lavaの創作ストーリー用ブログ

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lavaの創作ストーリー『LAVARATORY』を小説化したものを載せています。
厨二病なバトル小説書いています。

そして、彼は徐に口を開いた。
「…当時話題になっていた、7つのカードの存在…覚えているか?」
「あぁ、勿論…」
『7つのカード』…
そう、それは、得る事で様々な能力を手にする事ができるという…我々の白軍では昔から受け継がれてきたアイテムだった。
まだこの時、俺はフィートさんとは面識がなかったが…当時のフィートさんは、旧白軍からそのカードを受け継いで、当時白軍に加入していた数少ないメンバー達に配り、各能力を与えて軍の戦力の向上を謀っていた。
更に、そのカードはある程度の所持期間を経過すると、その人物に能力が定着して宿る。
そのはずだったのだが、当時白軍に配っていた期間はほんの僅か。
全くといっていいほど、その能力は定着していなかった。
それどころか、その能力の使い方を分かっていない者ばかりだった。
…たった一人を除いて。
そんな中、そのカードの噂を聞いて俺達に挑戦状を出してきた奴等がいたのだ。
前述のファルギアを含む、ヴェンジャンスと呼ばれる団体だ。
当時の彼とは、もう何年も会っておらず、仲も良くなかった。
此方に敵対心を持つどころか、私怨を抱えていた彼等は、新たな仲間を得る序でに、戦力の足しとしてカードを集めるため、挑戦状を出して俺達を使った。
更にその挑戦状の噂を聞き、フィートさんが俺達を白軍に引き入れて仲間にするのに丁度良いと考え、俺達の見定めをしようとした。
それで、当時の白軍加入メンバーと戦わせたのだった。
イグラスは、その当時のメンバーの1人だったのだが、唯一、他のメンバーには存在を知らされていない、シークレットメンバーで、類稀なる能力や戦力を評価して、切り札として用意していた要員だったようだ。
まぁどうやら、当時のディザスターはそんな彼を誤って殺してしまったと思っていたようで、結果としては殺人未遂…
イグラスは負った怪我もすぐに治療を終え、復帰も早かったようだ。
「そう、イグラスもあのカードの持ち主の1人だったんだ。属性は『毒』…。」
そうそう、あの『7つのカード』には各属性があり、それぞれ、炎、水、電気、毒、闇、草原、光。
各人の体内に波動として流れる属性と合致している必要がある。
人によっては、その属性を複数所持している場合もあり、複数属性が使用できる者も存在する。
「俺は勘違いしていたんだ。目的は空間技という伝説の能力が使える『闇』のカード。」
『空間技』。
それは、空間と空間を繋ぐ事でより幅広い行動が可能になる、えげつない技。
その見てくれは、まるで宇宙に存在するブラックホールのような形状…
旧白軍の頃のボスから受け継がれてきている、伝説の能力だ。
「イグラスは『毒』のカードを所持していたのにも関わらず、空間技の使用が可能だった。というのも、軍に加入する前から、彼の師匠であるアクトから教えこまれていたんだ。」
アクト…
彼は、旧白軍のボスであるフィアラルティリアとは幼い頃から何やら深い関わりがあったそうで…
そこに縁がある事から、幼い当時から『闇』のカードを渡されて、カードの効力の実験台としても使われていたそうだ。
そのお陰か、『闇』のカードの能力は完全に定着し、最早その彼の十八番と呼んでいい程の扱いっぷりだ。
そんなアクトがまだ、『闇』のカードを所持していた頃に、イグラスを弟子にしていたそうだ。
イグラスには、毒だけでなく、闇の属性も所持していた。
そのため、イグラスにも空間技が受け継がれていたという訳だ。
「だから、所持カードとは関係が無く、イグラスは空間技が使えていた。それを勘違いして、イグラスの持つカードを手に入れれば、空間技を得られると思っていたんだ。」
「…なるほどな。…それで、イグラスを狙いに行ったと。」
「あぁ、最初は交渉だけのつもりだったんだ。けれども、渡された『毒』のカードは、空間技を得られない。属性が違う事に気付かなかった俺は、頭に鮮血が上り、激昂してしまったんだ。揉み合いになり、イグラスを誤って転落させてしまい、そこには彼の身体から流れ出した鮮血…。怖くなり、逃げ出したが、当の本人はまだ意識もあったようで、例の空間技でフィートさんの元へ帰り、あっさり復活したようだ。それも知らず、俺は苦悩の末に自首をした。殺人を犯してしまったと思い込んでいたのだが、実際は未遂していたとの事で、釈放は早かった。復活も早く、後遺症も無かったそうだ。」
「…な、なるほどな…」
詳しい事情を初めて知った。
当時の俺達はまだまだ若かった。
それもあってか、考え方に未熟さが窺える。

