブツブツと言いながら歩く少年がいた。
灰崎 黒星である。

「世話の焼ける……焼ける……暑い……」

彼は今、白星の行方を捜していた。
警察に頼るのは面倒だ。
だから、一人で。
何れは学校側から警察に連絡が行き、捜索が始まるだろうが。

「あいつは。あいつは、俺が。俺が……」

学校の周辺を歩く。
今日は土曜日である。部活に勤しむ生徒の掛け声が聞こえる。

「うるさい。うるさい、うるさい……」

同じ単語を、何度も何度も。
同じ場所を、何度も何度も。

繰り返し、繰り返し。
繰り返し、繰り返し……。

陽がゆっくりと、着実に夜へ旅立とうとしているのがわかる。
あと四時間もすれば、完全に陽は落ち、夜の闇に染まるだろう。

「夜は、好きだ。そうだ、夜だ。夜……夜だな、早く夜に」

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「夜か?夜だな?」

空が黒く染まっている。
部活に勤しんでいた生徒達は、もう帰宅しているだろう。

「場所を、変えるか。ここじゃない、ここじゃない。もう少し遠くへ行くか」

ようやく彼は、違う道へと歩き出した。
どんどん突き進む。
暗い。
暗い道へ、進む。

この町は、夕方から夜にかけてはとても静かだ。
人口がそこまで多くないからだろう。

「……ん?」

だからこそ。

「……はぁ」

だからこそ、喧騒の声は聞こえやすい。
何かゴタゴタがあったのだろう。
そう遠い場所で聞こえているわけではない。
この町の治安は、良くはない。
暴力沙汰もそう珍しいことではない。

「行ってみるか」

ポツリと呟く。
空虚を、満たすため。何かをやらねば。
黒星は声の方へと歩き出した。



暗い路地裏。
そこに、複数の人間がいた。

黒星はそれを見やる。
見るからに柄の悪そうな集団。人数は……5人。
絵に描いたような、悪人。
そして彼らの奥には、追い詰められたであろう少女がいた。

「強姦、か。」

独り言。

彼らの中の何人かが、黒星に気づきこちらを睨みつける。

が、それだけだった。
それしか、できなかった。

黒星は一瞬で距離を詰め、彼らを容易く蹴散らしたのである。

「やっぱりだ、やっぱり。うまく行き過ぎるんだよ。つまらない」

折る。
悲鳴。
折る。
悲鳴。

……。

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彼らが三下の雑魚のような捨て台詞を残しながら逃げ出すのを一瞥した黒星は、少女を見る。

整った顔立ちをしている。可憐だった。
どこか、幸薄そうな印象を受ける。
歳は……歳は、自分と変わらないかそれより上かだろう。

「あんた、大丈夫か?立てるか?」

「……大丈夫、です……」

声を掛けると、か細い声が帰ってきた。

「一人でも、帰れます」

少女は立ち上がり、黒星に深々とお辞儀した。

「ありがとうございます。私は、霜月 氷華と言います。よければ、名前を。いつか、お礼をしたいです」

「……灰崎 黒星」

それだけ言うと、黒星は踵を返した。
礼が欲しくてやったのではない。正義感から行動したのではない。

ただ何となく、だ。正義漢気取りではなく、やはり彼は、空虚を満たしたかったのだ。
それでも。
それでも、曇天は晴れなかった。

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黒星が元居た通り。
そこに。

「~~~♪♪」

陽気に鼻歌を歌う少女がいた。
大きく、異形な鎌……のような物を持った少女が。
無垢な笑顔で、スキップしながら。

黒星の軌跡を辿るように。