「TPP交渉の現状」
 今日、5月12日よりベトナムでTPP首席交渉官会合が始まり、19日20日はシンガポールで閣僚会合が予定されている。これらの会合の方向性と結論が気になるところである。


 オバマ大統領の来日直前、数字目標を記事にして誤報だとされた読売新聞に対する甘利大臣への取材禁止、4月25日オバマ大統領一行が離日してから、読売、TBS、共同通信などが、肉の関税など基本合意があったと言う報道を繰り返し行っていて、他のマスメディアもこの報道の後を追う混乱となった。

 その背景を、まつだよしこさんが羽田からソウルに飛んだエアーフォースワンの機内で行われたフロマン代表の記者会見をベースに解説されている。


ASREAD投稿より
TPP:日米の基本合意があったという読売報道の裏側を読む
http://asread.info/archives/645
日本との貿易交渉に関する政府高官によるプレスへの背景説明
http://asread.info/archives/680


「米政界の動向」
 米政界においては、TPP交渉問題は日米首脳会談後の5月1日の上院財政委員会公聴会で各議員とフロマン代表の質疑の後、ニュースが極端に少なくなった。

下院歳入委員会の貿易小委員会ヌネス委員長が、TPA審議の見通しを語った程度。
 TPAは11月の中間選挙後のレームダック時期(選挙終了後、2015年1月3日までの現議員の会期)で成立しなければ、2016年選挙後の次期大統領(2017年1月)以降になる。TPP交渉もそれからだと語った。

 日本国内では、5月12日からのTPP首席交渉官会合、続いて19, 20日の閣僚会合での決着の報道が行われているが、米国は下記の記事のように冷静である。


 下記The Hill紙記事では、経済界に、フロマン代表の「TPPを先に進め成果を上げればTPA獲得ができる」という戦略を支持する方もいるが、おおかた、11月中間選挙までは動かない。(鶏が先か卵が先かの議論)一部の貿易関係者は、ワイデンTPA法案を夏までに財政委員会でまとめ、中間選挙後のレームダック時期に法案成立を期待しているが、先は読めない。


 フロマン代表はパリで、5月12日からのTPP会合では、日米交渉の説明を行うとし、他国はそれを承けて日米との実質的合意に入るとロブ豪貿易・投資相が語っている。(ロイター)


The Hillの記事(2014年5月7日)
オバマ大統領の貿易政策は荒波にもまれる
http://thehill.com/policy/finance/205411-president-obamas-trade-agenda-hits-rough-waters
 中間選挙は大統領の貿易政策を困難にしている。さらにその後の2年の任期でも回避される可能性が高い。 組合に逆らう政治的リスクを負いたくない民主党と、拡大される貿易に反対する自由主義のグループが、中間選挙の前にTPA法案を推進することはないと、財界の指導者は認めている。

このことが、オバマ大統領の在任期間の基本的な合意のTPP交渉を妨げている。

 TPAを獲得することにおいて、ゆっくりと窓が閉って行くように見えるので、全ての経済界がゆっくりと停滞していくと思うと、スティーブ・ビーガンフォード副社長も認めている。選挙が近づくと、議員にとって論争になる貿易政策の投票を簡単にはできないとビーガンフォード副社長が語った。


 米国商工会議所、日米ビジネス評議会のジム・ファスリー会長は、民主党が中間選挙の後まで待つだろうと語った。日米の交渉当局は、オバマ・安倍会談を行ったが、農産品と自動車の市場開放の合意を得ることが出来なかった。


 ビジネス・テーブルラウンドのジョン・エングラー会長は、日本から譲歩を引き出すのは、重荷であり、日本の参加は会話を狂わせるか少なくとも遅れることになると警告した。
しかし、世界最大の経済国間の交渉は、TPAがなければ、さらに難しい。
日本と他の貿易交渉国は、それが無ければ、署名後の議会の圧力と修正と新しい会話のラウンドが強制されることを心配する。