「…今回のイグラス狙いも、カードや空間技が目的…だと思うか?」
「いやぁ…それは考えにくい…。カードは今や、ファルギア達の手元だ。幾ら彼がファルギア達の仲間とは言えど、当時殺されたと思われていた彼に、カードは戻ってきていない。カードを狙っているなら、真っ先にファルギア達を狙うだろう。」
「あ、確かに…そういえばそうだったな…」
…これで、動機の目星がつくと思っていたのだが、期待外れだったようだ…
「それじゃぁ、ここらで…」
「!?」
「なっ…!?」
突然、爆発音が轟く。
俺ではなく、ディザスターが来た方向から…
「まさか…」
俺達の拠点の基地…
「フィートタワー!?」
その爆発音の方向を見ると、高く聳える塔のような基地の上層階の方が爆発しているのが、微かに見える。
上層階という事は…ボスが…!?


続く。
…無事でよかった。
連続殺人事件の犯人に襲われ、意識不明の重体を負ったという、イグラス・サーペン。
彼とは面識があるどころか、4年半前の仲間であり、報道を観てからは心配でならなかった。
今日、俺ツェーンは、真っ先にその彼の見舞いに来たのだ。
全身打撲との事で、包帯やガーゼなど、治療痕の数が見るに堪えなかったが、命に別状はない、との言葉を、このエピック病院の院長であるアインス先生から頂けて、より一層安心だ。
「あ、そうそう、そういえば…」
「…うん?」
「さっきも、貴方と同じようにイグラスさんが心配で会いに来ていた人がいましたよ。かなり息を切らしていましたが…」
「えっ…俺と同じように…?」
…『息を切らして』…?
そんなに急いで来ていたなんて、相当関係が深いんだろう。
一体誰が…
「えぇ、確か名前は…ファルギアさん、だったような…」
「なっ…!?」
ファルギア…!?…彼奴が…
…よく知ってる、幼馴染であり仲間のファルギアだ。
自身の美だけが生き甲斐な奴で、言動や顔は非常にうるさく、人付き合いし難い相手だが…長年人種差別を受けてきた者達の意志を継ぎ、後世に語り継ぐ使命を背負うといった、強い信念を持った奴でもある。
それと同時に、生命の創造と共に世界の秩序の均衡を保つ計画に加担した背景もある。
そんな彼が、俺よりも真っ先に此処に来ていたのか…
…よくよく考えてみれば、ファルギア…イグラスとは、昔からの仲間だったな…
真っ先に来るのは当然か…

「…うっ、さっむ…!?」
忘れていた。
真冬も真冬だ。
年末に差し掛かり、もう厳しい寒波が毎日を襲っている。
時間はそう長くもなかったはずだが、院内の訪問中…室内に設備されている暖房に甘えすぎていた。
室内に対して、外気は温度に差がありすぎる。
咄嗟に、鞄に収めていた贈り物のマフラーを取り出す。
首にマフラーを巻き、外に出て、次の場所へと向かう。
この事件を紐解くための人物に、会いに行くのだ。

丘を越えて、昔から住んでいる自宅のある住宅街の方へ出る。
その沿いを進んで、木々が繁る森に入る。
地元という事もあり、この『冀望の森』には何度も足を踏み入れた事がある。
俺達の活動では、もうお馴染みの場所だ。
この森をずっと進むと、大きく開けた草原がある。
緑に囲まれ、気持ちのいい風が身体を靡く、とても清々しい場所だ。
その『冀望の草原』で、該当の人物とは待ち合わせをしている。
草原の先に、我々が拠点としている基地も存在していて、彼はそこに居たと言うので、待ち合わせ場所をその草原に設定した。
それなりに歩を進め…間もなく、その草原に到着するところだ。
すると。
「…あん?」
てっぺんの折れた、まるで魔法使いのような紫色の帽子を被る人物が見えた。
…きっとあれが、待ち合わせていた彼…ディザスターだろう。
…なんだあの恰好…

