【今回の記事】
暴言王トランプ、PTSDの帰還兵を「弱虫」呼ばわり 本当に弱いのは誰だ

【記事の概要】
   トランプはバージニア州で10月3日、退役軍人の会合に出席。心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した帰還兵たちについて、「戦場で見たことに対応できない人たちも大勢いる」と述べ、彼らを「弱い」と考えていることを暗に示した。強くない人たち、少なくともトランプの世界では弱い人たちが、対応できずにPTSDを発症しているというのだ。

【感想】 
   この記事を見て、「トランプは、なんてひどいことを言う奴だ!」と感じる方が多いだろう。「心の弱い奴はダメな奴だ」というわけである。
   しかし、私たちの身の回りにも、同僚の「心の病」について同じような考え方をする人はいる。「見た目は全く普通なのに、なぜ、あの人は仕事を休むことが多いのだろう。全く心の弱い人だ。」こう考える人は、「普通」を中心に考えている人である。「“心の弱い人”は、この「普通」からはみ出ている人」という考え方である。

   話は変わるが、以前にも投稿したように、私たちは全ての人が自閉症スペクトラム(ASD)の傾向を持っている。このことについては、以下の以前に投稿した記事を参照して頂きたい。
あなたも私も“自閉症スペクトラム” その3

   ところで、ASDの一番の特質は「感覚過敏」である。つまりは、全ての人が感覚過敏の特質を持っているということである。例えば、誰でも沢山の人から注目されれば緊張する。それは、沢山の人の視線に自分の感覚が敏感に反応しているからである。しかし、中には凄く緊張する人もいれば、あまり緊張しない人もいる。この場合の、前者の凄く緊張する人」が「心の弱い人」と呼ばれることが多い。つまり、一般的に言われる「心の弱さ」というのは、感覚がとても敏感であることの表れなのだ。

   繰り返しになるが、全ての人が感覚過敏のASDの傾向を持っていると言っても、その傾向の強弱は人によって様々である。上記の記事の中で紹介している50問の自己診断テスト(千葉大学若林氏考案)で言えば、「1点」の人から「50点」の人までいる。しかし、縦軸に人数、横軸に傾向の強さを表したグラフにしてみると、やはり「1点」や「50点」の人の割合は最も少なく、その間で正規分布曲線を少し左側に詰めたような分布の仕方をしている。なお、この分布を表したグラフについては、以下の投稿記事の中で紹介しているので参照して頂きたい。
あなたも私も“自閉症スペクトラム” その2

   今述べたように、ASDの人達のグラフでの分布は正規分布曲線のような連続した分布をしている。だからこそ「自閉症“スペクトラム(虹のような連続性)”」と呼ばれているのである。つまり、感想の冒頭で述べたような「“心の弱い人”は、「普通」からはみ出ている人」といった場合の「ここからここまでが普通」という範囲は、分布が常に曲線を描いて連続しており、区切りをつけることができないために存在しないのである。あくまで便宜上、「『33点』以上の人は真性のASD」としているだけである。
   さらに言うならば、正式に障害として診断が下される人達だけでなく、いわゆる「健常者」と言われるASDの傾向がそれほど強くない人達でも、そのASDの特質は先天性のものなので、周囲から「何でそんなに心が弱いんだ!」「もっとがんばれ!」と言われてもどうしようもないことなのである。

   発達障害者支援法が施行されてから、はや10年が経った。この「感覚過敏」というASDの人達の先天的な特質について、もっと皆さんが理解できる社会になることを切に願っている。