 フロマン代表は、TPAに力を与えるために、広範囲のTPP協定を議会に示すことが政権の最善の戦略であると主張した。

 しかし、特に、交渉が自由貿易の原則から離れて向きを変え、議会をTPA法案の推進に動かすには、TPPがあまりにも薄められるならば、この戦略が成功しそうにもないと、ビーガンフォード副社長が語った。
「悪いTPPは、TPAを売らない」と
 その代わり彼は、ホワイトハウスが貿易協定に為替操作に関する規則を加えることのような議会の最優先事項に集中することを提案した。それは、貿易に対する議会支持の多くを利用できる。

(筆者注記:下院230名、上院60名が、為替操作条項を貿易交渉に加えよと書簡を送付したこと)


 議員は、中間選挙の前には行動を起こす気がないと繰り返し合図をした。2月にリード院内総務が、ホワイトハウスはTPAの立法を促進しないことが賢明であると語った。
 そして、先週、ワイデン上院財政委員長は早く動きたいと思うが、まだ、そのような法案へどのように接近するか検討中であると語った。


 今年TPAが前進するためには、ワイデン委員長が今後数週間で彼の特別の提案を発表し、そして今夏の委員会での最終審議を予定に入れるため速く動く必要があると、一部の貿易専門家が思っている。


 TPPを支持するいくつかのKストリート(ロビーストの事務所のある地域、ロビーストを示す)は、ホワイトハウスの戦略に合意し、交渉を完了することがカギで議会に対する圧力になると語っている。
彼らは、TPAの欠如がTPPの確定を防止しているのではないと主張している。

 「TPAを考えていないし欠如も考えていない。列車は動いている。」とナショナル外国貿易評議会のビル・ラインシュ会長が語った。その取引なしで、TPA法案の投票予定に対する圧力はないと語った。
 「TPPは行動促進の行事である。もしそれが締結されるならば、議会は貿易協定の投票をしなければならないことを知っているし、それをやりやすくするため、TPAの仕事を始めるだろうと語った。
 TPPに関する問題は日米間の合意の不足であると語った。「彼らは最後まで全ての方法を明らかにしていない」として、先月日本で両国がどのくらい前進したかは明らかではないと語った。

 

 日米ビジネス評議会のファスリー会長は、オバマ・安倍首脳会談で多くの進展があった、そして、交渉を加速できる次の2週間以内に、これらの詳細が出てきそうであると語った。


 外国貿易評議会のラインシュ会長は、貿易課題について、中間選挙後の議会のレームダックの期間の行動の可能性があると語った。


2014年 05月 8日ロイター
日米TPP交渉の経過、他の参加国に説明する必要=USTR代表
http://jp.reuters.com/article/jpUSpolitics/idJPKBN0DN1PF20140507

 [パリ 7日 ロイター] - フロマン米通商代表部(USTR)代表は、環太平洋連携協定(TPP)をめぐる日米交渉の進展具合について他の交渉参加国に説明することは、全体のTPP交渉を次の段階に進めるために重要となるとの考えを示した。


 フロマン代表は貿易担当相会合に出席するために訪れているパリでロイター・インサイダーテレビのインタビューに応じ、「われわれは日本との交渉について説明し、他の交渉参加国もそれぞれ日本と協議を行う」とし、「これがTPP交渉を次の段階に進める上で重要となる」と述べた。


 TPPをめぐる日米交渉の詳細については、他の交渉参加国から詳細を知りたいとの声が上がっている。

オーストラリアのロブ貿易・投資相は記者団に対し、日米交渉について今のところあまり情報が伝わっていないとし、「日米が市場開放について合意すれば、他の参加国はより強い確信を持って日米両国と実質的な交渉に入ることができる」と述べた。


 USTRのカトラー次席代表代行によると、TPP交渉参加国は 5月19─20日にシンガポールで閣僚級会合を開く。

 同次席代表代行は「すべてのTPP交渉参加国は、残る問題は時間がたてば解決が容易になるわけではないとの認識の下、できるだけ早く合意を取り付けることにコミットしている」と述べた。


 日米は4月末のオバマ米大統領の訪日と平行してTPPをめぐる日米協議を実施。一部報道では、日本が米国産牛肉の輸入関税を10%以下に引き下げることで合意すれば、米国は日本がコメなどの一部農産品の関税を維持することを容認する可能性があると伝えられているが、日米当局はこれを否定している。
(以上ロイター)