「お、テン!…待ってたぜ…!」
あぁ、そうそう、俺ツェーンの本名は、テン・ステルス。
この戦闘世界で身を潜めるために、ツェーンという偽名を使う事も多々ある。
とはいえ、それを使い始めたのも、数年前。
本名の方が馴染みが深いという相手も少なくなく、其方で呼ばれる事もある。
「…どうしたんだよその恰好…随分と洒落ている…というか、ギャップが酷いぞ。」
「えっ、嘘だろ、割とお洒落かと思ってるんだが…」
いや、こっちが嘘だろってなってるわ…
独特すぎるセンスを持っている…
「…にしても、わざわざこっちの方まで来させてすまないな、ちょっと手間だっただろ。」
「いやぁ、序でと言っては何だが、我等がボス、フィートさんに顔を合わせておきたいと思ってな…」
「あぁそうか、なるほどな。」
そう、此処は我々の拠点の基地が近いという事で、このまま基地に身を据えているボスにも会いに行こうという算段だ。
「それで、聞きたい事って、何だ?」
「あぁ、少々答えにくい質問になるとは思うんだが…」
そう、本題はこれ。
この彼、ディザスターに、この事件の手掛かりともなるかもしれない事情を聞き出そうと思っていたのだ。
彼は、7年前に殺人未遂を犯し、少しの間刑務所入りしていたのだ。
その時の被害者が、あのイグラス。
当時の事について、俺は全く知らないでいたのだ。
「今回の連続殺人事件について、新たな被害者であるイグラス・サーペン。7年前お前が犯した殺人未遂の被害者だったと思うんだが…今回の犯人が彼を狙う理由として思い当たる節は無いかと思ってな。」
「…なるほど。」
意表をつかれたように、ディザスターは息を呑む。

続く。
毎年恒例、年末漫画&新年漫画のお披露目会です。
2022年はありがとうございました。
2023年も宜しくお願い致します。
去年は全然小説更新できなかったので、更新していきたいですわ。



























続く。←

毎年恒例、年末漫画&新年漫画のお披露目会です。
2021年はありがとうございました。
2022年も宜しくお願い致します。
今年は元日でのアップロード忘れませんでした。優秀。













続く。←
前書き
ご無沙汰しております、
最近過労しつつも曲作りに専念しちゃっているlavaです。
先々月…遂に4年も続いたPENTASTONESが終わりました。
は~~~最高~~~
頑張った。走り切った。
けどまだこれからも続くぜ、俺達の物語は。
…ってな訳で、探り探りで始まります。逍遥メモリー。
主人公…というかメインとして動くのは、お馴染み(?)のテンとザイディンとファルギア…!
安定の皆さんですわ。
今迄歩んできた思い出の地を巡り、事件解決へと向かう。
そんなコンセプトで。
時間軸は急に戻りまして、裏ノ惨劇やクロカゲの霧が終わった後の冬です。
懐かしメンバーが登場するかも?
そんな訳で、行きましょう。
それでは、逍遥メモリー。
あの頃の記憶へ、誘え。



逍遥メモリー
-Wandering our memory-

『えー、先程入ったニュースです。例の連続殺人事件に、また犠牲者が出た模様です。』
この日もいつも通り起床し、相も変わらずTVでニュースを垂れ流していた。
『今回、被害に遭ったのは、イグラス・サーペンさん21歳。全身打撲で意識不明の重体ですが、命に別状は無いとの事です。』
ずっと前から何かが頭の中で引っかかり、マークしていたこの事件。
TVでのその言葉を耳にした瞬間、俺の中で何かが動き出した。
俺は直ぐに立ち上がり、食べ終えた朝食を片付け、外出の準備をする。

『現場には、これ迄の事件と同じく、太陽のような図形が残されており…警察は、十中八九、犯人はこれ迄の連続殺人事件の同一犯ではないかと見ています。』
その言葉を耳にし、俺は着替えを済ませて、身支度を整える。
持ち物を確認し、部屋の電気を暗くした。

『今後も同様の事件の発生、及び被害の拡大を懸念して、警察は更に警戒を強め、捜査に当たっています。』
その言葉を耳にすると、何か思い立ったかのように、僕は直ぐにその場から立ち上がり、外に出る用意を始めました。
トレードマークとも言えよう、ネックウォーマーを装備して、歩み出しました。
家の鍵を持ち、玄関へと向かいます。

