【今回の記事】
山本五十六が問いかける「人を育てること」の本質

【記事の概要】
   旧帝国日本海軍の連合艦隊司令長官を務め、最終的な階級は元帥海軍大将という山本五十六氏は、軍隊というピラミッド型の上意下達組織において、最上位階層のなかでも頂点にほど近いポジションに就いていた人物でした。いわば一流の組織人であり、有能なリーダーだった山本氏。その存在感の背景にあるのは、際立ったマネジメントスキルと求心力確かな人材育成力でした。
   そんな山本氏の残した言葉として頻繁に持ち出される名言に、次のような一節があります。
やってみせ 言って聞かせて させてみせ、ほめてやらねば 人は動かじ人材を動かしたいのであれば、まずは、自分でやってみせる。そのうえで、きちんと説明や解説を加える。そして、実際にやらせてみるわけだが、大切なのはしっかりと褒めてやること)」
   実は、この名言には、まだ続きがあります。話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず(人材を育てたいなら、話し合う機会を設けて相手の話を傾聴し、それを認めて、任せることが大切)」
   そして最後は、こう結ばれます。
やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず(その人材が立派に成長し、ステップアップできるようにするためには、頑張って取り組んでくれている姿を感謝の気持ちとともに見守り、信頼を寄せる姿勢を持たなければならない)」

【感想】
   私は、山本氏のこの名言について、全て子育てに当てはまるものだと思いました。一つずつ見ていきましょう。
①「やってみせ 言って聞かせて させてみせ、ほめてやらねば 人は動かじ」
   この言葉については、以下の以前の投稿で紹介した言葉ですので、そちらをご参照ください。
カナダ訪問中・ジョージ王子が塩対応 〜ソーシャルスキル指導の4ステップが効果的!〜

②「話し合い 耳を傾け 承認し 任せてやらねば 人は育たず」
   この言葉については、まるで、思春期を迎えた我が子と対する時の言葉のように感じます。小学校3年生くらいまでは、子どもが親の言う通りに従うので、それほど留意する必要がなかったのですが、思春期を迎えた子どもは、自分なりの考えを持ち始めます。その発達段階を迎えた子どもに対しては、その子の言い分を無視するわけにはいきません。「地獄の第二反抗期」になります。
   その子を尊重して、その子の言い分に耳を傾け、その考えを認め、行動を任せてやることで、発達課題を達成します。

③「やっている 姿を感謝で見守って 信頼せねば 人は実らず
   最後のこの言葉については、いわゆる「イヤイヤ期」の第一反抗期と、思春期の第二反抗期という最も子どもとの接し方が難しい時期のいずれにおいても大切な言葉だと思います。自分なりの考えと行動が出る時期だからこそ、その行動を信頼して、“見守る”ことが大切です。この「見守る」という言葉を聞くと、以前投稿した以下の記事を思い出します。
キムタク母・木村悠方子さん流子育て 〜「自然体で遠くから見守る」〜
見放す訳ではなく、あれこれ口うるさく過保護に接するわけでもなく、丁度良い距離感で子どもに接するというニュアンスが、この「見守る」という言葉に凝縮されているような気がします。この接し方が、精神科医の岡田氏が言うところの「安定型」愛着スタイルを身につける最も効果的な接し方だと思います。なお、「安定型」愛着スタイルを身につけた姿の例を以下の投稿で紹介しています。ご参照ください。
ただいま私の中での好感度アップ中! 〜親にきちんと育てられた土屋太鳳
小学5年の熊本さん、迷子おんぶし駐在所まで1km歩く 〜親から愛されて育った子どもの姿!

   なお、この山本氏の言葉は、子どもに対して発せられたものではありません。組織の中で働く大人に対して発せられた言葉ですから、今の一般の会社で働く上司の方が、部下の気持ちを受け止め、仕事に対する意欲をより高めるためにこそ効果を発揮するものと言えるでしょう。