半世紀前の大イヴェント『ワッツタックス』あれこれ~来週も | 吉岡正晴のソウル・サーチン

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半世紀前の大イヴェント『ワッツタックス』あれこれ~来週も

 

 

【About Wattstax】

 

パート1。

 

木曜日(2023年8月18日)放送の『AOR/Soul To Soul』で、『ワッツタックス』のミニ特集のパート1をお送りした。来週と2回にわけての放送だが、そもそも2回でも時間はまったく足りない。

 

聴取感謝『AOR/Soul To Soul #091』~ヴラディミール・チェトカー、メイサ、ジョン・クリアリー、ワッツタックス完全版、ロドリゲス追悼

2023年8月18日

https://note.com/ebs/n/n2586ce47f6de

 

今回は、今年(2023年)の3月に入手した『ソウルド:アウト:ザ・ワッツタックス・コレクション』(12枚組CD+豪華ブックレット)を最初はできるだけすぐにやろうかと思っていたが、なかなか12枚を聴けないでいたので、8月のワッツタックスが行われた時期にしようと考えた。ライヴ当日が8月20日だったので、17日と24日の回にわけてミニ特集ということにした。ちょうど、51年前のソウル史に残る大イヴェントを紹介する形だ。この12枚組、ひょっとしたら本当は昨年50周年を記念して出す予定だったのかもしれないが、もろもろで発売が遅れてしまったのかもしれない。

 

映画日本公開。

 

さて、この『ワッツタックス』の映画自体は、おそらく日本公開されたときになんとか見ているはずだが、どこの劇場で見たか、記憶にない。余談だが、あの『2001年宇宙の旅』は、銀座の今は亡き「テアトル東京」で中学の同級生たち何人かと見に行った記憶がある。僕たちは中学2年だった。とにかく、画面が大きく冒頭の「美しく青きドナウ」が本当に強烈だった。それを見た映画館のことはよく覚えているが、この『ワッツタックス』の映画館がどこだったか覚えてない。

 

で、これはその後、VHSのテープで入手、さらに普通のDVDで入手、そして、廉価版のDVDでも入手していて、それらを何回か見ている。今回もオンエアにあたり、本編、チャックD、ロブ・ボウマンの音声特典なども聴いた。

 

これを開くきっかけとなった1965年8月のワッツ暴動の話も、ユキさんが簡単に紹介してくれた。

 

暴動のきっかけとなった白人警察官が25年を経てインタヴューに答えているものもあった。

 

To CHP Officer Who Sparked Riots, It Was Just Another Arrest

BY DARRELL DAWSEY

AUG. 19, 1990 12 AM PT

https://www.latimes.com/archives/la-xpm-1990-08-19-me-2790-story.html

 

これを読むと、もう、いまの「ブラック・ライヴズ・マター」そのものであり、50年以上アメリカという国は変わってないんだなあと思う。

 

三つのポイント。

 

また、アル・ベルはこの映画を作ることに三つの目的というか、ポイントがあったと述べている、という話をオンエアでした。

 

それが①ワッツ地区への経済的な寄付、雇用の創出、②ブラック・カルチャーの歴史の中でこうしたイヴェントがなかったので、そうしたものをやりたかった、③スタックスでもモータウンがやっていたように映画界(ハリウッド)に進出したく、その足掛かりにしたかった、という3点だ。

 

今でこそ、フェスが、たとえば「エッセンス・ミュージック・フェス」を始めとし、多数の大小フェスがブラック系でも開催されているが、そうしたものの原点ともいうべきものがこの『ワッツタックス』ということになる。

 

もちろん、しばらく前に公開された『サマー・オブ・ソウル』は1969年に行われていたが、これは当時はまったく広く知られることはなかったので、事実上、ブラック・フェスとして最初に認識されたのはこの『ワッツタックス』となるのだろう。

 

これは次回話すことになるが、アイザック・ヘイズの「シャフトのテーマ」が映画会社の横やりで、ライヴでは演奏もし、音源も残っているが、当初の映画本編では別曲に差し替えられてしまった話などもおもしろい。僕はアイザック・ヘイズの「シャフト」のシーンはすっかり刷り込まれていたので、おそらくここ20年か30年の間にビデオなどで見て、そうなったのだろう。

 

最長老。

 

映画はドキュメンタリーの形で、多くの市井の人(しせいのひと)たちの発言を使っているが、まさに1972年のブラック・パワーの空気感をよく出していると感じる。

 

僕が1973年から六本木のディスコ、エンバシーでフリーランスのDJとして週末にソウル・ミュージックをかけるようになり、多くのブラック(ほとんどが軍関係の兵士)と知り合うようになるが、その頃の彼らの空気感が映画を見ていると思いだされる。彼らはさまざまなことにいらいらし、怒っているのだ。だから、週末のひとときこそ、いい音楽で現実逃避することがすべてだった。いらいらした彼らはエンバシーでもしばしば喧嘩を起こしていた。

 

ところで、この映画出演者の中で最長老は誰かと考えたのだが、おそらく、ステイプル・シンガーズのポップ・ステイプル(1914年12月28日うまれ)で57歳。続くのが、1917年3月26日生まれのルーファス・トーマスの55歳だ。「世界一年を取ったティーン・エイジャー」と言われたのもうなづける。

 

しかし、今回この『ワッツタックス』を久しぶりに見て思ったのは、そのポップも、ルーファスも今の自分より年下なのかという衝撃的事実であった。そしてあの堂々のアイザック・ヘイズはこのイヴェント当日(1972年8月20日)にちょうど30歳の誕生日を迎えている。なんという誕生パーティーだろう。しかし、あれが30歳とはとても思えない。

 

 

来週の『AOR/Soul To Soul #092』~「ワッツタックス特集・パート2」もお楽しみに。

 

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