『以上、速報でした。』

乾き切った風、そして目も眩むような陽射しが、自身の身体を襲う。

「遂に来たか…」
「遂に来たな…」
「遂に来ましたね…」

「「「我々の近くへ。」」」


続く。
「…どうやら、誰一人死ぬ事はなく…全員無事なようだ。…なんでも、二次白軍の新入り、ラッシュって奴がな…色々やってくれたようだ。」
時は戻り、クロスジーン基地崩壊直後。
そのクロスジーン基地から距離は離れ、此処はとある6階建てのビルの屋上。
デューンは硝煙を上げたライフルを置いたまま、通話を終えたばかりのスマホをポケットへ仕舞い…立ち上がった。
「…ふぅ。…何にせよ、大事に至らずに済んで良かったな。デューン。」
「…にしても、さっきの一撃…やっぱり流石だね、デューン…!」
「…あぁ、これくらい…レイナとの連携さえ取れればな。…予め、標準は定めておいたし、簡単なもんだ。」
そこには…4人の姿と、各人のライフルがあった。
一仕事を終え、互いに顔を合わせる。
そして、デューンが再び口を開く。
「安心しろ…クラウ、お前の仲間達も守れたようだ。…心配だったんだろ?」
「あー、うん。…やっぱりね、こないだまで仲間として一緒に戦ってきた皆の命運は、守らなきゃいけないからね。…ザンも、取り敢えずは無事で良かったよ。…かなり重症そうだけど…」
黒髪の男はそう答えた。
そしてそのまま今度は、別のスナイパーに声を掛ける。
「…そうそう、さっきくしゃみしてたみたいだけど…大丈夫?…もしかして風邪?…フォルトゥナ。」
そう聞かれた眼鏡を掛けた背の低い女性…
彼女は、ゴーグルを首から下げ、手を鼻に当てて啜っている。
「う…まぁな。…誰かが私の噂をしていたらしい。…まぁ、こんなナリをしていたら、噂の1つや2つされたとしても、全く不思議じゃないが…仕方あるまい。」
高めのハスキーボイスが、そう答えた。
「…そのうち、私も彼等とも出会う事になるだろう。…先天的とはいえ、この名を授かっている以上は、図らずともいつか深く関わる事になりそうだ…」
「そうだな、その時は俺達のボス、レイナを宜しく頼んだぞ。」
「…あぁ勿論。分かっているさ。」
眼鏡の女性は、しっかりと答えた。
そしてまた、黒髪の男が口を開き、デューンに聞く。
「…デューンは早く、皆と合流しなくていいのか?」
「…それ程急ぐ事でもないだろう。…それより、滅多に集まる事のできない俺達…此方での時間を大事にすべきだ。…違うか?」
「まぁ…それもそうだけどー…」
「如何にも。貴公等は然り…俺は殊更に、表に生づる事いと有り難し。かくして貴公等と逢へる事むがしかりけり。」
「…ふっ、そうだな。」
長い白髪を靡かせ、1人の男が歩み出す。
「…俺とていつかはかの男、アクトの乙…ザイディンと面を合はせぬ。お手合はせしたかりぬ。」
3人に背を見せて屋上の際に立ち、外を眺めて風を浴びる。
「随分と楽しみにしているようだな。…まぁあれだけ因縁もあるようだし、当然と言えば当然か。」
「ま、俺達黒軍の仲間にもなった、あの激強のゼンディックスとも、相棒と噂されているほどみたいだし…相当見応えのある戦いになりそうだね。…ゼンディックスともそのうち会ってあげてもいいのに。」
「否…たとひ、斯かる事すれば、俺の欲を軽んずる事甚だし。ゆめゆめ、其の儘に、己の欲に従ふ事勿れ。かく思ひし。」
「そ、そっか…」
長髪の男はライフルを肩に凭れさせて、口角を上げて言った。

「…では、ここらで私達もぼちぼち下に降りるとしようか。」
「…そうだな。集まれて本当に良かった。お陰であのシェダルの愚行も止める事ができたしな。」
「そうだね、それと、無事に強襲が成功して良かったじゃん。」
「…うむ、俺も同感なり。」
ぞろぞろと歩く。
出口に向かって、4人の姿が動く。
「またそのうち、こうして集まりたいものだな。」
「そうだね。」
「あぁ…。」
…軈て、4人の影は、そのビルの屋上から消えていった。
彼等自身…己の身を、隠すように。

