2011年を終わるにあたり、反省と目標を申し上げます。
 年頭に、今年のテーマを「Made in Japan」とし、学者、経済評論家やマスコミ、それに踊らされる政治家の「日本は破綻する」との悲観論を否定しようと準備を始めた。しかし、歴史的大事件が起こりテーマ展開の延期を余儀なくされた。
 有史以来の311の東日本大震災が発生、国家、企業の危機管理が機能していないこと、学者の学説が信用できないことが明らかになった。さらに、TPP問題では日本国の進むべき道が語れることなく、無条件降伏に近い形での参加を表明した。財務官僚に洗脳された首相を含む閣僚が、経済分析もせず増税に熱を上げている。
 2011年は、日本の根底にある問題点をさらけ出した。そういう意味では、画期的で記念すべき年であった。問題を先送りしてきた官僚と自民党、それに反対して作ったマニフェストで政権を取ったがどれ一つ実現出来なかった民主党、政治家の質、むしろ人間としての質が問われている。
 2012年は、全てをシャッフルして、日本と日本人を守る意識のある方々が新しい政権を創ることを期待する。
 
 私自身、被災された東北の方々のお役に立ちたいと、ある計画を進めています。体力気力のある限り実現していく覚悟である。
 
 今年、私のテーマで展開したかったことが昨日の日経に掲載されていた。今日29日の日経にも、「日本製鋼所、原発危機で見せた底力」「海外M&A、11年過去最高、円高・潤沢資金追い風、5兆円突破」と報道されている。

日本の強み再発見の年に(十字路)2011/12/28付 日本経済新聞 夕刊

 2012年は日本独自の強みを意識し、それを生かして世界市場を開拓する日本企業の動きが活発になるだろう。
 第1に、東日本大震災をきっかけに、人々が日本の強みを再発見した。困難な状況の中でも秩序と礼節を守りつつ、自分の力で立ち上がろうとする強さを国民が自覚した。
 第2に、世界で勝つためには日本独自の強みを活用するのが有効と気づいた。利益とは他人と違うことに対して支払われる対価であるから、グローバル競争では「違い」をつくることが重要だ。それには日本独自の強みを生かして差別化するのが近道である。
 これを気づかせてくれたのが、日本のサービス業の海外展開だ。これまで内需型とされてきた日本のサービス業が。「おもてなし」や「きめ細やかで丁寧」といった強みを武器に続々と海外に進出し、成果を上げている。
 第3に、アジア新興国市場でも品質への意識が高まりつつある。消費者の目が肥えたため、「安かろう悪かろう」ではなく、ある程度の品質を備えた製品が求められるようになった。「品質ニッポン」のブランドや、高品質を生み出す日本の組織能力が新興国で高く評価される時代が到来したことを意味する。
 第4に、世界経済の変調は日本企業にとってはチャンスとなる。中国では不動産などのバブルの崩壊が懸念されるほか、間もなく少子高齢化が成長を圧迫し始める。欧州は財政悪化と金融収縮、景気後退の悪循環にはまり、「日本化」しつつある。こうした中、日本はバブル崩壊後の信用収縮と長期デフレを経験済みの唯一の国だ。そうした厳しい環境下でも生き抜き、成長する術を身につけているのは世界で日本企業だけだ。
 内向きの日本特殊論や自嘲気味の「ガラパゴス」論を超えて、日本独自の強みが前向きに語られる新年になることを切に願う。(東レ経済研究所 産業経済調査部 チーフエコノミスト 増田貴司)