The end….
「おはよう!ラッシュ!」
「準備ができ次第、今日も行くぞ…!」
「あぁ…勿論!」
クロスジーンとの戦いを終え…数日が経った。
俺、ラッシュは、引き続き二次白軍の一員として、この基地で普段の生活も兼ねて、活動している。
…住んでいた自宅は村ごと破壊されてしまったし、姉貴の部屋に入り込むのも、流石に気が引けるしな。
そして余力や時間がある日は、セフトやイクスサンダーと共に、俺達の村、前重村の復興に尽力していた。
今日も3人で、復興のために前重村へ向かう予定だ。
…そんな時。
「よぉ、ラッシュ。」
「あっ、ザイディンさん!…おはようございます!」
すれ違い際に、肩を叩かれる。
「…ありがとな。争奪戦を終えてくれたのは、お前のお陰だ。」
「いえいえ…それを言うのなら、俺もザイディンさんにはとてもお世話になりましたよ。少なからずともザイディンさんの存在が、俺のバトルの糧になりました。貴方とご一緒して近くで戦いを共にして、学び得る事は多かったです。ありがとうございます。」
「…ふっ。」
俺の言葉に、ザイディンさんは口角を上げた。
「今日も行くのか?…お前達の村に。」
「えぇ。住み慣れた村は大事にしたいですし、俺はやはり、あの村が好きです。また皆で、安心して過ごせる場所を作りたいので…それに、俺は俺のやりたい事に突き進んでいきたいですしね。それが、俺の人生ってもんですよ。」
「ふっ、大したものだな。流石、あのシェダルを止めただけの事はある。」
シェダル…
奴は気を失ったまま、エピック病院という所に運ばれた。
依然、意識は戻っていないようだが、目が覚めたらその時点で何をしでかすか分からない。
そのため、今はカシオペヤのメンバーが総出で奴を見守ってくれている。
彼等は、クロスジーンという宿命から開放、そして更生されたのだ。
そんな彼等が奴を見守ってくれているのだから、きっと問題は無いだろう。
斯くして、5つの軍の意思は、1つに収束したのだ。
…シェダルも同様に、心を改めていてくれたら良いのだが…
兎に角…一先ずは、安心だ。
「そうそう、ラッシュ…」
ふと、ザイディンさんがまた声を掛けた。
「…ん?どうしました?」
「お前のお姉さんのカフェ、またそのうち邪魔させてもらおうかと思ってんだ。なかなか良い味出してるしな。」
「お、そうですか。でしたらそのうち俺に連絡してくれれば、こっちでも予約は受け付けますよ。」
「そうか…そりゃぁ嬉しいな。…まだ分からねぇが、またきっと年明け早々になるかもしれねぇな。…俺の長年の仲間が色々あって、なかなかに厄介でな…まぁ、その話はまた後日…是非、お前にも協力してもらいたくてな。」
「そ、そうなんですか。わかりました、是非、力になりたい所ですね…連絡、お待ちしています!」
…うん?
年明け…?
…年明けって、姉貴のカフェ…毎年閉店していたような…
まぁ、いっか。
…ザイディンさんと話を終え、俺は村に行く準備に向かう。
きっとザイディンさんも自分の仕事…自営しているという武器屋に務めに行くところだろう。
そのうち、其方にもきっとお世話になる事になるのかもしれない…
…これから先、またそのうち刃を向けるべき相手が現れるかも、知れない。
そんな相手のために、俺はこれからも訓練を重ねて、武力をつけていく。
そう、考えている。
…村を潰された事がきっかけではあったが、この二次白軍に加入できた事で、こういった活動を行えるようになった。
更には、今回の争奪戦…もとい、クロスジーン更生の一件は…俺の戦闘物語の1ページ目を、大きく飾ったのだ。
これもまた、俺の人生の中の、新たな「色」なのだと思う。
そんな「色」を皆で重ねて彩って、人それぞれの輝かしい人生、そして虹色な未来に向かう。
虹色に染まる夢を、描き出すのだ。
彼等…クロスジーンも、モノクロだった過去を棄て、これからきっと、それぞれの「色」で夢を彩る事だろう。
今回の一件が、その一歩となれたのなら、俺はそれで満足だ。
…姉貴。
俺は、やったよ。
きっと、唐突に、本格的に戦闘世界へ入り込む事になってしまった俺を心配してくれているんだろうが…俺は大丈夫だ。
…ありがとう。
また、いつか。
…会える時まで。
…支度を整え、俺は軽やかに歩み出した。
俺達の、故郷へ。


続く。
「おあっ!?」
「兎に角…早く逃げ…」
「いやダメだ!…階段を駆け下りている最中に全員潰される!」
「じゃぁ一体…どうすれば…!」
「くっ…」
騒ぐ皆。
しかし、為す術もない。
ただただ、慌てふためくのみ。
それでも、この基地は揺れる。
徐々に、揺れは大きくなる。
外壁が崩れるような音も響く。
足場が大きく揺れ…
足元が、覚束無い。
考えろ。
考えるんだ。
どうしたらいい…!?
今この場にあるのは、4つの軍ほぼ全員の力…
そしてその皆の技…
それ等を使って、この基地から…
…せめて、地上階まで降りられれば…!
さて、どうする…
一体、どうすればいい…!?
…しかし、幸いなのはこの基地の形状…
自分達二次白軍のような基地の形なら、空まで届くような高い塔。
鋭い円錐型で、縦に細く長い。
あの形状でこんな爆発が起き、基地が崩れ始めたら…それこそもう直ぐに、基地は不安定になり…瞬く間に基地はぺしゃんこだ。
それに比べれば、この基地はまだフロア面積がかなり広く、同じ面積のフロアが7階まで続く、円柱型…
そして何と言っても特徴的な、フロア中心部の大きな空間…
まるでショッピングモールにあるような…
…うん?
…そうか…
「これだ!!!」
「えっ…?」
叫んだ俺に、周囲は声を漏らす。
「これなら、此処から逃げ出せる!!!」
「何っ?」
セフトが呟いた。
そこに、リバース様が言う。
「…説明している暇はないのだろう?…ラッシュ。今は他に策は無い。君の好きにやってみよ。皆も協力してくれ。」
「…あ、あぁ…」
「よし。」
リバース様に答え、周囲の皆は唖然としながらも賛同する。
悩んでいる暇はない。
…やるぞ。
「…やるぞ…!」
叫ぶ。
「…ハンマーさん!」
「は、はい!?」
急に呼ばれて素っ頓狂な声を出す、ハンマーさん。
しかし、気にしていられない。
「この基地の中心部から、1階フロアに向けて、全力でグランドバリアを放ってくれ!」
「こ、この基地の中心部から…わ、分かった!」
「ザイディンさん!」
「…分かっている。」
走るハンマーさん。
それに合わせ、高い手摺を越えられるように、鉄の立方体が小さい階段を作る。
「おおおおお…!!!」
強く武器を握る、ハンマーさん。
鉄の立方体の上を駆け…
「グランドバリアー!!!」
1階フロアの中心を目掛けて、武器を投げる。
その直後。
「うわあぁっ!」
走りを抑え切れず、ハンマーさんがフロア中心部に飛び込んでしまう。
そこを…
「…おぉっと…」
「…た、助かったー…」
ディヴィラルのバインディングレイディエイションがハンマーさんを縛り、救う。
それとほぼ同時に、1階の方から轟音がする。
「…どうだ…?」
下の方を覗き込むと、1階フロアの中心部が強く広く円形に抉れ、その周囲の地面が大きく盛り上がり、円柱型の箱の様になっている。
盛り上がってできたその壁面は、高さが疎らで所々が尖っている。
想定通りだ。
「…よし、そしたらこのグランドバリアの壁面上部に、外側から満遍なく剣と槍を突き刺すぞ…!…剣や槍を持っている皆、頼む…!」
「「「おぉ…!」」」
走る戦士達。
それに合わせ、ザイディンさんの鉄の立方体が更に召喚される。
それを各々駆け上がり、フロア中心部の空間の手前で留まって剣と槍を投げ込む…!
俺も含め、イクスサンダー、そのまんまさん、リフィーネさん、ヴルン、リメア、ディルファーツ、ゼンディックス、フェス、スカイカット、シュラ、ファイ、トリナッツァチ、アズラク。
剣と槍がほぼ均等な間隔で、グランドバリアの壁面を少し高くするように刺さる。
「よし!…此処に、オースィー!…スポンジボールを大量に蹴り込んでくれ!…できれば、大きめのやつだ!」
「…お、おぉ…な、何でスポンジボールの事を…?…いや、任せろ!」
ハンマーさん同様に走るオースィー。
ザイディンさんの召喚した鉄の立方体を駆け上がり…
最後の鉄の立方体を強く蹴って跳ぶ。
そして身体を大きく回転させ…足を大きく引き…
巨大なスポンジボールを召喚する。
それも連続して何個も。
それ等を真下に向けて、一気に連発させる…!
「スポンジボール!!!」
フロア中心部に飛び込むオースィー。
此方もまた、ハンマーさん同様にディヴィラルのバインディングレイディエイションでオースィーを救う。
ハンマーさんの作ったグランドバリアが、大量のスポンジボールで埋め尽くされる。
「よし!最後だ!…此処に、リメア!…巨大な網を放って張ってくれ!…さっき投げた剣や槍の持ち手部分が、その網の支点になる!…できれば、細かめの網目だと良い!」
「了解した。」
中心部近くにいたリメアは直ぐに動き、1階フロアに向かって網を放つ…!
網の端の方は、幾つもの剣や槍の持ち手に引っかかり…
グランドバリアとスポンジボールを大きくカバーするように、巨大な網が張られた。
…よし、完璧だ。
「これで、擬似的な救助マットの完成だ…!…全員、此処に飛び降りるんだ!!!」
「「「お、おぉ…!!!」」」
走る戦士達。
フロア中心部へ、次々に飛び込んでいく戦士達。
大きく崩れる足場。
…よし。
…これで、何とかなれば…!

落ちる。
落ちていく。
7階もの高度を、凄い速度で落ちていく。
落下による風が、身体の下から上に向けて、強く身体中を撫でる。
凄まじい勢いだ。
…そこに、一言。
「…やりましたね。ラッシュ。」
「リバース様…!」
すぐ隣を、一緒にリバース様が落ちている。
しかも、シェダルの四肢を抱えながら。

「…ふっ」
リバース様は、此方に向かって微笑んだ。
それに対し、俺も直ぐに微笑み返す。
そしてそのまま…
…落ちる。
ぐんぐん落ちる。
そして…
遂に地上に到達する…!!!
「うっ…!!!」
…突発的とはいえ、流石の弾力だ。
まるでトランポリンのような、擬似的な救助マット。
この高さからの落下の衝撃を吸収し、戦士達全員を受け止めた。
成功だ。
「ふぅ…」
何とか…助かった。
…生きている。
「…すげぇぜ、ラッシュ。」
「あぁ、本当に驚いたぜ。」
ふと、その声の方を見ると、セフトが歯を見せて笑っている。
隣には、イクスサンダーが微笑んでいた。
その2人に、俺は元気に言葉を返す。
「…まぁな!」
微笑み合う俺達。
…だが、しかし。
「…!!!」
「やばい!!!」
…恐れていた事態が…
上の方を見ると、崩れた基地の瓦礫が大量に落下してくる。
かなりの量だ。
これだけの爆発を起こしてしまっては無理もない。
地上階まで降りられたとは言っても…
このまま瓦礫が落ちてきては…かなりの外傷を追う事は間違いない。
下手したら、死に至る。
危ない…!!!
反射的に、眼を瞑ってしまう。
…しかし…
瓦礫は1つたりとも、この巨大な網の上に落ちて来ない。
瓦礫が落ちて衝突しているような音は響いているのに…
「…うん?」
…一体、何故?
…恐る恐る、眼を開く。
すると…
「なっ…!?」
「お前達…!」
最上階から落下した、俺達4軍全員を囲むように、半球状の巨大な結界ができている。
その結界が瓦礫を阻み、俺達を守っているようだ。
「…くっ…此処で…」
「…お前達を守らねば…」
「…ラッシュの言っていた…コノヤロ。」
「…『虹色に染まる夢』ってのは…」
「…描き出せねぇからな…!」
カフ、ツィー、セギン、ルクバー、そしてアキルド。
…5人のカシオペヤのメンバーが、結界を生み出していた。
…全員、血塗れのまま…
…各々に残った、星の力で。
「…お前達…」
結界内部で、カシオペヤのメンバーを眺める。
瓦礫は止めどなく、落下を繰り返す。
「…ありがとう。」
「…ふっ」
笑ったのは、ツィーだ。
「…礼を言うのはこっちの方だ。目が覚めたぜ。…まさかお前の志が、こんなにも強いとはな。…びっくりしたぜ。」
そう告げる、ツィー。
そして…
「ありがとな。ラッシュ。」
「…ふっ…」
上部に向けて手を伸ばしながら、ツィーは言った。
外傷は酷いが…その容貌とは違った、穢れのない微笑みを見せている。
その顔には、汗が浮かんでいる。
本当に、最後に残った力を振り絞っているのが、窺えた。

…軈て、瓦礫は落下し尽くし、基地の崩壊は落ち着いた。
同時に、カシオペヤのメンバーによる結界も解け…俺達はやっと開放されたのだ。
「ふぅ…」
…微かに、音が鳴る。
…スマホの着信音だ。
やはり、それはNo.017のスマホだった。
「…もしもし?…あぁ、うん、全員無事!…二次白軍のラッシュ君が凄くってねー…!」
元気良くそう話すNo.017。
彼女のウインクが、俺に向けられる。
「いやー、さっきの狙撃…本当に助かったよ!…ありがとね!」
電話口に向けて、そう続けて話すNo.017。
グランドバリアの端に腰を据え、彼女は座り込む。
…ふと。
「…ん?」
俺の肩に触れる手。
「ラッシュ。」
「外、行くぞ。」
振り向くと、セフトとイクスサンダーの微笑みが、そこにはあった。
とても優しい微笑みだ。
…そしてそれに視線を向け、俺もはっきりと…
一言を返す。
「…あぁ…!」


続く。
「ま、待て…早まるな!!!」
叫ぶ。
シェダルは、銃口を自分の顬に向けたままだ。
不気味に、笑っている。
「ふふふっ…俺はもう、この世に用はない。」
「何っ…!?」
「やる事はやった…俺のクロスジーンの想いは、砕けた。そのために、俺はクロスジーンのボスを目指し、同じ想いを持つ皆を率いて、この計画を実行した。…しかし、もう全て終わりだ。目が覚めたよ。…俺はこの世界に居るべき人間ではない。…じゃあな。」
「ダメだ!!!」
必死に叫ぶ。
「ふざけるな!!!…お前は…お前はこれから、他のクロスジーンと共に、次の人生を歩むんだ!…逃げるんじゃない!…お前は…お前達は…俺達の仲間だ!…死なせやしない!!!」
「…ふっ」
シェダルは、銃口を自分の顬に向けたままだ。
周囲の皆も、ザワついている。
「やめろ、やめるんだ!!!」
諦めない。
叫ぶ。
「死ぬんじゃない!!!」
シェダルは一向に銃口を離そうとしない。
このままじゃ…まずい…!
…ふと突然、スマホの着信音が鳴る。
何だこんな時に。
「な、何…?」
…その音に釣られてスマホを取り出したのは、No.017だ。
いやいや、この局面で電話に出るのかよ…
並外れた思考をしてやがる…
…まぁいい。
気にしない事にしておこう。
「もしもし、何?…どうしたの?…うん…うん…」
声量は抑えているようだが、周囲が静かな分、よく聞こえてくる。
…しかしそれを気にせず、俺達はシェダルの方を凝視する。
「とにかく…そんな馬鹿な事は、やめるんだ…!」
シェダルは、銃口を自分の顬に向けたままだ。
「…くっ…」
…どうすればいいんだ。
少しでも動いて、無理矢理にでも止めようとなんてすれば、シェダルは直ぐにそのトリガーを引く。
間違いない。
しかし、何としてでもそれは止めねばいけない。
流石に俊敏性に差があるとは言っても、トリガーを引く前にそれを止めるなんて…
こんな距離じゃぁ尚更、無理だ。
「…えっ!?…うんうん…分かった…じゃぁ…」
…どうやら、通話は終わったようだ。
短い会話だったとはいえ、此方の気が散って仕方ない。
…だが、改めて…この状況はどうしたらいい…!?
…動けない。
…ダメだ。
…どうする…!?
………。
…シェダルの指が…
…ゆっくりと、トリガーを…
「じゃあな。楽しかった。」
「!!!」
まずい…!!!
シェダルは最後に一言…
「…ラッシュ。」
俺の名を、呼んだ。
「皆伏せて!!!」
…えっ!?
伏せる。
何も考えず、その声に釣られて低く伏せる。
その声はNo.017だ。
その瞬間…
窓ガラスの割れる音。
そして、同時にキンッと音が鳴る。
「!?」
拳銃が吹き飛ぶ。
銃声は鳴っていない。
まさか、狙撃か…!?

「なっ…」
驚いたのか、シェダルは身体を崩す。
力が抜けたように、床に倒れる。
そこで、直ぐにフェスが走り出し、シェダルの持っていた拳銃を拾う。
…シェダルの自殺は、防げた。
だが、一体何が…!?
「まさか…」
口を開いたのは、アクアだ。
「今の狙撃…デューンか!?」
…デューン…
まさか、二次青軍のスナイパーの…!
…さっきのNo.017の通話は…
…なるほど、そういう事か。
…ふっ、やってくれるな。
何はともあれ、助かった…
大事にならずに済んで安堵し、
息をついた。
…すると、
突然。
「!?」
「なっ…!?」
下の方から爆発音が連発する。
「なっ…何だ!?」
「今度は一体何が!?」
基地が揺れる。
「おあっ!?」
「下の階で、爆弾が爆発している…!?」
爆弾…!?
再び基地が揺れる。
「うわっ!」
揺れは大きくなっていく。

「そ、そういえば…」
口を開いたのは、フィアースさんだ。
「…1階で目覚めたら、俺の未使用の爆弾が大量に盗まれてて…」
「なっ…!?」
「…いや、それにしても爆発の規模が大きすぎる…!」
ベナシュさんが叫んだ。
そこに口を開けたのは、ザイディンさんだ。
「…おい、もしかしてザギド…」
「…はっ!…間違いない…!」
…って事は…この爆発を助長しているのは…
「ザギドの花火か!」
…これだけの莫大な爆発を起こしているって事は多分、かなり大きいタイプの打ち上げ花火だ。
やばい。
「…まさか…」
口を開いたのは、リバース様。
「シェダル…始めっからこの基地ごと俺達をぶっ潰すつもりで…!!!」
「なっ…」
「何だって…!?」
「シェダル…!!!」
シェダルの方へ目を移すと…
「…気絶…している…!?」
…さっきの拳銃による外傷はない。
突然の狙撃で、ただ気を失っているだけのようだ。
…揺れる。
基地が、大きく揺れる。
この感じだと、何分もしないうちに…
この基地は崩れる!!!
だが、今からこの人数、この7階から階段を駆け下りていくには時間が足りない。
無論、エレベーターも動かせないだろう。
どうする…!?
このままでは足元から全て崩れ落ち…
この高さから落下し…
全員死ぬ…!!!
「…くっ…!」

続く。